至福のレストラン 三つ星トロワグロ | akaneの鑑賞記録

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アカデミー賞の名誉賞も受賞しているドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、親子3代にわたりミシュラン三つ星を55年間持ちつづけるフレンチレストラン「トロワグロ」の秘密に迫ったドキュメンタリー。

樹々と湖に囲まれたフランスの村ウーシュにあるレストラン、トロワグロ。建築家パトリック・ブシャンの手による、周囲の自然と解け合うモダンなレストランでは、オーナーシェフ3代目のミッシェルと4代目のセザール、そしてスタッフたちのあくなき食への追求が日々つづいている。

メニューが創造される瞬間、厨房での調理、食事風景をはじめ、市場や、オーガニックの農園、牧場、チーズ工場へ赴き、人と自然が共存するパーマーカルチャーに取り組む姿などを通して、創業以来94年間、家族で始めたレストランがなぜ変わることなく愛されつづけてきたのか、その秘密をカメラがとらえていく。
 

 

 




素晴らしかったです!


チラシを見た時から楽しみにしていて、いざチケットを購入しようとサイトを見たら

13:00-17:15


???よ…よじかん???


3度見ぐらいしましたけど…4時間でしたね。



BGM、ナレーション、テロップ、一切なし!

会話や厨房の音、動物や鳥の鳴き声、そういった自然な音声のみで構成されているドキュメンタリーなのですが、ダレたりすることは全くなく、4時間集中して見入ってしまいました。
(ちょうど2時間のところで休憩があります)


まずは、市場で野菜や果物を仕入れるシーンから。
「モロッコ産のミント」「ギリシャ産のキウイ」など、新鮮な野菜を買い付けていきます。

 

その後、3人でメニューなどの打ち合わせ。

 


左から、次男のレオさん。

真ん中は、3代目のミッシェルさん。

右は、長男で4代目、現シェフのセザールさん。


魚は何にするか(旬のもの、大きさなど)。
複雑なソースのレシピも、材料を言うだけでどんな味になるか分かるんですね。
「それだと多すぎるからアーモンドは除いてレモンが良い」など

 


ここで驚いたのは「イケジメ(活け締め)」という言葉が出てきたこと。
トロワグロ一家は日本とも縁が深いです。



朝、レストランには、様々な業者から食材が届きます。
それを下ごしらえするシーン。
清潔で広々とした厨房に響くのは作業する音のみ。

 

 

 

 

ほぼ会話なし。
作業する料理人の手元や真剣な表情だけで15分ぐらいあったのではないでしょうか。
1つ1つ、無駄なくテキパキと勧められていきます。

 

 

 


同時にフロアでは、客席の準備が始まります。
ミリ単位で椅子の向き、グラスやカトラリーの位置を決めてセッティング。

 

そして本日のお客様についてのブリーフィング。

 

〇卓は○○さん〇名。お父様のバースデーのお祝い。
〇卓は○○さん〇名。フルコース。1名は乳製品NG。
〇卓は○○さん〇名。ワインはいつもの。

といった感じで、全てのお客様の情報を共有します。

 

 


ソムリエたちは、ワインリストや仕入れについてのミーティング。

シェフたちは今日のメニューや調理法の確認。

 

 




さあ!ランチの営業が始まりました!

 

 

 


「苦手なものはありませんか?」

「アレルギーはありませんか?」

 

など質問し、食材を変えたり他のお料理を勧めたりなど、とてもきめ細やかな対応です。


厨房には次々と注文が伝えられます。

 


〇卓。ザリガニ2、鮭1、鯛4
〇卓。カエル3、子羊2
〇卓。コース、1名グルテンフリー。

 

 


といった声だけで、料理が次々と作られサーブされていくのが凄いですよね。
誰が何の調理を担当するのか完璧に決まっているのかな?

 

 

 


それにしても手の凝ったお料理ばかり!
見ているだけでも美味しそう!

 

 

 

 



お父さんのミッシェルさんは、半分引退して息子たちに道を譲っている感じですが、最終的な味付け、盛り付けなどはチェック。ご自身で調理することも。

 

 

 

 


お客様はほとんどが常連客や美食家で、フロアでのスタッフとの会話も、なかなかハイレベル。
ワインやお料理の蘊蓄など、スマートな会話が繰り広げられます。

 

 


前半は4代目の兄・セザールが継いだ、本店ともいえる「トロワグロ」の紹介です。

 

 

 

 

 

 


後半はさらに郊外にある、弟・レオがスーシェフを務める「ラ・コリーヌ・デュ・コロンビエ」の様子が紹介されます。
古民家を改造したような雰囲気で、本店よりもう少しカジュアルです。

 

 

 

駅前でフードトラックを出しているシーンもありました。

 

 


いずれもホテルを併設していて、宿泊しながらゆっくりと贅沢にお料理を楽しむのです。
ホテルもレストランもホスピタリティが素晴らしいですね。
 

 

 


その他、山羊の乳からつくるチーズ工房、あらゆるチーズを集めて熟成させる工場。

 

 

 

トマト農家やワイン畑のオーナーなどを訪ねて、オーガニックな環境で作られた食材へのこだわりもたくさん紹介されています。

 

 



1950年代初頭、「トロワグロ」は、ジャン・バティストとマリー・トロワグロがロアンヌ駅の向かいにあるオテル・デ・プラタンヌを引き継いだことから始まりました。彼らのレストランは1956年、初めてミシュランの星を獲得しました。

 

 


元々、宮廷料理でバターたっぷりの重いソースが主流だったフランス料理に、1960~70年代、素材の味を活かしたヌーベルキュイジーヌの改革が訪れます。
日本料理にも大きな影響を受け、ポール・ポキューズやトロワグロは、その旗手となりました。

 

 

2代目のピエール・トロワグロさんは「銀座マキシム・ド・パリ」の初代料理長も務め、3代目のミッシェルさんは新宿に「キュイジーヌ・[S]・ミッシェル・トロワグロ」(2019年に閉店)をオープンさせました。

 

 

 

 

現在フランスの本店を率いているのが、4代目のセザールさんです。

 


彼らは皆、何年も世界各国を巡って料理の勉強をし、日本で寿司の修行をしたこともあります。

 

 

非常に親日家であり、日本料理や素材にも精通しています。

 

 

 


菜園ではシソが作られ、ヴィネガーやオイル漬けにして料理の味付けに添えられています。
お客様には「シソは日本のバジルです」と説明していました。
あと、味付けに醤油がよくつかわれていましたね。
色が付き、風味が増すのだそうです。
味噌ソースなどもありました。


ここまで繊細で芸術的な料理を追求するのは、世界でもフランスと日本が筆頭ではないかと思います。


ミッシェルさん談

 

「日本とフランスは、歴史的に振り返ってみても食文化が豊かですし、上質な伝統料理が継承されています。食に対する情熱が高く幼い頃から食べることを大切にしていますし、代々受け継がれていく家庭料理があるという点も似ています」




長年、ロアンヌ駅前のレストランを家族で経営してきましたが、2017年に郊外のウーシュ村の土地を買い、改築して移転しました。
長年の歴史があるメゾンを離れるのは辛かったけれど、街中で壁に囲まれたレストランではなく、開放的な自然に囲まれたお店にしたかったとのこと。

 

 

 

 

 


広大な敷地には自然の森や沼があって、菜園で作られた食材や飾る花を採取したり、

 

 

牧場まであります。

 

 

 


ミシュランの三ツ星に50年以上も輝き続けている、その実力と飽くなき探求心、そしてお客様へのサービス精神。

 

 

 

 

 

そういう「本物」が堪能できる4時間でした。

 

 


上映館はあまり多くありませんし、時間も長いのですが、是非!ご覧になってくださいね。
 

 

 


お料理や食べることが好きな方には本当に楽しめると思います。
おススメです!