パラサイト 半地下の家族 | akaneの鑑賞記録

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『母なる証明』などのポン・ジュノが監督を務め、第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した人間ドラマ。裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる物語を描く。
半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる。

 

 

 



いや~~凄い映画でした。凄まじいというかな。
面白かったし私は結構好きです!

 

デザイン的にはこちらのポスターの方が好きだったのですが。。。

 

 

 

カンヌ映画祭のパルムドール、2018年は「万引き家族」、2019年は「パラサイト」が受賞したことで、比較されることもあるかと思いますが、同じように貧困家庭を取り上げていても人間の全然描き方が違いますし、お国柄が出ているというか熱量とパワーが違いますね。

象徴的な伏線、貧富の差の描き方、直接的でないのに非常に伝わってくる脚本や演出が凄いと思います。

 


前半はコメディタッチ。
半地下の家とは、このように、家の窓がちょうど地面に位置するような場所にあります。


家賃が安く、貧しい人が暮らしているとわかる設定。
水圧が低いので、トイレが天井に近い位置にあるのも特徴的。

 


父親は色々な職業に手を出すもののどれも長続きせず失業中。

宅配ピザの箱を組み立てる内職で細々と暮らしています。

 

 

長男は4度も大学入試に失敗、妹も美術の才能はあるのにそれを生かせず、家族4人、八方塞がりです。


ある日、長男ギウの友人で裕福な大学生が訪ねてきて、自分の留学期間中、家庭教師のアルバイトを引き継いでくれないかと依頼します。
偽装した卒業証書を手に、恐る恐る豪邸を訪ね、家政婦に案内されます。

 

この豪邸は、有名な建築家が建てたものなのだと。

 

壁にはIT長者である、パク一家の写真。

 

奥様の面接を経て、高校2年生の女の子ダヘに英語の授業開始。
最初は疑心暗鬼だった奥様も、すっかりギウを信頼してしまいます。

 

パク家には、もう一人、小学生の男の子ダソンがいるのですが、落ち着きがなく奥様も手を焼いている様子。
絵を描くことが好きだと知ったギウは、「知人でシアトルで勉強した美大の講師がいる」とさりげなく妹のギジョンをアピール。
ギジョンも速攻でダソンを手懐け、奥様からの信頼は益々深まります。

 

 

こうしてキム一家はまんまとパク一家に寄生(パラサイト)することに成功するのですが、ある雨の日、ある人物が訪ねてきたことによって、物語は急展開!
えーーーーーー!?!?ってなりますよ!
この先のネタバレは絶対書けません。

ぜひ、映画館で観てくださいね!!

 

 

 


まさに芥川龍之介の「蜘蛛の糸」。
たった1本の蜘蛛の糸に貧民たちが我先に殺到したあげく、糸はぷっつり!

そしてもとの地獄に逆戻り。

 


土砂降りの中、キムの家族がパク家の豪邸から逃げかえってくるシーン。
いくつもいくつも階段を降りて、下へ下へと降りていくんです。
階段を下りるごとに街の様子も刻々と変わって行くのが、非常に象徴的で印象に残りました。

出演者はみな演技が巧く、どのキャラクターも強烈で面白かったのですが、私はとりわけパク家の奥様が一番好きです!

 

 

コロッと騙されちゃうんだけど、素直で可愛くて、ちょっとズレてるところが、メチャクチャ好きです~~!
あとは妹のギジョンもとても良かった。




この作品で取り上げられている「貧困問題」は、韓国に限らず、世界中誰でも共感できる描き方だと思います。
本来の韓国映画はもっと人間関係が複雑で怨念ドロドロだったりして、そこが少々苦手だったりするのですが、「パラサイト」は人間関係も単純で分かりやすく、いわゆる韓国内向けというよりは、意図的に世界市場をターゲットにして作られた作品かな、と思いました。


ただ、この作品を笑って観ているのは、多少の差はあれども勝ち組に属している、あるいは属していると思っている層になるでしょう。
本当に、キム一家のような立場にいたら、笑えないかもしれません。



ちょうど昨日、アカデミー賞のノミネート作品が発表されました。
http://eigaz.net/prediction/2020.php



「パラサイト」も6部門でノミネートです。
そのほかは「ジョーカー」「ワンスアポンアタイムインハリウッド」が圧倒的。
ゴールデングロープ賞では登場しなかった「アイリッシュマン」が続きます。
「ロケットマン」が入らなかったのは意外でした。
「ラ・ラ・ランド」よりよっぽど面白かったですけどね。どうしてなんでしょう。
今年のラインナップを見ると、昨年「ボヘミアン・ラプソディ」は良くあれだけ受賞できたなと驚いてしまいます。
(まさか、オープニングアクトにQALをブッキングしたからじゃないよね??)

 

 


ここ数年「me too」運動などが盛んになって、受賞者や作品にもそういう配慮が見受けられとても良い傾向だと思っていたのですが、どうも今年のノミネート作品、また少し「白人男性偏重主義」に戻っているように感じます。


そして、世界的に社会問題となっている「貧困」や「格差」。
弱者の立場からそれを描く映画は意欲的ですし、知らなければいけない問題でもありますが、過剰に評価される風潮もあるかな、と思ってしまいました。

 

そろそろアイデアが行き詰ってきた感のあるエンタメ的映画ですが、「徹底的に明るくて想像力が刺激される夢の世界」そういうジャンルも評価されないと、エンタテインメントとしての映画が先細りになってしまうような気がします。