高1の2月、児童相談所の職員が私の家のインターホンを鳴らした。

その時ちょうど母は5日ほど家をあけていた。
仕事と裁判のことで東京へ行っていたのだ。

「〇〇市児童相談所のものですがー。〇〇さんいらっしゃいますかー」

後から知ったが、近所の誰かが、親が数日帰ってきていないようだと連絡を入れたらしい。

私はインターホンを無視した。
弟と妹にも喋るな音を立てるなと言い、
居留守を使った。

何も困っていないのに、信用できない大人を家に入れるわけにいかなかった。

モニターから外の様子を確認すると、
小太りなおばさん2人が立っていた。
首からは名札をぶら下げていて、手には青いバインダー。
いかにも市の職員といった見た目だ。

しばらくするとおばさん2人は諦めて帰っていった。
きっと母にも連絡がいくだろうし、
私からも母にこの出来事を伝え、
それでもう終わったと思っていた。



しかし次の日学校へ行くと、昼休みに担任に呼ばれた。
指定された部屋へ入ると、そこには昨日のおばさん2人が座っている。
軽く自己紹介をされた後、小さい方のおばさんが口を開いた。

「近所の方から連絡があったんだけど、今は子供だけで過ごしてるの?」

すると大きい方も言った。

「何か困ってることがあったら助けるのが私たちの仕事だから。」

分かっている。

実際にこの人たちのおかげで救われる命があることも、近所の人が良かれと思って電話をしたことも。

でも、全てが余計なお世話でしかなかった。
私たちは何の問題もなく過ごしていた。
ご飯を食べて、お風呂に入って、宿題をして、学校へ行く。
たったそれだけのことを数日繰り返すだけなのだから何も困ったことなんてない。

本当は、「余計なお世話です。」とはっきり言って部屋を出てやりたかった。でもそんなことをしたら逆効果なことも分かっていたから、もうそこまで出かかっていた言葉を飲み込んで、ニッコニコな笑顔で言った。

「大丈夫ですよ。何も困ったこともありません。でも何かあればすぐに連絡させていただきますね。ありがとうございます。」

おばさん2人は、満足そうに笑った。

ああ、この人たちは学校にまで来るのか。
そう思った。
もうどうやっても逃げられないのだと感じた。

おばさんたちからではなく、あの子達はかわいそう、あの家族は変わっている、そんな言葉の数々から。