THE ARK 失われたノアの方舟
タイラー・ロックの冒険① 上下 ボイド・モリソン 2009.2010年 竹書房文庫 2013年
UCLAの教授で女性考古学者のディララ・ケナーは、生涯をノアの方舟の探究に捧げ、3年前に行方不明になった考古学者の父の友人であるサム・ワトソンから至急会いたいという連絡を受けてインカの発掘調査の現場からロサンゼルス空港に駆けつけたが、そこでワトソンは、父が実物が存在する証拠を突き止めたことを告げ、さらに意味不明な人名や会社名を残し、このままでは数億人の犠牲者が出ることを告げ、ディララにも逃げろと語り事切れる。何者かに暗殺されたことを悟った彼女は、残された言葉の中から世界有数の民間エンジニアリング企業ゴルディアン・エンジニアリング社の主任エンジニアであるタイラー・ロック博士の名前に辿り着く。
一方、カナダ東海岸のニュー・ファンドランド島沖合300キロの北西大西洋上の海底石油採掘プラットホームで仕事を請け負っていたタイラー・ロックはアポイントを取ってヘリコプターに乗って彼を訪ねてくるディララ・ケナー博士を待っていた。
彼は元陸軍大尉であり、かつ、極めて優秀なエンジニアでもある上に、彼の所属するゴルディアン社は世界中に顧客を持ち、政府上層部にも顔が効き、コンピュータ操作の天才なども擁していた。
ところが彼が、陸軍における部下で、現在もゴルディアン社に引っ張って一緒に働く元プロレスラーであり、電気工学のエキスパートの巨漢グラント・ウェストフィールドと一緒にディララの乗るヘリコプターを迎えに出ているまさにその時、ヘリコプターのローターが突然爆発し、ヘリは墜落、操縦士、ディララ、そして数人の乗客とともに海中に沈没する。
持ち前の機転と潜水作業員としての経験で、ディララを含む全員を救助に成功したタイラーであるが、直後に何者かがプラットホームに潜入し、施設全体を爆破して海中の藻屑とすることを阻止したことで、はからずもディララとともにノアの方舟を巡る大陰謀の中に巻き込まれて行く。
旧約聖書におけるノアの方舟を巡る謎に新解釈を与え、人類滅亡を企てる陰謀を絡めた斬新な冒険小説の登場で、去年、今年と読んだジェームズ・ロリンズの戦う科学者たちのシグマ・フォースシリーズにも似たところがあり、著者のボイド・モリソン自身が、俳優兼エンジニアであって、過去にはNASAの宇宙ステーション計画にも携わり、バージニア工科大で工学博士の学位を取得した経歴を持ち、その科学的知識に裏付けされた背景を元にした冒険アクションはかつてのジェームズ・ボンドやインディ・ジョーンズには及びもつかないテクノロジーと、歴史観をそなえていた。
シグマフォースシリーズのレビューはこちら
私が個人的にダニエル・クレイグのボンドを認めないのは、最初から携帯電話を駆使し、ハイテクの権化と化していたからで、どれほど鍛え上げた肉体を誇示して、派手なアクションをこなしても、自分の髪の毛をドアに貼り付けて、侵入者を察知し、ホテルの部屋に入ると必ず電話の回線音をチェックし、額縁の裏側や鏡がマジックミラーになっていないかを確認していた初代コネリーボンドのアナログな魅力に惹かれるからであろう。
理系頭に乏しい私には難解な部分も多いが、本国アメリカやイギリスではシリーズ第4版まで出版されているらしいので、これからも目が離せないような気もする。

