中学3年生の秋、2人目の父と喧嘩をした。

ちょうど裁判が始まってすぐの頃だったと思う。

それまでも喧嘩をする事はあったが、それは些細な事で、私が叱られて、反抗して、言い合いをする、その程度。

でもその時は、言葉だけでは済まなかった。

きっかけは、ほんの小さな事。
テレワークの父が休憩時間にリビングへやってきた。
そこにいたのは、私と、弟と、妹。
母は仕事へ行っていて不在。

部屋へ入るなり父は言った。
「テレビなんか見てないで部屋くらい片付けろよ」

その日も私は、朝から洗濯をして、ご飯を作って、その後片付けもして、それでも、言い返さなかった。
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、無視というその時の私にとって1番平和な行動に出た。

でも次の瞬間、ぱんぱんに溜まった水は溢れて溢れて、もう自分では止められなくなっていた。

父は、私ではなく弟に小言を言い始めた。
スプーンが汚いだとか皿の洗い方が雑だとか。

我慢の限界だった。

「お前がゲームやらスマホやらでサボりながら仕事してる間にこっちでは小3の男の子が毎日欠かさず進んで皿洗いをやってくれてんだよ!どの立場で文句言ってんだよ!謝れよ!」

親にお前なんて言ったことがなかったし、
普段から言葉遣いには厳しくされているからあの時どうして自分からこんな言葉がどんどん迷いもなく溢れ出てきたのか分からない。

まるで、自分じゃない誰かが体に乗り移っているようだった。

いっぱいになったコップの水が溢れるみたいに、
ダムが崩壊したみたいに、
大きく膨らんだ風船が割れるみたいに、
私は自分でもコントロールできないくらいに声を荒げて、父を家から追い出そうとした。

「出てけ!さっさと出てけよ!」

父は余裕そうに見せたかったのか、
ああそうか出ていくよと言った。

そして妹に、ごめんね、出ていくわ。もう会えないかもしれないけど、と言った。


その時私の頭に浮かんだのは、小さい頃の記憶。
実父も、私によく同じようなことを言ったから。

ごめんね、出てく。
ママが出てけって言うから。
もう手つけられないから。

頭を撫でながらそう言うと、いつも本当にどこかへ行く。
そこに残るのは、泣き崩れた母と、無力な私。


よく分からずに父に頭を撫でられるまだ幼稚園の妹を見ていられなくて、
私は近くにあったお菓子の箱を父に投げつけた。
するとその瞬間、父はこっちを見てすごい勢いで私のところへ来ると、

私の服をつかみ、
髪の毛をつかみ、
頭を床に叩きつけた。
頬をぶって、
足を蹴り、
髪を引っ張った。

一瞬の事で驚いた。

でも、不思議とあまり痛みは感じなかった。

こう言う表現はドラマや小説でだけだと思っていたけれど、本当だった。


しかし、喉を引っ掻かれた時に、まずいと思って抵抗した。
出た腹を思いっきりつねり、
体のあちこちを全力で蹴った。

すると父は私から離れて、家を出ていった。


残ったのは、力尽きた私と、ビビり散らかした弟と、理解が追いついていない妹。