洗いざらい話します
遡ること2014年8月。私とANが、阿部って友人のお家の居酒屋に行ったんだよね。それをTwitterに上げたら阿部がRTして、Kにフォローされた。
DMが来て、私が浪人だと発覚し、お互い浪人での悩みとか話してた。途中からLINEに切り替えて、コンスタントに会話してた。
受験の話だけじゃなくて、どうでもいい話も、その日あったこととかも、びっくりするくらい話してた。願書は書いたかとか払込はいつだとかセンターがどうだとかすりリンゴは美味しいとか。
センター少し前から下ネタっぽい話が混ざり始めた。答えられる範囲で色々話していた。
センター終わった直後から電話し始めた。
「貴方の(喘ぎ)声が聞きたい」
とかなんとかなって。そんなの無理だと拒否していたけれど、結局電話を受けてしまった。
「私と一緒に堕ちるところまで堕ちてみますか……?」
そこから今まで、3分の2以上電話している。私が試験の朝は必ず電話してもらってた。
私の合格発表も毎回電話してもらってた。
私が浪人で孤独に打ち震えず乗り切ったのは、K君のおかげ。言い尽くせない恩がある。
電話はエスカレートして行った。通話時間もさる事ながら、内容も。彼と話しているのは楽しかったし、落ち着いたし、心地よかったし、刺激的だったし、味わったことのない高揚に満たされていた。10分くらい黙りこくっていても幸せだったし、息遣いを聞いているだけで、まるで目の前にいるかのように感じられた。
でも。私たちには、はっきりとした恋愛感情が欠落していた。好きは好きだけど、それが果たして肉欲だけじゃないのかって疑問から離れられなかった。なんとも宙ぶらりんな関係。
だけど電話したいし、孤独な浪人生活での欲の捌け口が欲しかった。お互いそれは了解のもとだった。
受験終わってからが大変だった。
彼が、釣りへ行くかゲームをするかしかしなくなった。単純に、目的を見失ってすること無くなってもぬけの殻になってた。
「いい意味でも悪い意味でも、貴方が側にいる気がしない。」
電話繋いでもほとんど喋らない日が続いた。
それでも、電話してくれるのが嬉しかったし、これが幸せだと思った。
そんな中私がNに、合格報告をした。色々応援してもらっていたし、合格祝いに美味しい料理食べさせてくれるって言ってたから。
淡々とした文を送る私に「なんかよそよそしくね?」と聞いた。Nの元彼女に泣きつかれたりしてたことと、Kの存在を踏まえて慎重に会話していたから。微妙な変化に気づかれた、
「デートしてやるから許せ(笑)」
はいはい、と受け流していたけど、別にこの人とは一緒に食事したことあるし、喜んでついていくけど、Kに何か気取られて突っ込まれて答えに窮するのが怖かったから、自らNに連絡したことを言ったの。タイミングがあったから。そしたら
「(Nに会うことを)貴方は引き止めて欲しいのかもしれないけれど、引きとめないよ。貴方が選べばいい。」
行くか行かないか選べばいいのか、KかNか選べばいいのか、どっちだったのだろう。
「そんなことで私から離れていく人なら今は要らない」
この言葉が自分で蒔いた種とはいえ私をどれだけ苦しめたか、彼はわかっていたのだろうか。
この後もNから連絡が来て
「ホテル行こうよ」
みたいな話。何言ってんの(笑)ってかわしていたけど
「んで、したい?」
と聞かれて私は何と答えたんだっけ。
10日間くらい音沙汰無くて、3月末に明日の予定は?みたいな連絡が来た。午前中用事があって午後は空いていた。結局会うことになった。私はNを2時間も一杯の珈琲で待った。
その後のことは、鮮明に憶え過ぎててよく憶えていない。
その夜もKといつも通りの電話をした。他愛ない話。背徳の喜びとはよく言ったもので。
KはNと高3で同じクラスだった。私がNの話を楽しそうにするからなのか、妙な敵対心を持っているらしい。デートの話も、Kを悔しがらせたくて言った。だけどこの日のこと、会ったことだけは未だに言えない。
言うつもりもない。墓場まで持って行く嘘と偽りと裏切りだから。
少し遡ってその2日前あたり。高校の離任式に行った。行こうか悩んでいる話はしていたのだけれど彼が行くかは知らず、当日の朝に「離任式に行ってきます」と連絡入れたら彼が寝坊した!と言った。彼の元顧問が退任で、そりゃぁ行くとどうして気づかなかったんだろう。
私は彼に、誕生日とクリスマスと合格祝いとホワイトデーと入学祝いに、って、パスケースを買った。
やっと渡せる。人がだいぶ引いたタイミングで渡せた。会ったのは卒業以来だったから、しかも色々あり過ぎたからどうにもぎこちなかったけれど。とっても喜んでもらえた。
まさかその2日後に起こる出来事も、パスケースが引き起こす出来事も、何も予想などできていなかった。ただ幸せだった。次はいつ会えるんだろう、そう考えていた。
4月に入ってお互い無事入学して、本当はそこでも一波乱あったんだけど。もう遠いこと。私が彼を傷つけた。
疲れから電話せずに寝る日が増えた。それでも切れなかったのは、何か意地みたいなものだったかもしれない。
5月も半ばを過ぎたとある日。彼がパスケースを落とした。渋谷駅を必死に探して見つけたけれど、紐が切れて使えない。
その夜電話で彼はこう言った。
「やっぱり貴方のことは、いい友だちとしか思えない」
…?
確かに好きだと言った。体だけじゃないとも言った。声が好きだとも。だけど、付き合って欲しいとも、好きになって欲しいとも言っていない。まして、先に好きだという言葉を使ったのは貴方じゃない。愛してると言ったのは貴方じゃない。何よこの振られたみたいな感じは。
お互いに言いたいこと言いあった。これでもかと傷つけた。
彼の言葉尻を捕まえて、気になる人がいることを吐かせた。
彼が失くさないように、リールのついたものを選んだのに。それが切れて、 それが切っ掛けでこんな話をされたなんて皮肉もいいところ。笑えてくる。
いつも「おやすみ。また明日。」そう言って電話を切る。だけど私は、また明日と言わなかった。もう声を聞くつもりなど無かった。
次の日。
いつもより少し早い時間に着信が来た。私はその時iPhoneを触っていて、何処かを触ろうとした拍子に
電話に出てしまった。無視すると、もう二度と出ないと自分に誓ったはずなのに。期せずして出てしまった。どうしよう。どうしよう。そう思っている間に5秒、10秒と通話時間が増えてゆく。むしろ絶望だった。あの声を聞けなくなる哀しみに胸が締め付けられていたというのに。誰も電話してくれる人がいなくなったからと、友だちと電話する約束までしたのに。出てしまった先にはどうしようもない後悔しかなかった。
「言いたいことあるなら言っていいよ」
そう言われたって、言いたいことなんてあり過ぎて何もない。
このあとどんな話をしてどういう流れになったか忘れてしまったけど、結局電話は切れずに続いた。
この後も何度かごたごたとしたことはあったけれど、もう細かくは思い出せない。
そして、6/12金曜。私は大学の友人の誕生日祝いに、みんなでスイパラに行っていた。予め彼には言っておいたけれど、彼もクラス会に行っていた。
わいわい騒いで疲れたから、電話しながら寝てしまったのだけれど、彼は行きたくもないクラス会で嫌な思いをしたようで、とても機嫌が悪かったし、話を聞いてくれる人が欲しかった。なのに私はうとうとして彼の話をまともに聞かなかった。
「一人で喋ってたのは悲しかったなあ」
捨て台詞の直後電話を切られた。謝る言葉さえも言えずにiPhoneを握りしめたまま暫く動けなかった。
私が眠りについたあと、「ごめん最後のはただの八つ当たりだった。」と連絡が来た。そう言われてもどうしたらいいかわからなかった。
その夜も電話が来た。10分沈黙した。最近で一番機嫌が悪かったし、辛かった。だから私と電話を切った後、他の人に電話した。それは女性。以前気になると言った人。
ここまでは先読みできた。スラスラと喋らない辺り、私に話すには都合が悪いこと。電話するなら男友だちじゃないだろうし、女性ならきっと好きな人だろうな、ってね。
良かったじゃん。私以外にも真夜中に電話に出てくれて話を聞いてくれる人がいて。
「その勢いで告白して」
「振られた」
流石に笑いが込み上げてきた。気になる人気になる人って、どうせ私に初めて話した時から好きだったんでしょ?わざわざ訂正してまだ好きじゃないと自分に言い聞かせていたのでしょ?
キープはしたくないと言いながら完全なるキープをしてみせて、呆気なく散って舞い戻って来たなんて、なんて都合のいい。
必要ないとさえ思っただろう女のところに戻ってきたなんて。
それでもこれからも電話してくれるか聞かれた。冗談じゃない。
「一番辛くて大切な時に側にいてくれない人なのに?それでも電話したいの?笑」
「貴方と電話するのは楽しいし落ち着くから」
自分のピンポイントで相手を抉る上手い言葉を自覚することと、これからも大切な時に側にいられないことがあるだろうことと、眠りたい時もあることとをわかってもらうことを条件に、電話は続けることにした、
我ながら馬鹿だと思うよ。たかだか一人の男にこんなにも振り回されてる。それなのに離れられない。
そんなことのあとに、参蜂の集まりに行った。何かを期待して行ったわけじゃないけど、Kがいなくてもちゃんとやっていけるというアピールをしたい気持ちもあった。
あのくらいの人数なら融通きくし、みんなと話せたし、楽しかった。本当に楽しんだ。静かにしていたのは、みんなについていけなくなるんじゃないかと怯えていたから。実際は誰と喋るのも楽しかった。
終わってツイートしたら
「楽しかったようで何よりです!」
ってKから連絡来てた。一体どう思ってこの発言をしたのだろう。
本当にわからない。
私は、一度この人から離れるべきなんじゃないかって思っている。離れようと思っても離れられないでここまでおいて言えることじゃないけれど。
彼じゃないけど、他に好きな人ができなきゃ、離れられないし、彼のありがたみもわからないんじゃないかと思う。
中3の修学旅行のとき、「こうのさんかわいいね」とかなんとか言われた私に美帆が
「悪い男に引っ掛かっちゃうよー」
って言ったのを憶えている。認めたくないけれど、私が親しくなる男性はみんな私に恋愛感情持っていないし、それが楽だと思えてしまっている。
これから先も同じことを繰り返す気がする。
変わらなきゃだめだ、って高校の友人に言われた。どう変わればいいんだろう。変われるのかな。
また今日も彼から電話が来る。
nanami