気がつくと朝が来ていた。
長い長い夜だったけれど、どれだけ辛くても楽しくても、人間の意思になんて関係なく夜は明けるものなのだと、そんな当たり前のことに改めて気付かされた家出生活1日目。
2日目は、昨日の夜に応募したアルバイトの面接に行くことになった。いくつも応募したが朝一でメールをくれたのは一社だけで、時間が勝負だったその時は聞き馴染みのある会社名であることに安心し、深いことなんて何も考えていなかった。
ただ行く前に、Googleマップを使って、住んでいることにする適当な住所だけを用意して行った。
その日は朝から土砂降り。もちろん傘なんて持っていなかったから、百均でビニール傘を買った。
傘を刺しながら背中を丸めて雨の中を歩く自分が急にすごくおかしく思えて、なんだか少し楽しくなってきた。
人生で初めてのバイトがこんな形で始まるなんて思っていなかったけれど、働いて報酬をもらうということにわくわくもしていた。
面接では、たくさん嘘をついた。その時使った作戦は、察してもらおう作戦。
「人は察すると、深く聞かずに自分で勝手に納得しようとする」
これまでの人生で学んだことを活かした。
少し訳ありな家庭の雰囲気を出したら、私から何も言わなくても勝手に察してくれる。そして勝手に納得もしてくれる。
ただ筋が通るように、矛盾がないように話すだけで。
正直、心は痛んだ。誰かの同情を良いように使うのは、人の感情を盗んでいるような気持ちがしたから。
それでも私はブレーキを踏まずに、話し続けて、そのまま面接の場で採用され、何も怪しまれることなく次の日の出勤が決まった。
私の記念すべき人生初バイトは、引越し業者。