ランク Aの上~Aの中

 

反政府運動で銃殺された兄の遺体を

 引き取りに行った少女の物語です。

 

大濛:霧が立ち込める、霧深い

 

 

台湾映画史上の名作、傑作です!

 

是非、ご覧あれ!

 

涙をぬぐうハンカチが必需品です!

 

この映画を観る前に、台湾近現代史を

 知っておくことが大切です。

 

1945年 日本の敗戦で、台湾は日本の植民地から

    解放され、中国・蒋介石の中華民国の

    支配下になります。

 

    日本敗戦直後から、中国大陸では

    蒋介石の国民党と毛沢東の中国共産党との

    内戦が激しくなります。

 

1947年 蒋介石は、中華民国関係者や国民党軍など

     200万人が台湾へ避難し、

     台湾に中華民国政府を樹立

 

    (北京紫禁城の宝物のほとんどを

      台北へ運び込む)

 

     台湾人=本省人   600万人

     中国本土人=外省人 200万人

 

 私の年配の元同僚に、台湾育ちの方がいました。

 

 外省人の多くは、文字も読めない元農民でした。

 水道の蛇口から水が出るのを見て、

  蛇口を壁に着ければ水が出るのだと思い、

   蛇口を引き抜いて、別に壁に着けたりしたとか…。

 

 もちろん、水が出るわけではありません。

 それくらい、外省人には「学も知識もなかった」と

  元同僚は言っていました。

  その後に、台湾に残っていた

  親の財産、遺産整理を処理するために

   台湾へ旅行されました。

 

 日本植民地時代の支配層だった本省人の

  地位や仕事、財産、利権が外省人に

   奪われていく。

 

 急激な人口増加で、ハイパーインフレや

  疫病が台湾内で広がる。

 

 外省人による贈収賄、汚職が蔓延する。

 

 本省人は、外省人に反感が積もっていきます。

   本省人「日本時代が良かった」

 

1947年2月28日 台北で228事件が起こる

 

  外省人警官が、市場のタバコ売りへ女性の

   取り調べで暴行をしたのを、

    群衆が騒ぎ出し、警官が発砲したら

     無関係な本省人が死亡する

 

  

   本省人民衆が、庁舎へ押しかけたら

    屋上から機関銃を撃たれ、多くの市民が

     死傷する。

 

   軍艦マーチと日本語で

    「台湾人よ、立ち上がれ!」と

     全島に運動が広がる。

 

   外省人と本省人の区別は

    日本語が話せるか、「君が代」が歌えるか

     で区別し、外省人の商店などを襲う。

 

   外省人台湾長官・陳儀が

    蒋介石に国民党援軍を要請する。

 

 3月8日 援軍上陸、外省人による、

     本省人への大弾圧が始まる。

 

   教師、医師、学生などの知識人を中心に

    800人~10万人が虐殺される。

 

   (現在でも、犠牲者の調査が続いており

    1992民国81年では、

     1万8000~2万8000人と推計されている)

 

1986年(民国76年) 戒厳令の廃止まで、

 中華民国の官憲による白色テロ時代が続く。

 

 白色テロ:中華民国政府への反政府活動家や

      共産党活動家への投獄、処刑などの

      大弾圧

 

 赤色テロ:反共産党政権の活動家への

      投獄、処刑などの大弾圧 

 

1992年 李登輝総統の刑法改正により

     228事件のタブーが無くなり

      言論の自由が台湾に復活した。

 

この映画は、1950年代の白色テロが横行した

 台湾恐怖政治の時代が舞台となっています。

 

主人公の少女は、兄を求めて、

 台湾中部の嘉義の農村から

  台北へ向かいます。

 

台北で出会った車夫は、中国本土から来た

 外省人の農民で、

  学のない元国民党軍兵士です。

 

刑事、警官は、外省人です。

 

この映画は、素晴らしい名作です。

 

台湾近現代史を背景に、

 歴史、政治に翻弄されながらも

  必死に生きていた庶民の

   肉親愛と友情?を描いています。

 

涙ながらに、観るしかありません。

 

ここで、一つ言いたいのは、

 少し残念なことがりました。

 

字幕に工夫がなかったことです。

 

登場人物たちは、出身地の言葉を

 使い分けます。

 

本省人=台湾語・ビンナン語と日本語

    一部広東語

 

外省人=北京語、広東語が中心

 

中華民国政権からは、

 北京語を共通語にする教育が始まる

  (戦前は、日本語がその役割を担おうとしたが…)

 

つまり、登場人物たちの話す言語は

 その人物のバックボーンが

  言わずもがなで、描かれるのです。

 

字幕では、どの言葉も同じフォントなので

 日本人には、その言語の区別が

  分かるはずもありません。

 

何語を話すかで、人間関係の

 濃淡、親密度が分かるのすから…。

 

せめて、各言語のフォントだけでも

 変えて欲しかった!

 

登場人物の言語こそ

 台湾史そのものですから…。

 

 (と、書きましたが、純日本人の私は

  台湾語が分かるはずもないのですが、

   15本以上の台湾映画ドラマを

    観ているので、台湾映画ドラマを

     観るうえで、登場人物の話す言語は

      とても大切なことなのです)

 

この映画に、下手糞な役者は登場しません。

 

主役、脇役、チョイ役まで、上手すぎます!

 

悪役刑事の上司なんて、

 最高に素敵です。

 

 

監督としても有名で、

 宮沢りえ、水野美紀などを起用した

  日本資本の映画で監督しています。

 

「悪役は、主役以上に

  魅力的であらねばならない!」

 

また、刑事の部下を演じるツァイ・シャンテェンも

 強烈な印象を残します。

 

 

ほんまに、台湾の俳優って、

 なんでこんなに上手いんだろう。

 

そして、Lin Dao-Yuなんか

 忘れることが出来ない演技をしますよ!

 

翻るに、日本の俳優の下手なこと…トホホ、嗚呼

 

主人公の少女は、ケイトリン・ファングで

 アメリカ生まれの20歳の

  コロンビア大学生だとか。

 

 純朴な少女を静かに強く演じています。

 

少女の姉は、9m88です。

ミュージシャンと俳優をしています。

 (芸名の由来が謎ですが…)

 

主人公のお兄さん役ツェン・ジンホアも

 素敵です。

 

主人公の少女と、駆け回ることになる

 元国民党軍兵士役は、

  ウイル・オー・ワイラムです。

香港生まれの俳優ですが

 2025年7月、肺腺癌ステージ4を公表。

 

人が良いのか悪いのか、

 学もなく、要領も下手で、

  異国の台湾で、独り必死に生きる青年を

   痛快に、優しく演じています。

 

なお、中国からの国民党軍退役兵の多くは

 学も教養もないので、結婚もできず

  「老兵」と蔑称されながら、

  世間の片隅で、寂しく生きることになります。

 

 (いくつかの台湾映画に「老兵」は登場します。

 

ともかく登場人物を上げたら

 キリがないくらい名優揃いです。

 

上手すぎます!

 

俳優陣の素晴らしさだけでなく

 時代考証への情熱が

  この映画を名作へと押し上げています。

 

街道、市場、台北・栄町などを

 多額の資金を投入して、野外セットを

  組んだとか…。

 

時代考証が完璧な映画は

 失敗することが少ないです。

 

音楽、挿入歌も

 ストーリーを盛り上げます。

 

選曲、音楽効果の教科書のような

 作品となっています。

 

なお、クレジットで気が付いたのですが

 「古賀政男」の音楽が使われていたことを

  知りました。

 

見直して、確認しなければ!

 

美しい映像と音楽は、

 この映画の大きな魅力です。

 

監督・脚本は、チェン・ユーシュンです。

 

実は、妻が大好きな

 「熱帯魚」「ラブ ゴーゴー」の監督なんです!

 

この2作品も是非ご覧ください。

 

ユーモアの中に、人間の悲喜交々が

 満載のいい映画ですぞ!

 

この映画にもユーモアはありますが

 さらに人間への洞察を深めた

  作品となっています。

 

監督は、白色テロの時代を生きていますが

 さほど関心がなかったそうです。

 

老いた両親と話しているうちに、

 白色テロ恐怖時代があり、

  興味を持ち出したとか。

 

映画製作を始めると、スタッフに病人や

 トラブルが起こり、嫌な気配を感じたとか…。

 

調べてみると、制作事務所の場所が、昔の

 取り調べ拷問の「軍法処」の跡地だった

  ことが分かり、お祓いをすると、

   天気に恵まれ、順調に撮影ができたとか…。

 

監督「何かに守られている」

 

好きの無い演出と画面構成で

 2時間余りの時間を、

  全く感じさせられることない

   作品となっています。

 

オープニングから、ラストまで

 一気に魅せられてしまいます。

 

シナリオ展開も、破綻の無い

 エピソードの積み重ね、畳みかけは

  脚本家を目指すなら、参考にすべき

   作品です。

 

物語の飛躍を感じさせない見事なシナリオと

 演出です。

 

そして、挿入された兄が語った美しくも

 哀しい物語は、この映画のテーマです。

 

 (現代台湾の政治情勢を

    暗喩していているような…

 

 あまり書くと、ネタバレになるので

  映画を観て、考えて下さい。)

 

この兄の話だけでも、素晴らしい映画が出来ます。

 

台湾映画の傑作、名作が生まれました。

 

必ず、ご覧下さい。

 

久方ぶりに、映画の素晴らしさを

 教えられました。

 

台湾の「ニューシネマパラダイス」と

 言えるでしょう。

 

日本映画は、完敗です…トホホ、嗚呼。

 

最後に、この映画は、

 ホオ・シャオ・シェン「非情城市」の

  少し後の時代を描いています。

 

「非情城市」が距離感を持ちながら

  知識人の恐怖政治時代描いているなら

   この映画は、庶民の戒厳令下の

    哀しみを描いています。

 

この2つの映画で、228事件の映画を

 台湾で製作されること

  無くなったかもしれません。

 

この映画は、完成度が高すぎる

 作品となっています。

 

必ず、ご覧ください。

 

この映画に限らず、台湾映画には、

 日本と相通じるものが

  多いことが、分かると思います。

 

例えば、勤勉で、真面目で、教育を

 大切にするところです。

 

是非、ご覧ください。

 

最後に、実は、映画館で

 タイトル「大濛」観た瞬間、

  何てこった!

 

実は、ネットフリックスで

  観ることが出来るのです!

 

ネットフリックスのマイリストに

 登録していたのです!

 

ネットフリックス:大濛

   映画館公開:霧のごとく

 

タイトル違いで、別な作品だと

 勘違いをしていたのです!

 

アホな男です…トホホ。

 

妻「アナタ~馬鹿ね!

   アナタと結婚するとき

    お義父さんが言ってたのよ」

 

  義父「あんな頓馬な息子と

      結婚してくれて、ありがとう」

 

私「・・・・・(沈黙)」

 

とは、言うものの、

 この映画は、TV画面で見るのではなく

  映画館で観よう!

 

この映画の素晴らしさが

 映画館なら、さらによく分かるのは

  間違いなし!

 

ネットフリックスで観てもいいですけど

 中断が起きたりして、集中力が欠けます。

 

映画館の大きなスクリーンで観ないと

 時代考証、セットの迫力、素敵な音楽が

  分からないですよ!

 

映画館で観た方が、

 絶対に、良いです!

 

映画館で、是非、観て下さい!

 

でも、ネットフリックスって、

 映画の選別、鑑定眼は、

  あなどれないんだようなあ…。

 

ホンマにいい映画です!