八百万の死にざま | われは河の子

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八百万の死にざま  ローレンス・ブロック
1982年  ハヤカワ・ミステリ文庫

元刑事のマット・スカダーは、かつての事件で自分の撃った弾が流れ弾となり、一人の少女を死なせてしまった事でアルコールに溺れ、今ではAA(アルコール中毒者自主治療協会)の集会に通いながら、探偵の真似事をしている。
ある日彼は、キムというブロンドのコールガールが商売から足を洗い、ヒモから手を切りたいと相談される。
彼が仲介すると、ヒモはあっさりとそれを受け入れたようだったが、
直後にキムは高級ホテルで惨殺死体となって発見される。
スカダーに、キム殺害の調査と犯人探しを依頼したのは、容疑者とみなされるヒモのチャンスだった…

初読ですが、よくできたハードボイルドでした。

書かれたのは今から30数年前、いわゆる犯罪都市ニューヨークを描きます。
800万人が暮らすニューヨークには800万通りの死にざまがある。
些細なことから殺される市民を新聞記事や刑事の口から語られます。
もちろんスカダーにも何度も魔の手は迫ります。

昔に比べてマンハッタンの治安は良くなったといわれます。
行ってことないからわからないけど。
けどここは私たちがイメージとして知っている都市。

しかしそこで生きている人々も描かれます。

様々な個性と様々な過去を持つ娼婦たち、
探偵免許のないスカダーに協力する刑事、
アル中からの脱却を目指し、またそこへ帰ってゆくたくさんの男女。
何より魅力的だったのは、6人の女たちを取り仕切る黒人のヒモ、チャンスのカッコよさでした。

アメリカでは、署名とは筆記体で書かれたもので、活字体のものは直筆でも普通サインとはみなされないなんて情報も、なるほどと思いながら一気読みしました。

ただ、フーダニット(犯人探し)としては、マイルールの中からは逸脱していますね。
まぁハードボイルドだからいいのか?

なにより、いつものようにグラスを片手に酒を楽しみながら読むことができないのが、一番の苦痛だったかな?
AAの模様がこれでもかって出てきますし、飲んで記憶をなくしたスカダーに医者が、
「あなたはアル中です。飲めば死ぬんです」なんて宣言するんです。


落ちついて飲んでなんていられません。