アメリカン・ユートピア | akaneの鑑賞記録

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元「トーキング・ヘッズ」のフロントマンでグラミー賞受賞アーティストのデヴィッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に作られたブロードウェイのショーを、「ブラック・クランズマン」のスパイク・リー監督が映画として再構築。同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲など、全21曲を披露。

バーンは様々な国籍を持つ11人のミュージシャンやダンサーとともに舞台の上を縦横無尽に動き回り、ショーを通じて現代の様々な問題について問いかける。

パントマイムや前衛パフォーマンスの要素も取り入れた斬新な振り付けを手がけたのは、過去にもバーンの舞台を手がけたアニー・B・パーソン。

 

 

 

 

 

公開前からかなり期待していたので、都内の映画館再開となって一番に見に行きました。

 

「トーキング・ヘッド」というバンド名はなんとなく知っていましたが、曲などあまり記憶に残っていなくて…
ロック!という感じではないですね。
ニューエイジとか?デヴィット・ボウイに近い?


当時の見た目も、こんな感じで今と全然違うし

 

 

キリアン・マーフィに似てませんか?(笑)

 

 

 

今の方がずっと渋くてカッコいいですね!

 

 

 

デヴィット・バーンは1952年5月14日、スコットランドのダンバートン生まれ。ロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン等で学び、やがてこの大学の仲間とトーキング・ヘッズを結成し、77年にアルバムデビュー。バンドは91年に解散しましたが、02年に“ロックの殿堂”入りを果たしました。
バーン自身はブライアン・イーノと組んだ“My Life in the Bush of Ghosts”(81)でソロ活動を開始。
『ラストエンペラー』(87)の映画音楽制作で坂本龍一らと共にアカデミー賞の作曲賞受賞。
他に写真、イラスト、エッセイも手がけるマルチな才人なのだそうです。




プラスティック製のチェーンに囲まれた正方形のステージ。

 

 

 

 

アーティストは全員、グレーのスーツに素足。

 

照明デザイナーのアイデアで「グレーは暗転すると真っ暗になるし、明りを当てると輝く」からだそうです。
 

 

 


メインのデヴィット・バーン

 

 

 

ダンサーが男女1人ずつ

 

 

 

キーボード、ギター・ベースが1人ずつと、様々なパーカッションを扱う人たちが6人

 

総勢12名。もちろんコーラスも歌います。
 

 

楽器を体に抱え、ワイヤレスでマーチングバンドのように美しいフォーメーションで自由にステージを動き回ります。
それを真上から撮ったり照明も凝っていてカッコいい。

 

 

 

 

 


録音された音源は使わず、全て生演奏!
ギターやキーボードは問題ないけれど、パーカッションのPAはどうなっていたのかな?
音が凄く良くて、バランスもいいし、聴いていて耳が幸せになります。
ともかく曲がカッコ良くて、1曲目から引き込まれてしまいました。



でも、帰宅して当時の動画も見てみましたが、正直なところそれほどピンと来なくて…(コラ!)
だから今回のアレンジが好きなのかも。
非常に洗練された、アップグレードされたアレンジで、総勢11人のコーラスの美しさも際立ってました。

 

 


セットリストはこちらです。(読めるかな?)




「トーキング・ヘッド」のファンの方には堪らない選曲なのかもしれませんね。
ブロードウェイ公演のライブ映像なので、時折映し出される客席も3階までずーーーっと総立ち、皆さん踊りまくってました。
 

 

 



歌い方もね、なんていうかヴィブラートバリバリとかパワフルにシャウトする!みたいなテクニックのヴォーカルではなく、非常にストレートにまっすぐ歌うんですよね。下手に感情込めたりしないんです。
すごく巧い!って感じじゃないのに、すっごく伝わってくるんですよ。
途中、何度も涙が零れました。
歌詞の内容に感動とかではなく、音楽に痺れたって感じ。

 

 

 


時々、ちょっと変わったダンスというかパフォーマンスをしている姿はご愛敬。


 


曲が終わるごとに「Thank You!」って言ってMCを入れるところはライブっぽいけど、ステージングはショーアップされてて、ブロードウェイのショーとライブの融合ですね。

 

 


不要なものは全てそぎ落とし本質のみが存在する、やや哲学的でありながら上質なエンタテインメント。

 

 


抽象的なテーマから、やがて「Black Lives Matter」へ。

唯一、Janelle Monaeの「HELL YOU TALMBOUT」をカバーした曲では、不幸な形で命を落とした黒人の方々の写真と名前などが映し出され「彼の、彼女の名前を呼んで!」と歌います。

 

 



また、地方都市の投票率は20%、大統領選ですら55%、もっと選挙に参加してと呼びかけるシーンもありました。
「私は選挙に参加します」という誓約書を書くキャンペーンをしているそうです。
それは単なる紙切れで、なんの拘束力もありませんが、その誓約書を書いたという記憶がやがて行動に繋がると。
タイトルの「UTOPIA」の文字が逆さまになっているのは、2018年当時のトランプ政権への意思表示なのだそうです。
 

 

 


アンコールには、舞台周りのチェーンも全部引き上げられて、舞台袖や裏まで見せて、全員が客席を練り歩いて歌います。
本当に全部さらけ出して観客と一体になるステージですね。

機会があればぜひ、生で見てみたいです。

 

 



「芸能人が政治を語るな」みたいな風潮、日本だと特に強いと思いますが、このように非常にスマートで洗練されたエンタメとして表現できるのは素晴らしいと思いました。
バーン自身もスコットランド出身で移民であり、ここにいるパフォーマーも、様々な人種、様々な国の出身であるとのこと。


「白人男性」だからできることなのかもしれませんが、「白人男性」だからこそ、こういう声を挙げるべきなのかもしれませんね。



ともかくカッコいいので是非!オススメです!



●Burning Down the House

 

 


●Once In A Lifetime

 



上映館もご紹介しておきますね。
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=americanutopia