「このディスプレイ、私がデザインしたの。」

「そうなんですか?」

「ええ、いつもは閉店後の入れ替えが多いからこんな風に作業しているところを人が見ていく事はあんまり無くて、だから今みたいな生の声を聞く事もないから道行く人が見てくれているとなんだか嬉しくて。」

「凄く素敵です。」

「このお仕事好きなんですか。」

「ええ、作業している時は時間の経つのも忘れてしまうくらい。それに何も考えなくていいから。」

そう言ったその女性の顔が少し寂しそうに見えた。

「好きな仕事が出来て良いですね。」

「あなた達は高校生なのかしら。」

「ええ、今、二年です。」

「そうなの。友達と一緒に居る時が一番楽しいわよね。」

「ええ。」

そう言われて三人は顔を見合わせた。

「お姉さんには高校の頃の友達って居ますか。」

「ええ、今も大切な友達よ。仕事で中々会えないけれど何かあった時はいつでも味方でいてくれるそんな友達よ。」

「そうなんだ。私達もずっとそんな友達でいたいです。」

「大丈夫よ。きっとずっと友達でいられるわよ。何でも打ち明けられるような、ね。」

そう言いながら女性の顔にまたほんの少し陰りが入ったように三人には見えた。

「浅井さ~ん。」

ウインドウーの向こう側から手招きしてそう呼ぶ声が聞こえた。

「あ、今、戻ります。ごめんなさい、仕事に戻らなくては。誉めてくれてありがとう。また仕事頑張れるわ。」

「いいえ、こちらこそ。お仕事頑張って下さい。」

その女性の後ろ姿に向かって杏奈が声を掛けると女性は走りながら振り返って会釈した。

「感じの良い女性(ひと)ね。」

「うん、優しそうで。あんな感じの大人の女性になりたいね。」

「え~瑞希とは正反対な感じだったよ。」

「どういう意味?」

「だって、ちょっと寂しそうな感じに見えた。」

「うん、そうだね、何かこう儚げで消えてしまいそうな感じ。」

「それって私と正反対なの?」

「正反対でしょ!」

今度は杏奈と真理子が声を合わせてそう言った。

「でも、このディスプレイはほんと素敵。」

三人は再びウインドウの中を見て顔を見合わせた。

「うん。もし、ね、」

真理子はそこで言葉を止めたが三人の中には同じ言葉が浮かんでいた。もし、産んでくれた母が生きていたのならこんな風に自分達の成長を傍で見守ってくれていただろうにと。

「私達、将来はどんな仕事するのかなあ。」

「瑞希は弁護士だっけ?」

「まだ決めたわけじゃないよ、第一なれるかどうか。大学だって行くかどうか決まってないし。」

「そっか、瑞希は家を出るんだものね。」

「でも、みんな今の女性(ひと)みたいに好きな仕事が出来るといいよね。」

「うん、でももしそうならなくても私達はずっと友達。」

「好きな事出来なくても三人でいられればきっと楽しいよね。」

「うん。」

「じゃ、取り合えず今から瑞希の弟達の誕生日プレゼント探しに行こう。」

そう言うと三人は軽やかな足取りで町の中を歩き回った。一緒にいると何を見ても楽しい。それぞれに抱えているものはあるけれどそんな事も今は忘れていられた。そして三人ともいつかきっとそれも乗り越える事ができると思った。三人で力を合わせれば――。



  <二百六十二へ続く>



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