原作に惚れこんだマイケル・キートンが監督・主演・製作を務め、記憶を失いつつある老ヒットマンが完全犯罪に挑む姿を描いた犯罪ノワール。
2つの博士号を持ち、元陸軍偵察部隊の将校という異色の経歴を持つ殺し屋ジョン・ノックス。ある日、急速に記憶を失う病により、数週間以内にすべてを忘れてしまうという宣告を受けた彼は、殺し屋稼業に終止符を打つ決意を固める。ところがその矢先、長年絶縁状態だった息子のマイルズが現れる。マイルズは娘をレイプした男を殺したことを告白し、その殺人の罪を隠してほしいと涙ながらに懇願してくる。ノックスは息子のため、刻一刻と記憶を失う中で、人生最後の完全犯罪に挑む。
脚本、俳優、演出、音楽、全てにおいて「センスが良い」って感じ。
プロット(筋書)というタイトルも間違いではありませんが、分かりやすく言うと終活ですね。
「KNOX GOES AWAY」という原題の方がしっくりくるように思います。
博士号を持ち、軍では将校の経歴もある。頭は切れるし教養もあり、常に冷静沈着で完璧な仕事をしてきたノックスを、極めて淡々と演じているマイケル・キートンが素晴らしかった!
作戦としてとぼけたふりをしているのか、本当に記憶が曖昧なのか、そのあたりの微妙な演じ分けや、だんだん症状が進んで本当に何も分からなくなってしまった時の顔つきなども見事でした。
ベテランの殺し屋ノックス。
認知症の症状を自覚し、病院で調べたところ、アルツハイマーではなく、急速に症状が進むクロイツフェルト・ヤコブ病だと診断され、今後、まともに記憶を保てるのは数週間だろうと言われます。
ある夜、同僚と殺しの現場に入りましたが、突然意識が曖昧になり、同僚まで殺してしまいます。
「3人の死体は、現場に残された同じ銃で殺されている」という有り得ない殺人現場を残してしまい、いよいよ足を洗う決意を固めたところで、長年断絶状態だった息子のマイケル(ジェームズ・マースデン)がやってきます。
「娘がネットで知り合った男にレイプされ妊娠。怒りにまかせてその男の家に押し入り、ナイフでメッタ刺しにして殺してしまった、なんとかしてほしい。殺し屋の親父にしかこんなことは相談できない!」と泣きついてきます。
息子を救うべく、完全犯罪のアリバイ工作をするノックス。
自分を犯人に仕立てても、数週間後にはもう認知能力がなくなっているのだから、どんな取り調べを受けてもボロがでることはないわけです。
日に日に意識が飛んでしまう時間が長くなり、分散して保管してあった財産をまとめようとしても、手にした鍵がどこのものか分からない、宝石をどこに隠したのか思い出せない、といったもどかしさ。
いつどうなるかわからないからと、作戦を伝え自分を見守っていてほしい、毎日連絡して状態をチェックしてほしいと頼むのは、長年の信頼関係で結ばれたゼイヴィア。
除隊したノックスを殺し屋にスカウトした人物です。
これをアル・パチーノが演じているんですが、まぁ渋いというかカッコいいんですよねーーー
枯れてないよねーーー
自分が手ほどきした後輩が、記憶を失っていってしまうのを見とどけ、彼の“最期の仕事”に協力するのは辛かったでしょう。
これらの殺人事件を、地元警察のイカリ(スージー・ナカムラ)という東洋系の女性刑事が担当します。
自分がいかに着眼点が鋭く優秀か、と自分から語るような人物。
確かに推理力、捜査力は優れているのですが、まんまとノックスの策にハマったというか「策士、策に溺れる」みたいなところがあって痛快でした。
終活をするにあたって、長年疎遠になっていた奥さんのルビー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)にも会いに行きます。
ノックスは孤独だと思い込んでいたけれど、意外と気持ちは繋がっていたところも、なんだかホッとさせられるエピソード。

ノックスは毎週木曜日、娼婦のアニー(ヨアンナ・クーリク)と過ごすのが恒例でした。
彼女はポーランド人で、ノックスの様子がおかしいことを悟って、少々前のめりになっちゃうんですね。
大人しくしていたらご褒美もあったのに…
途中で「あれ?そういうことなの?大丈夫なの?」って思う所もあるんですけれど、見事に伏線回収して鮮やかに決着します。
これはネタバレ無しで楽しんでくださいね!
ただ、本当の犯人である父親も、レイプ被害にあった娘も、あんまり反省していないところがちょっと引っかかったかな。
娘は犯人が誰に殺されたのか分かっていないし、また過ちをおかしそう。
オススメです!







