先月のポッティチェリ展に続き、今度はレオナルド(ダ・ヴィンチ)の展覧会です。今年は日伊修好150周年の記念の年ということで、イタリア関係のイベントが目につくのは、どうやらこれにあやかろうということのようです。

とはいえ、会場はなんと両国の江戸東京博物館。レオナルドはおろか、西洋美術全般とも何の接点もなさそうな場所ですが、同博物館のウェブサイトを眺めると、「レオナルド・ダ・ヴィンチは都市計画にも深い見識があり、『都市史』を研究テーマとする江戸東京博物館において紹介するにふさわしい展覧会です」とありました。(…うーん、かなり苦しい)

leonardo


会場に到着後、「10分待ち」の掲示が出ているチケット売り場を横目に、連れ合いが手回しよく購入していた前売券で入場すると、すでにかなりの混み具合。が、展示物を見るとその過半が版画や素描(それもほとんどは18世紀以降の複製)など小さな作品で、近くで見ないとよくわからないものばかりで、まともに鑑賞するには人垣を掻き分ける必要があります。入り口に近い展示コーナーが混み合うのはいつものことなので、早手回しに中の方へ。


この展覧会の目玉はもちろん「糸巻きの聖母」ですが、他にレオナルド直筆の「鳥の飛翔に関する手稿」(鳥の、ではなくトリノ王立図書館所蔵)といくつかの素描(ヴェネチア・アカデミア美術館所蔵)があります。不思議なことに、壁際に展示されたコピーには人だかりができているのに対し、くだんのページが見開きになって展示されている本物の手稿(小さなガラスケースに収められているものの間近に見られる)の周りはガラガラで、あの独特の鏡文字の筆致をじっくり眺めることができました。一方、レオナルドの赤茶けたデッサンは、大昔(1985年?)に開かれた大規模な展覧会の記憶を呼び起こします。

これら数少ないレオナルド自身の作品の隙間を埋めていたのは、主にレオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館(前世紀の終わりにヴィンチ村に創設)から借り出されたレオナルドゆかりの絵画や版画です。同館館長がこの展覧会の監修者である理由もよくわかるというもの。

さて、これらの小物はほどほどにして、一番の目玉である聖母像を見ようと会場の最奧部に近づくと、何やら空港の入国審査場のようなテーピングと人の列。なんとこの絵の前にたどり着くための行列が整然と組まれていました。展覧会では初めて見る光景です。仕方なく行列の最後尾を探していくと、プラカードには「45分待ち」の表示。「パンダじゃあるまいし…」と一瞬ひるみましたが、気を取り直して列に加わったところ、予想より人の動きは速く、20分ほどで真正面にたどり着きました。(途中からは人垣の間からも絵をじっくり観察できるので、この客さばき、意外に悪くない感じです。)

英国貴族バクルー公爵が代々所蔵してきたという「糸巻きの聖母」は思いの外小さな作品で、おそらく当初から貴顕の個人的な礼拝堂を飾るためのものとして製作されたのだろうと思われます。レオナルドにしては聖母の人体描写がやや不自然ですが、人物の顔立ちや表情、また細密に描き込まれた自然風景などはいかにも「岩窟の聖母」や「聖アンナと聖母子」に共通するもので、久しぶりに「レオナルド風」を楽しむことができました。

ところで、帰り際に博物館の土産ものコーナーをぶらついていると、仁左衛門の助六を大胆にあしらった手ぬぐいが目に止まり、衝動買い。思わず「松嶋屋!」と声を掛けたくなるカッコよさ。これぞお江戸の花、です。

sukeroku