髑髏城の七人 Season花 | akaneの鑑賞記録

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行ってきました髑髏城!

 

(注)盛大にネタバレ&長いです

 

天魔王のキャラが斬新でびっくり!
初めて拝見しましたが成河さん凄いです!

圧倒的な存在感。今後要チェックです。

天魔王と捨之介を一人二役でというコンセプトは完全になくなったので、二人が信長の影武者をしていたとか、捨之介が人が変わったように非道なことをして、なぜ!!というシーンは全くありません。
ワカドクロの時は、まだ少し曖昧だった設定ですが、今回ははっきりと信長に仕えていた3人の男「捨之介、蘭丸、天魔王」、というのが確立しました。
一人二役だと、同時に登場しているときはもちろん吹き替えで、マスクを着けていることも多く声もボイスチェンジしていますから、かなり無口で冷徹な存在、狂気よりは冷酷さ、あまり現実味のない亡霊とも思えるような存在だったように思います。
ワカドクロで初めて、森山未來が生身の人間としての天魔王を演じ、その生々しい存在感や狂気を表現したのですが、小栗、森山、早乙女の3人は、微妙なパワーバランスはありつつも3人は同じ年頃で対等な存在、小さいころからずっと一緒に育ってきたような背景が感じられました。
森山未來の天魔王は、どちらかというと元々頭が良くブレーン的存在。

気は小さいけれど思い上がりとハッタリからの暴挙。

 

しかし今回、天魔王ははっきりと蘭丸に対して「兄者」と呼ぶのです。
蘭丸の下で働いていたという設定。
小栗&山本がかなり長身で、成河が小柄なのも活かしての脚本なのでしょう。
二人に憧れながらも天魔王はいつも三番手で、彼らに対する嫉妬や劣等感が渦巻いているようでした。
俺だって…という鬱屈した思いが狂気となり…。
その屈折した性格や小者感を、高く低く自在にセリフを操って、素晴らしい身体能力で表現していました。
賛否両論はあるかもしれませんが、このような天魔王像を作り出したのは素晴らしいと思います。

 

山本耕史の蘭兵衛は、今一つ消化不足かな。
まずね、ちょっとガタイが良すぎる。
胸板厚いとこういうお着物似合わないのね。
立ち回りはさすがだったけど、新選組!って感じしちゃう。
なにげに頼れる兄貴、リーダーシップ感でちゃって、お小姓蘭丸ではないね。
天魔王に凋落される心の弱さというよりは、「自分もてっぺん取りたかった」とか「お前には任せられない!」から、天魔王から引き継ぎますみたいな。
そのあたりが、山本君自身も脚本も落とし込めてない感じ。

 

小栗君は二度目の捨之介。
前回がもう6年も前なんだーーー。
ギラギラしたところは少し落ち着いて大人の捨之介だったかも。
立ち回りは3人の中ではやっぱり今一歩だったかな。
着流し姿に関しては、ひょっとして気崩れしないように帯もさがりも全部縫い付けたワンピース型だった?
一度、裾を尻はしょりにするんですが、形が非常に不自然で。
で、小栗君 脚ほそっ!!
染五郎さんや勘九郎さんはもちろんのこと、仁左衛門様や幸四郎様ら70歳代でも裾をまくったときのおみ足の立派さ、美しさは惚れ惚れします。
あのふくらはぎと太ももの筋肉!
別にトレーニングしたり走りこんだりしていないのに、あの筋肉!
日本舞踊恐るべし!ですよ。

 

今回の殺陣をみてつくづく思ったのは、

「時代劇の殺陣は舞踊である」

ってこと。
みんな「アクション」だと思ってるけどそれは違うよね。
いわゆる松方弘樹さんみたいな時代劇俳優の方も歌舞伎役者も、殺陣の緩急が非常に美しいんです。
ゆったり溜めてから一気にとか、フッと力を抜くところとか。
しかもそのリズムが音楽的なんです。
先日見た猿之助さん「奴道成寺」の美しさに通じるところがあります。
腰の落とし方がしっかり決まっていることは当然として、やたら腕で刀を振り回しても迫力がないんです。バラバラな印象になってしまって。
小栗君は身体能力高いし、ミュージアムでも今放送されてるクライシスでも、見事にアクションシーンきめてますけど殺陣は全然違うんだよね~。
それからラストシーン。
捨之介が「よせよせ!(パッと裾をまくる)ガラじゃねえや!」って言って花道を走り去るところ!
アオドクロ染五郎さんのこのシーンが大大大大大好きで、もう巻き戻して何度も見るぐらい大好きで、もうほんとーーーーーーーーにカッコイイんですよ。
それがね、小栗君にはできないの(涙)
ワカドクロの時もダメだったし、今回はゆっくり歩いてはけてった。。。残念。

 

古田さんの贋鉄斎は、もう安定ですよ。
出てくるだけで新感線になる。舞台の空気が変わります。
笑いのシーンを一気に引き受けているようでいて、芝居の流れをピシッと引き締めるんです。
100人切りのところは、多分肉体的にしんどいからローラースケート履いて笑いでごまかした感あり。でもスピード出ないから迫力がなくて残念だった。
アオドクロの三宅さん、ワカドクロの時は兵庫の勝地君が引き受けてて、どちらもアクロバティックでカッコよかったもん。
やっぱりあそこは見せ場だからスピーディにやってほしかったな~。

 

極楽太夫のりょうさんは、とても良かったです。
クールビューティーだけど、仲間にはとても優しい太夫。
舞台で見るのは初めてでしたが、声もよく通るし動きも優雅。
小池栄子さんの太夫が男前でかなり好きだったのですが、りょうさんはまた違った魅力がありました。
でも戦闘服のデザインは×。

 

青木崇高さんの兵庫。ちょっと年取りすぎかな~。
るろうに剣心の左之助みたいなキャラ。頑張ってたけど、芝居が一本調子で少々うるさいし活舌もいまいち。

佐霧の清野菜名。体も良く動くしセリフも明瞭でしたが、芝居はまだまだかな。


回転客席はアトラクションのバーチャルライドみたいな感じ。

前方に180度広がるスクリーンの映像が急速にズームアップすると、建物の中に吸い込まれるような感覚になります。

ステージは円周上に6つほどセットが組んであって、転換の時はスクリーンを閉めて映像を映しながら客席を回して次のセットの正面に向けるシステム。結局ステージと客席の距離は変わないので、後ろの席だとずっと見えないまま。

この劇場はやっぱり前方に座って、目の前で疾走する役者さんをみるのが眼福ですね。傾斜があまりないので、人の頭が邪魔になって、床に座ったりされると役者が見えないんです。
それに奥行きや高さがないから、あまり立体的なセットが組めない感じ。
場面転換時のストレスはないけれど、利点はそれだけかな。

アンコールの演出は素晴らしかった!
それぞれのセットにそれぞれ関連する役者が立っていて、ぐるりと回りながら舞台を全部見せていく方法。
途中で非常口や出入口があったり、この劇場の全容が見えて面白かった。

 

あ、そうそう。中村鶴松さんが見に来ていました。カッコよかったよ!

花鳥風月の残り2公演、阿弖流為メンバーでの歌舞伎バージョンやらないかなぁ。
染五郎さん最後の新感線。染さまの着流しでの殺陣、みたいよう。

 

でも、パンフレットで古田さんが「これは劇団も若い時に作った、若者のエネルギーの芝居」と言っていて、それも一理あるなと。
馬鹿みたいに若さのエネルギーだけで突っ走っていく感じありますもんね。
それにしても27年経てなお、脚本を書き換えるアイデアがあり、変化し続ける「髑髏城の七人」。
中島かずき&いのうえひでのり、恐るべしです。

 

会場周辺は本当に何もありません!

 

これが問題の豊洲市場でしょうか?

いかにも仮設っぽいつくり。2020年には取り壊しとか??

この劇場を使いこなすのは難しそうです。
それに新感線ですら、1年以上のロングランでないとペイできないらしいですから。

今日は雨だったのでゆりかもめ乗車率高かったです。