おはようございます。
手術当日に概略は「電線河童」の記事で書きましたが、肝心の手術の手順等や、どれだけ痛い思いをしたのか?について、ご興味のある方もいらっしゃると思いますので、記憶がなくならないうちに記録しておこうと思います。
なお、以下の文章を読んで、「それなら私もチャレンジしてみようかな」と思われていた方が怖気付いて、挑戦を取り止めても、私の責任ではありません。これはあくまで私の想像(オペ中はうつ伏せで見えなかった。)と感想であり、やり方や感じ方は病院や患者によってそれぞの差異はあることをあらかじめご了承ください。
手術は1月18日火曜日の午後1時からの開始予定でした。
前日の夕食を最後に食事止め、さらに当日は午前10時から絶飲食でした。
開始30分前から点滴を付けられ、さらに病室のベッドで導尿カテーテル挿入です。しかしそのままパンツと病衣のズボンは上げられました。
上半身だけ脱がされ、寝た姿勢のままストレッチャーに横滑りで移乗していよいよ1階手術室に運ばれました。私は5年前の脳出血の時は開頭手術などはなかったので、この脳外科病院で手術を受けるのは初めてでした。
ここでは今度はストレッチャーから手術台へと数人がかりで持ち上げられ移乗しました。もちろんまだ何もしていないわけですから、それだけで嗚咽を漏らしそうになるほど痛みました。(私の場合)
そこで見たものは(眼鏡を外されていたので薄ぼんやりですが)真上と左横に設置されたx線撮影機でした。
そして医療ドラマでお馴染みの心電図モニターに繋ぐ電極を胸にいくつかと、足首クリップで止められました。
「それでは出来るだけ左を向いて横向きの姿勢を取ってください」
そもそも私は重度の左片麻痺なので、この5年間というもの左を下にして寝たことがありません。
そこでここでも助手や看護師が数人がかりで角度のついたマットを下に差し込んだり、枕の高さを調整してなんとか左横向きの姿勢にさせました。
その時点であれよあれよと思っている間にズボンとパンツを脱がされて、この時点で全裸にされました。そして体の上を消毒液で拭かれて、丸い穴が開いた紙を身体の上から被せられました。
「それでは始めます。よろしくお願いします」とDr.の冷静な声が聞こえましたが、その時には私はかけたマスクが顔を左に向けたことで少しズレ、マスクの上の縁がちょうど鼻の下鼻の穴を横切るカタチで当たり、呼吸をするたびに毛羽だった縁が触れて鼻がムズムズかゆくなって来ました。
これはオペが終わるまで続きました。
私は緊張するとあちこちかゆくなってくる体質のようです。
「それではまず麻酔の注射をしますね。ちょっとチクッとしますよ。」腰の両側に注射の痛みを感じましたが、これは想定内だったので何ほどのものでもありません。
「それでは次に深いところに麻酔をかけますよ。痛かったら言ってくださいね。」
これが脊髄の手前、硬膜外腔まで効かせる麻酔の長い針なのだろう、先ほどより痛かったですけど、これもまぁ想定内かな?
「これは痛いですか?」メスで皮膚を切り裂かれる感触。痛いけど麻酔が効き始めてきているからこれも騒ぐほどでもありません。
反対側はすでに麻酔が回っていて切られたのもわかりませんでした。
その次はキリキリキリとナニモノかが体内に入っていく感覚。でももはや何も痛くはない。
『ドリルじゃん⁉︎』それが両側すむと
「それではリードを通す針を刺しますよ。ちょっと強く押されますよ❗️」Dr.の声が聴こえた次の瞬間右腰に「ズドン‼️」という衝撃が走り32口径のピストルで撃たれたような痛みを感じました。(撃たれたことないけど)
「あ、痛っ⁉︎」
「深いところまで麻酔が届いてないようですね。でも心配いりません」ホントかよ?
そして左にもズドン❗️
手の力で押し込んだのではなく、おそらく釘撃ち機みたいなもので発射したんじゃないかと思いました。(見てないけど)
『釘撃ち機連続殺人事件って「特捜部Q」のモチーフだったよなぁ』などと呑気なことを考えていました。
ピッピッ…という心電図モニターの規則正しい電子音だけが響いていました。
「じゃあ、これからリードを挿入して行きますよ。痛かったら言ってくださいね。」
撃ち込んだ直径2ミリほどの針の中を通してリード線が体内に挿入されていきます。時々「ウッ!」といううめきが漏れたのでそれなりに痛かったりしたのでしょうがもう確とは覚えていません。
リード線は太さ1.4ミリ。つまりシャーペンの芯を3本束ねたくらいの太さの電線が私の脊髄に沿って差し込まれて行ってるのです。
その間Dr.は「はい、正面ください。次は横でーす。」と指示しています。レントゲンの生画像を見ながら手先を動かしているようです。
手術室専任の放射線診療技師さんがいるのでしょう?でもこんな近距離から手術中ぶっ通しでX線かけて被曝しないの?
先生はこまめに「はい正面ください。」を繰り返してリードと先端の電極を狙った胸椎に当たるように配置して行きます。
この時点ではもう痛みも何も感じませんが、やはり体内に異物が侵入しているという違和感だけはかんしていたようでした。が、私は横を向いてひたすら鼻のかゆさとたたかいながら、
『こんな面白い経験、ちょっと普通の人はしたくてもできないよなぁ。ワクワクするなぁ』と必死で自分に言い聞かせていました。すると自己暗示とは不思議なもので、その時の私はずり上がったマスク越しに確かに笑みを浮かべていたのです。
(ほぼ医療アトラクションの感覚です。)
自分で見つけて専門家が許可してくれて、その上で自分で決断した貴重な体験ですから、これを楽しまない手はないと思いました。
「はい、みんつちさん、いい位置に入りましたからこれから電気を流して行きます。感じたところで言ってくださいね。」
ここからは18日当日の記事に書きましたが、やがて本当に電気の刺激を右側に感じました。電気風呂か低周波治療器と同じ刺激が体内から湧いてくる感じで、やがてトントントンというまさに低周波治療器の「叩く」モードの刺激です。快くはあっても決して不快ではありませんし、紛れもなく電気が来ていることを実感できました。
現在ではカタワ者の私ですが、かつては「医療機器の販売・賃貸管理者」として医療機器のセールスに携わって来ました。高電圧治療器も低周波治療器も扱って来ました。
ところが肝心の麻痺側である左には全く感じません。
なので2本目のリードは慎重にやや左寄りに装着してようやく左側にも刺激が来るようになりました。
「そろそろ30分経ちましたからもう終わりです。」そう言われて先ほど塗られた消毒液を拭き取られて手術は無事終了しました。
30分、あれよあれよと思っているうちに終わってみればあっという間だったような気がします。
再びストレッチャーに乗せられて手術室を出る寸前に先生が、
「みんつちさん、これが本体機械ですが、今回はこのままお腹に貼っておきますね。」と透明なプラスチックのカバーケースに入った本体を見せてくれ(まだ眼鏡がないからよくわかりませんが)、それをケースごと左の脇腹に幅広の絆創膏でしっかりと貼り付けました。
そのまま3階の病室に戻りベッドへと戻されました。
ところどころ痛みは感じましたが、今まで半年以上絶え間のない疼痛に苦しめられてきたことに比べると、あっけなく終わった感じでした。
はっきり言って個人的に辛かったのは、点滴の太い針が固定されている右の手首と、鼻のかゆさでした。
SCSのトライアル手術は決して怖いものではありません。効果は人によりますし、対応できる病気や痛みの種類も異なるので、痛みに悩む全ての人に対応できるわけではありません。
脳卒中の視床痛で有効率は50〜60%と言われましたし、SCSで痛みが50%軽減すると成功と言われていますが、術後4日目の朝の現段階で、私は劇的に効果があり、左骨盤から下の痛みは7割方軽減しました。
昨日からリハビリが始まりましたが、麻痺側の脚のマッサージをされてもストレッチをされても気持ちいいばかりでほとんど痛さを感じませんし、杖歩行して左脚に荷重しても、家の中では耐えかねる痛みだった大腿骨骨頭の激痛もほとんどありません。
PTも看護師も、今までトライアル入院中に効果が確認された人は何人かいたけど、これほど劇的に見た目も変わった人は初めてです!」って言われました。見ただけで元気さが違うそうです。
現在22日の午前7時。バイタルチェックが終わったところですが、痛みスケールで私が指示したのは1でした。(根が単純で素直なところに自己暗示にかかりやすい性格です。)
数多くの方に心配していただいたトライアル手術ですが大成功で、SCSは私に実に効果的なことが実証されました。
しかし今回はトライアル、お試しなので、この感激もシンデレラ・ドリームです。退院時にリードを抜いて、本体機械をお返しして帰宅したら馬車はカボチャに戻ります。魔法が解けて、いずれ痛みが再燃することでしょう。
雪が溶けて桜が咲く前までには本手術を受けてもう一度リードを挿入して、今度は本体機械を体内に埋め込んでもらい、それからはずっと痛みに悩まない生活を取り戻して、さらなる社会参加と活動をして行きたいと思いますし、SCS療法の凄さを語り伝えて行きたいと思います。
私のリード線の配置状況。
これが本手術を受けると、
こうなります。これは他人の写真ですが、本体機械が骨盤の横上に埋め込まれていることがわかります。