Another 上・下 綾辻行人 2011年 角川文庫
2012年 角川スニーカー文庫
夜見山(よみやま)市の夜見山北中学校には不思議な伝説が語り継がれていた。
数年おきに、3年3組のクラスの構成員とその家族が一年のうちに相次いで死亡するというのだ。
しかしそれは校内の噂の域を出ず、詳細を知るのは実際に事件が起こった年度のそのクラスの関係者に限られていたが、なぜかそれらの人々の記憶も曖昧になっているケースが多かった。
噂の発端は1972年のクラスに発する。
その時の3年3組で成績が良く、性格も明るく人望があり誰からも慕われていたミサキという生徒が不慮の災難で死亡する。
ミサキの死を受け入れ難いクラスメイトたちは、ミサキは死ななったことを暗黙の了解として、ずっとミサキがそこにいることにして過ごした。
担任の先生を始め学校側も協力的で、卒業式の日にはミサキの席も用意された。
やがて卒業式の日に撮ったクラスの記念写真が出来上がって来たが、そこには死んだはずのミサキの姿も写っていた。
以来数年おきに起こる連続死亡年次のクラスでは、誰か1人をミサキになぞらえて、いないものとして扱うことで死の連鎖を免れようとする習慣が生まれた。
大学教授の父親がフィールドワークで1年間インドで研究活動をすることになり、一人っ子の榊原恒一は亡き母の故郷である夜見山市の母方の祖父母宅で中学校最後の年を送ることになり、夜見山北中学校の3年3組に転入することになっていたが、折悪く、持病の肺気胸が再発し、入院したまま新学期を迎え、5月の連休明けから登校する運びになっていた。死んだ母の妹である叔母の怜子から、夜見北中での学校生活に関する不思議な注意点を聞かされたり、3組のクラス委員の男女がクラスを代表してお見舞いに来てくれたりして、それまで東京の私立の中高一貫校に通っていた恒一もまだ見ぬ公立中学の生活に一抹の不安と同時に安心感も覚えた。
退院間際のある日、久しぶりに外の空気を自由に吸って病室に戻ろうとした恒一はエレベーターで北中の制服を着て片目に眼帯を当てた不思議な雰囲気の少女と乗り合わせる。不思議な事にその少女は霊安室しかない地下1階で降りた。
やがてクラスに編入した恒一は早速初日からいろいろ語りかけてくる友人を得たが、何かクラスに他所他所しいような怯えの雰囲気を感じたが、東京の有名中学からの転校生が他所ものとして見られることは当然かと納得する。
彼が驚いたのはあの病院のエレベーターで出会った眼帯の美少女が同じクラスであったことで、なぜかクラスで影の薄い彼女に思い切ってあの日のことを話しかけ、彼女の名前が見崎鳴(ミサキ メイ)である事を知る。それからクラスの雰囲気はますます悪くなり、恒一は疑念の思いに囚われる。
病院の退院後検査の帰りに恒一は<夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の>という不思議な人形ギャラリーを発見し、興味本位で入ったその地下展示室で鳴に瓜二つの球体関節人形を発見する。やがてそのギャラリーは彼女の自宅である事を知り、鳴の母親が人形作家である事。そしていつも眼帯を着けている方の彼女の眼は青い瞳の義眼である事を知る。
ほどなく女子クラス委員で病院に見舞いにも来てくれた桜木ゆかりが母親が交通事故に遭った報告に驚いて、急遽早退しようとして廊下の階段から転落して、傘の先端で喉を貫かれて死亡するという悲惨な事件が起こる。事故に遭った彼女の母親も死亡が確認され、今年度の3組は「有りな年」だったことが認識され、その後も生徒やその家族の死亡が相次ぐ。
ついには心労からか担任教師が教室内で自殺する。
過去の有る年度で担任の経験がある図書館司書の千曳(ちびき)と、現在の3組の副担任で一気に重責が降りかかった女性教師の三神先生から、恒一とその仲間、そして鳴は過去のケースを掘り起こし始める。
さらには過去の3組のOBだったという男性のおぼろげな記憶から、死の呪縛から逃れる方法がある可能性を知った恒一たちは普段は使われていない旧校舎の当時の3年3組の教室に忍び込み、そこに巧妙に隠された1個のカセットテープを発見する。
そして夏休み、三神先生の発案で、呪縛を断ち切った年次に行われた夜見山合宿が企画された。
そこで巻き起こる最後のカタストロフィ。恒一や鳴、そして仲間たちは無事に帰還できるのか?
そしていないはずの人の意外な正体が明かされる。
学園青春ホラー・ミステリー。
著者は1987年に『十角館の殺人』を引っ提げてデビュー、わが国ミステリ文壇に「新本格派」のムーブメントを巻き起こした異才綾辻行人。
稀代のトリックメーカーとして知られる彼の筆は学校の怪談というホラーに緻密な伏線とその回収を与え、ミステリとしても完成度は高い。
先日まで読んでいた『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』のシリーズ同様、弟とのばくり(交換の北海道弁)本。櫻子さん同様にこの作品もアニメ化、実写映画化というメディア・ミックスで展開されたという。
趣味・興味と読書傾向が極めて似ている私と弟ではあるが、6歳歳下の弟は『ファースト・ガンダム』に熱狂したいわゆるアニメージュ世代で、『スーパージェッター』や『鉄人28号』『宇宙戦艦ヤマト』で育った私とはそこが大きく異なり、こういうメディアミックス青春ミステリは、私は自ら手を出すジャンルではない。逆に弟は英米ミステリ黄金期の古典をいつまでも読み続けていることは無いと思う。
著者の綾辻行人は1960年生まれ、京都大学ミステリ研の出身で、同じく新本格ブームを牽引した1959年生まれ同志社大学ミステリ研出身の有栖川有栖(ありすがわありす)と共通点が多い。ミステリ研には所属しなかったが1961年生まれで立命館大学出身の私は彼らと同時期に京都の空気を吸って過ごしていた事で勝手に親近感を覚えている。
綾辻のホラーミステリを読むのは初めてかもしれないが、学校の七不思議や怪談伝説を巡ってミステリとしては恩田陸のデビュー作の『六番目の小夜子』や名作『夜のピクニック』、“ワンダーランド』などを彷彿とさせる。
そして出ました球体関節人形❗️櫻子さんシリーズのエピソードにも登場したが、ゴシック・ロリータ(ゴスロリ)カルチャーの一つの象徴でもある。
結構厚みのある上下組だったが、これも一気読みだった。
