わいおです。


先日水をしこたま注文したのをすっかり忘れてて、何気なく届いた荷物をぽんと受け取ったら

めちゃめちゃ重くて「はうあ!」って言ってしまった。ちゃんと「はうあ」って言ってしまった。


ヤマトさんも何気なく渡すんじゃねえよ。

おじいちゃんやったら「はうあ」ですんでねえぞ。「あべし」やったぞ。



そういやその昔実家で、生まれて初めて宅配便の荷物を受け取った時のことを思い出した。


きったねえ字で自分の名前を書いた。フルネーム書いてくれる?って突き返されてもっときったねえ字で名前も書いた。


あのころと何が変わっただろう。字の汚さは一緒くらいだ。


初めて受け取った荷物はやけに重くて、中からごっそごそ音がした。動いてる!?

怖くなって机の下に置いてオカンの帰りを待った。その間もずっと響く謎のごそごそ音。

ダンボールに正解書いてあんねんけど、当時は知らんし、そんなん。


帰ってきたオカンが叫んだ。

「伊勢エビやん!!お父さんの会社の人からやわ。」


イセエビ??何それ??小学校4年の俺には英語にしか聞こえなかったイセエビ。

それがたしか俺の初めて受け取った荷物。しかも生きてるヤツ。


ダンボールを開けると発泡スチロール。

その中で元気よく動く2匹の伊勢エビ。

わーすげー!

こいつら飼おうよ!!


俺は二匹の伊勢エビに「ルパン」と「不二子」という名前をつけた。

何故って?当時カリオストロの城ビデオすり切れるくらい見てたんよ。

赤いやろ?ルパン。※カリオストロのルパンは赤くない。


そしてその日の晩、食卓に並んだのはルパンと不二子の刺身だった。もうどっちがどっちかわからんかった。


ただ覚えてるのはルパンも不二子もこれまでに経験したことないほどの美味しさだったということ。


「ぷりっぷり」と「とろっとろ」は同居するのだと知った小4の冬。

砂糖とチョコレート以外に「甘い」ものがあったんだ。


「こっちはあんたの分、こっちはお兄ちゃんの分ね」


オカンがそう言ってさっきもう一匹冷蔵庫に入れたのを俺は見ていた。

もちろん自分の分は秒殺で平らげた後のこと。兄貴の帰りは遅い。オカンは2階に上がった。


12切れくらいあるお刺身、ひと切れくらいもらってもわからんだろう。

でも、こんな立派な伊勢エビ。兄貴だってきっと初体験に違いない。

同じ感動を同じ量だけ味わってほしい。


とは1ミリも思わなかった。10切れありゃあ十分やろ。


ってゆーかもう左手に醤油の入った小皿をスタンバってるしね。


ということで一切れパク。冷蔵庫パタ。しばらくしてまた冷蔵庫パタ。一切れパク。


数分後、伊勢エビは5切れになっていた。誰や、こんなに食ったのは!


これはまずい。いやウマイんだけど非常にまずい。なぜこんなことに。


伊勢エビの頭と大根のつまを巧みに配置し、できるだけゴージャスに4切れの刺身を盛る。あれ?4切れやっけ??ま、いーや。

フレンチばりに4切れの伊勢エビを綺麗に配置。


バイクの音がして兄貴が帰ってきた。


「おかえり!伊勢海老があるでー!!」


と言ったのはなんと俺。

あえて自分の不利な環境に相手を呼び込むことで不信感を取り除くという技術を小学校4年の時分にすでに身につけていたのだ。


「おお、ほんまか!これが伊勢エビか!!」


やっぱ兄貴も初体験だったか。


「すげー!身がとろけよる!!

それにしてもやっぱ高級な食べ物やねんな!身がこんだけしかないなんて!

置いといてくれてありがとうなー」


まさかの礼を言われた。

なんて心の綺麗な兄貴なんだ。長男の鏡だ。


とは1ミクロも思わなかった。


「バカめ。コイツ気づきもしてねえよ。ぷっすー」

としか思わなかった。


そんな兄貴がふいに一言

「お前一切れ食うか?」

と言ってきた。


マジか!ガンジーおる。家にガンジーがおるぞ。


さすがに俺は兄弟の愛情の深さに感激した。感激したかった。

そんな人間でありたかった。

でも現実は

「やったね、いっただっきまーす!」


そんな初めての荷物事件。

これって兄弟間での窃盗罪ですかねー?

まあもう時効ですよね。うん。


むしろ窃盗罪で捕まるのは伊勢エビの「ルパン」ですね。

え?ルパンは何も盗ってないって?


いいえ、奴はとんでもない物を盗んでいきました。


それはオイラの「心」です。 ルパンザサーッ♪