2日ぶりに見た家は、なんだか少し小さくなったように感じた。
インターホンを押す。
最初に誰が出てきたのか、もう覚えていない。
覚えているのは、私が玄関の扉を開けて、弟が荷物を持って外に出ようとしたところへ、2人目の父がリビングから出てきたところから。
どうせいるだろうなとは思った。
母が呼んでいるだろうなと。
お前なんかもう赤の他人のくせに、なんて言葉は死ぬ気で飲み込んだ。
ここからはもう、何もかもがハイスピード。
父は弟が持つ学校のリュックや制服、旅行鞄など全てを取り上げた。
その瞬間、私はこいつから弟を離さないとと思い、弟の腕を引っ張って父から引き剥がした。
弟にとりあえず車に乗れと言って、父を力一杯押して玄関の扉を閉めた。
弟は車に乗った。
祖父母も車に乗った。
後は私だけで、急いで車に向かった。
そこで、玄関の扉が開く。
出てきたのは、父ではなく母だった。
母が私の腕を掴む。
振り返ったその時、目が合った。
母はその時何も言わなかったけれど、
''行かないで''
その言葉が私の頭の中に響いた気がした。
何もかもがあっという間だったあの土壇場の中で、この瞬間だけが、時がゆっくりと進んでいると感じた。
あの時の母の顔は、きっと一生忘れられない。
泣きそうになって、悲しくて、悔しくて、申し訳なくて、でも怒りもあって、だから私は、母の手を振り払った。
急いで車に乗り、祖父母、私、弟の4人で、山の上の祖父母の家へと向かう。
隣には、靴も履かず、部屋着のまま、なんの荷物も持たずに家を出てきた弟が座っていて、なんだか少し笑ってしまった。