ギフテッド | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

めいで7歳のメアリー(マッケンナ・グレイス)と片目の猫フレッドと共に、フロリダの小さな町で生活している独り身のフランク(クリス・エヴァンス)。平穏に過ごしていた彼らだったが、メアリーにある天才的な能力があることが判明する。フランクは彼女に普通の子供と同じように育ってほしいと願っていたが、彼の母エブリン(リンゼイ・ダンカン)は二人を引き離してメアリーに英才教育を受けさせようとする。


素晴らしい映画でした!
メアリー役のマッケナ・グレイスの驚異的な演技力&可愛らしさはもちろんのこと、フランク役のクリス・エヴァンスがメチャクチャ素敵。
キャプテンアメリカ=正義の味方な金髪マッチョ のイメージは完全払拭。
茶色の髪に髭、体形も普通になっていて、最初は分からなかったです。
優しい目の中に、戸惑いや不安、やりきれない怒りや悲しみをたたえた、ごく普通の等身大の30代男性。
独身ですからまだまだ女性に対する思いもあるし、そこはかとない色気が!
こんなに繊細な演技のできる人だったんですね。
むしろアメコミより、今後はこういう路線で行ってほしいぐらい。
今はフリーでボートをメンテナンスする仕事で食いつないでいる状態ですが、元はボストン大学の心理学准教授だったということで、隠しきれない知性もにじみ出ています。

天才の子供をどう育てていくか、よくあるテーマではありますが、ともかく脚本が素晴らしい。
ベタにお涙頂戴にはせず、ウィットに富んだ会話、笑いもありつつ、物語は静かに滑らかに進んでいきます。

自分も数学者を目指していたハーバード大学卒の祖母。
自分が叶えきれなかった夢を、やはり天才だった娘に託す。
小さいころから詰め込み教育で完全に自分の管理下で育てた娘ですが、それに耐えきれなくなった彼女は、メアリーを産んですぐに自殺。
弟のフランクが引き取って育てている状況なのですが、フランクは下手にお父さんぶらず、7歳児といっても天才なので大人顔負けのメアリーと対等に会話していてその関係性も素敵です。

大学院生レベルの数学もスラスラ解いてしまうメアリーにとって「1+1は?」なんて授業は退屈極まりなく、同級生とは話が合わない、と学校に行きたがりません。
学校も「ギフテッドの子供専門の学校に転校させたら?奨学金も出ますよ」と勧めるのですが、フランクはあくまでも「普通の子供として育てたい」と。
それは苦悩の人生を送った姉からの強い希望だったのです。

ある日、クラスメートが「動物園」の工作を持ってスクールバスに乗ってきます。
メアリーは一目見て、それが自分の工作と比べ物にならないぐらい優れていると思うのですが、そこで嫉妬したりしないんですよね。
彼が転んで工作を壊してしまい、それを笑った子供たちに「なぜ笑うの!」と叱責。
揶揄した12歳の男の子をケガさせるほど殴ってしまいます。
もちろん教室で先生に「謝りましょうね」と促され、「何があっても、暴力はいけないこと。」と謝るのですが
「でも、彼の作品は本当に素晴らしかったわ!みんな!拍手を!」

といって彼を讃えるんです。
カッコイイー

しかしメアリーの親権を巡って、母と息子が裁判で争うことになってしまいます。
双方の立場を鑑み、メアリーは車で30分ほどのところに住む里親の元で暮らすことに。
離れたくないと泣き叫ぶメアリーをなだめて置いて帰るフランク。
車の中で慟哭する姿がやり切れません。
結局母は、裁判所命令を無視し、勝手に家庭教師を付けて、里親の離れで英才教育を始め、それに気づいたフランクは最終手段に出ます。
姉のダイアンが生涯取り組み、志半ばで亡くなったと思われていたミレニアム懸賞問題の「ナビエ-ストークス方程式」は、すでに解き明かされていたのでした。
しかも「母親が死んだ後に公表して」という遺言を残して。
それを母親に突きつけるフランク。
母も初めて、娘ダイアンの気持ちが理解できたようです。
ただ彼女にとっては、やはりメアリーよりも「世界的発明の方程式」の方が大切だったんですね。
あっさりとメアリーをフランクのもとに返すのでした。

自分の本当のお父さんがいたことを知り、「なぜ探しにも来てくれなかったのか?自分は存在価値のない子供なんだ」と引きこもってしまった時、フランクはメアリーを病院に連れて行きます。
産婦人科の待合室で延々待つのです。子どもが産まれるまで。
そして産まれた瞬間の家族の弾けるような笑顔、喜ぶ姿を、メアリーに見せてあげるんですね。
「君が産まれた時も同じだよ。これほどうれしいことはないんだよ」と教えるのです。
さすが哲学者。フランクの子育て素晴らしいです。
彼はずっと「自分にこの子が育てられるだろうか」と不安だったのですが、メアリーと再び暮らすようになって、「こんなにいい子に育ったんだ。僕の育て方は間違っていない!」

と自信を持てるようになりました。

大人顔負けの表情でやりこめたり、真剣に数式を解く天才児としての顔。
同級生とはしゃいだり、隣のおばさんとカラオケを熱唱する無邪気な姿。
隣のおばさんが、この間「ドリーム」で天才数学者を演じていたオクタヴィア・スペンサーなのも面白いですね。

ラストシーン、
人生は「我思う故に我あり」であると話すフランクに対して
「我フレッドを思う、故に我あり」と答えるメアリー。

なんか良いですよね。

フレッドとは、2人が飼っているのは1つ目のネコ。
まさに「夜廻り猫
」の重郎がここにいました!


この映画、本当にお勧めです。素晴らしいです。
是非ともお父さんに見てもらいたいですね。
まだ小さい娘さんのいるお父さんはきっと号泣だと思います。