「スパイの妻」「クリーピー 偽りの隣人」などで国内外から高く評価されてきた黒沢清監督が自身初の時代劇に挑み、第166回直木賞と第12回山田風太郎賞をダブル受賞した米澤穂信による同名ミステリー小説を映画化。
荒木村重(本木雅弘)は織田信長の暴虐なやり方に反発して謀反を起こし、有岡城に立てこもる。織田軍に包囲され孤立無援となった城内で、村重は血気盛んな家臣たちを抑えつつ、妻・千代保(吉高由里子)を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心していた。そんな中、城内で少年が殺害される事件が起こり、その後も怪事件が続発する。容疑者は密室と化した城内にいる家臣や身内の誰かで、城外には敵軍、城内には裏切り者という状況に、誰もが疑心暗鬼に陥っていく。追い詰められた村重は、信長の使者として説得に訪れ牢に囚われた天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)に協力を仰ぎ、事件の解決に挑む。
このキャスティングは結構期待していたし、ちょうど大河ドラマと同じタイミングで荒木村重の「有岡城の戦い」が描かれる。しかもドラマで竹中半兵衛を演じた菅田将暉が、黒田官兵衛を演じる。
と話題もバッチリだったんですけど…
これは大きく期待外れ。
菅田君は、大河ドラマでの竹中半兵衛が素晴らしすぎましたからね。相当な減量をして痩せこけながら、最期の最期まで戦場に赴き、軍司としての死に様も美しかった。
どのタイミングで撮影をしたかわかりませんが、1年半も幽閉されていた割には、それほど悲壮感はなかったかな。
まぁ、村重よりも1枚も2枚も上手で、彼をずっと誘導していったという流れは面白かったです。
村重の妻・千代保を演じた吉高さんもね、重要な役なんだけど、あの舌足らずなしゃべり方で全然ダメでした。凄みとか覚悟とかそういうの全然感じられなくて。
大河ドラマで「だし」を演じた山谷花純さんの方がずっと印象的でした。
青木崇高、柄本佑、ユースケ・サンタマリア、近藤芳正、吉原光夫、近藤芳正、坂東龍汰、矢柴俊博……書ききれないほどベテランの俳優さんが大勢出ているのに、どの人も魅力がなく、全然印象に残りません。
意外だったのは、信長役が坂東新悟君だったこと。
歌舞伎では女形で、
信長とは一番かけ離れたポジションなんだけど、うりざね顔っぽいところがキャスティングされたのかな?
でもさすが歌舞伎役者。体幹の確かさと、活舌の滑らかさ。喉ではない腹から出る声に迫力があって良かったです。
ロケ地のお城や神社仏閣は非常に重厚感があり、絵としては美しいです
村重は、信長が毛利に兵力を割かれている中で謀反を起こし、毛利が村重に合流することを頼みの綱として籠城しています。
そんな中、村重は説得に訪れた織田方の黒田官兵衛を地下に監禁。不可解な事件が起き、疑心暗鬼が蔓延する有岡城で、次第に村重は官兵衛を頼るようになっていきます。
籠城している城の中での出来事ですから、あまり動きもなく、ひたすら「問答」「謎解き」が続きます。
村重は家臣たちに事情聴取し、現場を検分し、それらをまとめた資料を官兵衛に見せて、犯人や手口を教えてもらうのです。
描かれるのは4つの事件
「冬:自念」
織田信長に寝返った安部二右衛門の息子・自念を人質として捉えている。自害を懇願する自念を、村重は殺さないと決めたのだが、なぜか幽閉していた部屋で弓に射抜かれて殺された。
「春:首」
織田方の大津伝十郎に、村重たちの部下が夜襲をかけた。
敵の大将の首と思われる首が4つあがるが、どれが大津の首か分からないため、手柄が判明せずに城内で家来同士の対立が深まる中、ある若武者の首が凶相を帯びた首とすげ替えられる事件が発生。周囲は祟りの兆しだとおののき始めてしまう。
「夏:寅申」
城内の士気が下がることに悩む村重は、開城の交渉をするために、僧侶・無辺に明智光秀宛ての密書と手土産に茶壷の名品「寅申」を持たせて、光秀に仕える斎藤内蔵助に遣わせることにした。ところが無辺も警護の四郎介も何者かに斬殺されてしまい、「寅申」は紛失、密書も読まれた形跡があった。
「秋:天罰」
織田との内通者は、村重が明智光秀と開城へ向けた和睦を進めようとしていたことを家臣たちの前で暴露しようとするが、何者かに撃たれ、さらに雷に打たれて死んでしまう。それはまるで天から罰が下ったかのように見えた。
もちろん、実のところはどうだったのか分かりませんが、妻も家臣もみんな捨てて逃げ出し、1人だけ生き延びたとされる「荒木村重」を、本木さんに演じさせるることによって、重厚で良い人に描きたかっただけ?って感じです。
戦国時代、かなりの暴君であった「織田信長」と対比させるため「不殺」を押し出していますが、この時代に謀反などを起こした家の者に自害も許さず囚われたままにするというのは、却って屈辱的なのではないでしょうか?
現在の感覚からみれば「殺さない」のは慈悲深いと思うかもしれませんが、この時代だったら優柔不断ですよね。
殺すだけの度胸もないというか。
皆殺しにしたりするのは非道ですけれど、自分が責任を持ってそういう処罰をすると決心し、それを実行させ、近隣の者たちにその力を見せつける。
そういう腹の座ったところもなく、決断を先送りにしただけではないでしょうか?
官兵衛も見抜いていましたが、優れた策を出す家臣もいない。
まぁ役に立ってるな、というのは村重の隠し刀である郡十右衛門役のオダギリジョーぐらい。
「織田軍にいた頃には秀吉や明智光秀ら、スター武将に囲まれて楽しかったでしょう」という官兵衛のセリフは残酷ですね。
さらに官兵衛は、家臣たちはみな摂津の出身で、織田家に敗れても軍門に降ってこの土地に残れるが、余所者の村重はそうではないとも指摘します。他所から来た社長がすげ替えられても生え抜きの社員は残るという企業ドラマにも通じる状況です。
城内の対立や疑心暗鬼、機能不全が積み重なり、村重はますます官兵衛を頼らざるを得なくなっていきます。
そして決定的に詰んだのが、信長に通じていた内通者を殺した犯人を信長側に突き出すことで和平を模索する策だったのに、その犯人が差し出すことのできない人物だったこと。
官兵衛は村重に、直接自身が出向いて行って、毛利の援軍を依頼することを提案します。
一旦は「良い策じゃ!」と受け入れる村重。
しかし現実は、窮地に陥ったこの状況で助けを求められても毛利は助けないし、家臣たちも村重が城を捨てたと見做します。
もはや信長とも交渉できない段階まで来てしまっています。
官兵衛は、城中が疑心暗鬼で支配され、信長が村重を放免しない段階が来るまで、10ヶ月の間、時間稼ぎをしていたということ。
地下牢に幽閉している官兵衛に相談し、腹を割って話ができるようになったと見せかけながら、破滅への道を歩まされていたのです。
そりゃ当然ですよね。
村重を説得しに行った官兵衛が帰ってこない
寝返った
とみなされて、人質だった息子・松寿丸は殺されたと知らされたのですから。恨み骨髄だったと思いますよ!
(実際は竹中半兵衛が機転を利かせて子供をすり替えたので無事でした)
村重は、戦乱の世を武士として、一城の主として生き抜いていく知恵も覚悟も資質もなかった人だと思います。
ドラマのトータス松本の方が、小物感があって良かった。
そして、城内で発生した不可解な事件の首謀者が、まぁビックリのお花畑。
「それはないわ!こんな話よく作ったな!」って思うほどバカげてました。
無理やり「村重は有岡城を救うために、尼崎城へと向かったのだ」と立派な人に描こうとしているようで、どうにも共感できませんでした。
大河ドラマの方は、ライトな作りだけれど、意外と骨太に史実に向き合っていて、こちらは超真面目なフリをしながら大いなるファンタジーだったというオチでございます。
黒澤監督ってなんか持ち上げられてるけれど、私は面白いと思ったことないですね。
「蛇の道」とか最低だったし。













