「医者の夫を持つセレブ妻たちが、子どもを名門大学の付属高校に受からせる受験バトルと、夫の出世を支えることに対抗心を燃やしながら生活している……。そんな高級住宅街『スカイキャッスル』で起きた事故をきっかけに、複雑な人間模様を描いたサスペンスミステリー。
う～ん、これはね。
もうどうやったって韓国版には勝てないです。
（ポスターの人物配置は同じ並び）
そもそも1話40分程の話が36話あるんですよ。
日本のドラマ、CM抜いたら40分ちょっと。
それで9話しかない。内容1/4ですから！
韓国版タイトルの「SKYキャッスル」とは、劇中に登場する高級住宅街の名称なんですが、「SKY」は韓国に於ける最難関の大学とされるソウル大学校（S)、高麗大学校（K) 延世大学校（Y）、のイニシャルを合わせたもの。
この大学でないと将来は約束されないという超エリート大学です。
だから「空にそびえたつお城」ではないんです。当然そんな絵本も無関係。
韓国は日本人の想像を絶する「超学歴社会」。
なぜ、セレブ妻たちがこれほどまでに子どもの受験に熱心なのか、なかなか理解されにくいかもしれません。
日本では、大学受験にはそこまで親が介入しないということで、高校受験という設定に変えていますが、そうなると家政婦の娘を妊娠させた、なんて設定にはちょっと無理が出ますね。
そしてセットのチープさ。
これはどう見ても差が出てしまいます。
韓国
日本
「上流階級」であることがまず伝わらないと、このドラマの魅力は出ません。
韓国
日本
とても手の届かない、セレブしか住めない高級住宅地ではない。
そういう意味で、一番リメイクに向かない作品だと思います。
女優陣の衣装に関しても、韓国側がさらっと全部ブランド物なのに対し、日本ではブランド物を使った時だけ、とてもわざとらしくロゴなどをアップにするシーンがあり、いくらタイアップといえどもそれは下品でしかありません。
俳優のキャラはかなり寄せていますが…
●浅見紗英（松下奈緒）
韓国版：ヨム・ジョンア
娘を有名医大に入れるためならなんでもする母。
隠していた過去の経歴などが韓国版とは違い、身バレしてからの迫力は薄かったですが…。
なんといっても「密輸 1970」のジンスクですから、パンチが効いてます（笑）
でも松下奈緒さんらしい演技で、最も人物像が成立していたと思います。
●二階堂杏子（比嘉愛未）
韓国版：ユン・セア
家事全般、全て完璧にこなす従順で優しい女性。
こちらもかなりイメージは近かったですが、いかんせん彼女の家庭や家族のことなどがほとんど描かれないのでもったいなかったです。本当はハーバードに通う長女と、双子の男の子がいるんですが、今回は息子1人だけ。
凄くインパクトの強い支配的な夫（キム・ビョンチョル）から自分自身を取り戻し、家庭を立て直していく過程がとても良いので残念です。
●夏目美咲（高橋メアリージュン）
韓国版：オ・ナラ
元女優志望、実は元ヤンという設定。
見た目や雰囲気は似ていますね。
この人は、割といろんなことに首を突っ込み引っ掻き回す役回りで、でもなんとなく憎めないというキャラなのですが、こちらも家庭のことが全く描かれないし、演技力という点では及ばなかったかも。
●南沢 泉（木村文乃）
韓国版：イ・テラン
一番残念だったのは南沢泉役の木村文乃さん
この役は、出演者の中で「唯一の良心」といった存在なんです。
他人には流されず自分の意見はブレずに貫く信念があり、目に余ることはきちんと問題提起するし、あまりにもひどい仕打ちをするなら黙っていないわよ！という強さもあるのですが、
根本的に「心が温かくて、利己的なところは一切ない人」なんです。
木村さんは、最初から敵意むき出しで、スカイキャッスルのメンバーを「くだらない人間」と見下している冷ややかな感じで、これでは全く成立しない。
後半、急に良い人になっちゃって理解を示し優しくなっても「気持ち悪！」と思ってしまう。
完全に演出ミス。声が子供っぽいのも難点。
キャスティングの問題かも。
ご主人側はややコメディシーン多めなのですが、左から
二階堂亘（鈴木浩介）比嘉愛未の夫
浅見英世（田辺誠一）松下奈緒の夫
南沢公平（大谷亮平）木村文乃の夫
夏目龍太郎（本多力）高橋メアリージュンの夫
鈴木浩介さん、本来は検察官なんですが、今回はご主人の職業を全部同じ病院の医者にまとめてました。
対応する韓国キャストを日本の役者名に当てはめると
左側：大谷浩平、中央上：鈴木浩介、中央下：田辺誠一、右側：本多力 になります。
田辺誠一さんはかなり似てますよね。
本多力さんは高橋メアリージュンのご主人で、どちらかというとコミカル担当の夫婦なんですが、ちょっと本多さんはお医者さんのキャラじゃなかったです。
そして子役がどうにも…
女の子キャストはまだ良かったのですが
●浅見瑠璃（新井美羽）松下奈緒の娘
韓国版：キム・ヘユン
彼女は主役ですし、かなり良かったです。
でもキム・ヘユンさんのワガママ演技が巧すぎて、当時はしばらく彼女が出演するドラマが見られないぐらいの衝撃でした。
●山田未久（田牧そら）
韓国版：キム・ボラ
まずまず良かった。でも良い子過ぎたかも。
キム・ボラさんは不幸なオーラを纏いつつも、ちょっと感情移入できないわ…ってぐらいあくどい面もあったので、そのあたりの迫力は今一歩だったかも。
男の子たちは全くダメでガッカリです。
特に重要な役割、木村文乃の息子役が酷かった。
●南沢青葉（坂元愛登）
韓国版：チャニ
この子は本当に心が綺麗で優しくて、だからこそ最後に逮捕されてしまうところが辛いのですが、そういう深みが全然ない。
その他、比嘉愛未、高橋メアリージュンの子供たちは、設定も変えられてるし全く存在感なし。
揉めているのは親だとしても、主役として受験戦争真っただ中にいるのは子供たちなのに、演技が下手すぎました。
韓国ドラマは、全ての登場人物の日常や人物像が分かるようなエピソードを細かく描くため、ストーリーには直接関係のないシーンも多く、どうしても長くなってしまいまが、その分、それぞれのキャラクターがしっかり肉付けされ、思い入れも出てきて内容が充実し、満足感があります。
例えば、松下奈緒の娘がコンビニで万引きしているのを、木村文乃がたしなめるシーンがあるんですが、韓国版では、母親が前もってコンビニ店長にお金を握らせてるんです。
「ストレス発散で万引きしているだけだから見逃してちょうだい。お金は十分払うから口外しないように」と。
越後屋みたいに、金の延べ棒を敷き詰めた重箱を九条先生に送ったり、母親同士でメープルシロップ頭からかけて掴み合いの喧嘩するなど、インパクトのあるシーンもたくさんあります。
そしてこのドラマで最も重要な人物、
受験コーディネーターの九条彩香（小雪）
韓国版では、キム・ソヒョンさんが演じていますが、まぁこれは、完璧に「女王の教室」（2005年）のパクリですね。
何千万というコーディネート料金を取り、「どんな手を使ってでも子供さんを合格させます」という触れ込み。
親同士で争奪戦になるのですが、実は恐ろしい目的を持って子供に接している人なんです。
ラスト、どうやってまとめるかと思ったのですが、九条先生の過去の闇が全く違く設定になっていて「えーーー！」です。
先生の母親が毒親で、現在は精神を病んでいるとなっていましたが、韓国版は、彼女自身が毒親で、天才的な数学の才能を持ち前途有望だった娘を事故に巻き込んでしまって…という設定なんです。
そして九条先生にずっと付き従っていた秘書の男性。永峰泳児（前原滉）
彼は単に職務に忠実なのではなく、九条先生の過去において非常に重要な繋がりがあるんです。
韓国版でも、最後にサラッとネタバレするだけでしたが「おーーーーー！」という衝撃の内容でした。
そういうのも当然、すっ飛ばされますよね。
色々比べたりはしたくないのですが、ポイントとなる事件だけを拾ってつなぎ合わせるので、どうしてもドラマとしての深みやうねりがなくて、状況説明だけのつぎはぎドラマになってしまい本当に残念です。
サブスク契約している方はどうぞ、本家のドラマをご覧になってください。
2018年制作ですが、古臭いところもなく、とても見ごたえがありますよ。
韓国ドラマがお好きでない方は、似たような作品として、2013年に放送された湊かなえさんの「夜行観覧車」こちらをおススメします！！
セレブタウン「ひばりが丘」で繰り広げられる、ドロドロのイジメ、殺人、子供たちの受験戦争。
韓国の「SKYキャッスル」そのものが、この作品のリメイクなのかなと思うほどです。
親も子供たちも見栄を張り、日本特有のネチネチしたイジメに蝕まれていく様が非常にリアル。
この当時、地上波でもドラマ作りはしっかりしていましたね。
「逃げ恥」以来、なんとなくフワッと可愛くてセレブな独身のイメージになってしまった石田ゆり子さんの熱演が光ります。
そして子役の杉咲花さん、中川大志君、吉川愛さんの演技が素晴らしい！
特に杉咲さんの鬼気迫る演技は必見ですよ！
U-NEXTで見られます。