三月大歌舞伎 | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

今回は昼の部のみ。

●明君行状記

真山青果の作品。ともかくセリフの応酬です。
あまりにもよく出来過ぎた殿様なので、自分の命を懸けてでもその本心が知りたい。殿様のお狩場で鳥を撃っちゃったのはご法度なんだけど、それを誰の責任か誰の罪かを延々問答するという、ちょっとよくわかんない設定。
そんな青臭い話がよく芝居になったなと思うけど、わりと面白かった。
亀三郎さんの美声が耳に心地よく、梅玉様も普段のおっとりお殿様ではなく結構ぞんざいな言葉使いでバリバリ攻めていくのが新鮮。
で結局、梅玉さんの勝ち~。
青地善左衛門はやりこめられて、はは~って平伏して終了。
罪の意識で自殺しちゃった家来もいるのに(苦笑)
親代わりのように可愛がってくれている殿様の本心を知りたくてごねるって…乙女か!
真山青果ってホント舞台照明が暗いですよね。
歌舞伎の舞台にいつも煌々と照明が付いているのが嫌だったんでしょうか。
音楽も全くないし。眠気を誘う。。。
次の義経千本桜が始まって下座音楽が鳴った時、なんかほっとしました。

 

●渡海屋 大物浦

さあ!昼の部のメイン!
仁左衛門様の知盛~!どれだけ楽しみにしていたことか。
染五郎さんの知盛もなかなか素敵でしたが、いや~凄かったですね。
登場してきたとこから、もう尋常でないカッコよさで、運送会社のおっちゃんには絶対見えませんよ。
オーラでまくりだもん。武士というより貴族の気品が溢れています。
高い音、低い音、変幻自在にセリフを操って、しかもちょっと関西弁のイントネーションなのがたまりません!
いちゃもんつけに来た二人組もあっさりとやりこめて、余裕綽々です。
ここは大物であることを見せつける必要はあると思うのですが、町民っぽくなくても良いんですかね?
一応身をやつして源氏討伐を伺っている設定なんだけど。
ま、そんなこたぁ些細な問題で、あの銀箔の知盛姿!!美しい!!
花道を駆け抜けていくときの目つきの恐ろしさと言ったら!!
知盛34歳ですからね。殺気にあふれていますよ!

 

瀕死の状態で大物浦に現われた知盛。すでに悪鬼の形相。
普段より、血糊の量が多いかも。
喉の渇きを癒すため刺さった矢を抜いて自分の血を舐めるというシーンは、ぞっとするほど凄惨でした。
でもその前に、喉元を手で何度も押さえて「喉が渇いた」ポーズはやらない方が良かったような…。説明的になるとちょっと醒める。矢じりに血を含ませるためになんか巻いてあったのもちょっとね…。
そのあとの聞かせどころは手に汗握る迫力。
仁左衛門さんのお芝居は、形の美しさと感情の吐露が完璧に一致、さらに義太夫ともリズムがシンクロしていてとても心地よく、わかりやすいのです。人物像やストーリーがスッと心に届きます。
安徳帝を源氏に託し、自らは入水するラスト。お年を考えるとこれが最後かな。
でも全くそんなことを感じさせない見事な最期でした。
安徳帝の右近くん。去年に続いてすでに2度目。
前回はまだ、少しフラフラしたり子供の様子もありましたが、今回はもうしっかりと演じてましたね。それぞれの相手の顔を見るときの表情とか、ちゃんと変えてますもん。
時蔵さんの典侍、そして我らが義経の梅玉さんも安定で、ベストキャスティングな義経千本桜でした。

 

●神楽諷雲井曲毬
さて、追い出しはにぎやかにどんつくです。
巳之助くん、どことなくほんわかした三津五郎さんの面影があって…。
江戸の町、往来にパフォーマーがいて、みんなでワイワイ見てる感じなのかな。
おおらかでいいですね~。
あるお方のブログに「どんつくは田舎者だけど、馬鹿に見えてはいけない」ってあって、なるほどと。
巳之助くんがこういう役をするとちょっと頭の弱い子になっちゃいますね。
まだまだ年も若いから仕方ないかもしれませんが、お家の芸として極めてほしいです。
後ろに居並ぶ面々、大工の菊五郎さんはやっぱり別格でしたね。
醸し出す雰囲気が江戸っ子で、別に何をするわけでもないんですがニコニコしてて和む。
あと慎吾くん!なんかすっごく美人さんでびっくりしちゃった!化粧がうまくなったのかな?とっても清純な色気があって、ホント綺麗だった。
子守女の右近くんが、え?と思うようなメイクだったのでなおさら…。
う~ん、田舎娘とはいえ、あの化粧で良いのか??結構ブサイクだったぞ。