ランク Bの上

 

東京近郊の元地主の花農家の娘たちが

 時代に翻弄されながらも

  自分の生き方を見出すまでの

   物語です。

 

 

大映美人女優の共演ですが

 この映画の主役は、

  杉村春子演じる土地を守ろうとする

   未亡人の母親です。

 

杉村春子の安定感が

 華やかな娘たちの恋物語を

  支えています

 

高度成長が始まった東京の拡大により

 先祖伝来の土地建物を手放さざる負えない

  元地主の悲哀を描いています。

 

敗戦後のGHQの農地解放により

 大地主は、二束三文で農地を

  小作人に手放しました。

 

 (妻の実家も、農地解放で

  土地を失いましたが、

   放蕩息子もいて、さらに

    失った農地とか…)

 

GHQの農地解放は、小作農から

 自作農へと転換が起こり、

  農家の中産階級化で

   日本の農業基盤の強化と

    発展を促しました。

 

この映画のラスト近くで、

 杉村春子の元小作農への

  嫌みの科白が秀逸です。

 

 

杉村春子は、軍人の父親と芸者の

 私生児として生まれ、養女だと知ったのは

  小6の時で、ショックを受ける。

 

「世の中で信じられるのは、自分だけ」

  

女学校を出て代用教員をするが

 築地小劇場を観て、女優を目指す。

 

下積み役者から、文学座に参加し、

 戦前、戦後と、文学座一筋の

  女優人生を送る。

 

安保反対、中国友好など、政治的活動にも

 積極的だったのは、戦中の戦争協力への

  反省があったともいわれている。

 

 (「戦争中に亡くなった俳優を差し置いて

   もらうことはできない」と、

     文化勲章を辞退しています。

 

  広島出身ですので、原爆を含めて

   戦争を許せなかったのかもしれません。

 

  なお、養父母などの身内に

   原爆の犠牲者がいたのかもしれません)

 

ワンマン、好き嫌い、気性が激しく、

 文学座から、優秀な俳優たちによる

  分裂騒動が何度も起こりますが、

   我が道を行くで、文学座を 

    守り抜きます。

 

 (文学座からは、杉村春子の演技力に

  魅了された俳優が多く輩出し、

   袂を分かっていきます)

 

3度結婚しますが、すべて、夫と

 死別します。

 

女優・中村メイコ

 「女優として大成しなかったのは

  結婚、子供のせいでしょうか?」

 

杉村春子

 「当たり前ですよ。片手間で女優はできません。

  その証拠に、私の夫は3人とも、先に死んだわ」

 

演技力に関しては、日本随一と言え、

 多くの俳優の憧れの存在となります。

 

黒澤明「赤ひげ」では、

 名優杉村春子を大根で叩くシーンにおいて

  共演者たちが遠慮したせいか

   大根300本を使ったとか…。

 

小津安二郎

 「私の映画の4番バッターは、杉村春子」

 

「演技の鬼」こそ、杉村春子です。

 

演技のためなら、生き方を含めて

 誰に何も言われようと

  自分の信じる演技をしたのが

   杉村春子のようです。

 

この映画でも、遺憾なく、発揮されています。

 

題名通り、本来、美人女優たちの演技の共演が

 この映画の一番の見世物だったはずですが、

  杉村春子の演技で、

   主役を取ってしまっています。

 

監督・増村保造も、たぶん

 撮影しているうちに、杉村春子を中心に

  演出したに違いありません。

 

ラストシーンのオート三輪車で、

 我が家を去るシーンは

  杉村春子なのですから…。

 

米作から、花作りへと、都市型の新しい農業へ

 変わっていく農村社会を背景にしています。

 

農業より不動産業に鞍替えする

 元小作農も登場し、日本社会が

  大きく変わっていく時代を映し出します。

 

農家の若者が、農業ではなく

 会社員の道を選ぶ姿も

  描きます。

 

東京の拡大が、周りの農村社会を

 呑み込んでいく姿です。

 

山本富士子と勝新太郎の花柳界も

 農業と同じように、大きく

  変貌していく時代でもありました。

 

日本舞踊の新しい潮流も描いています。

 

山本富士子の踊りの上手さと

 勝新太郎との二人踊りも

  この映画の見どころの一つです。

 

この映画で共演している

 川口浩と野添ひとみは、後に、結婚します。

 

若尾文子をはじめ、この時代の美人女優に

 演技下手はいません。

 

増村保造映画の質の高さは

 演技力のある俳優しか

  使わなかったことが大きかったと

   思います。

 

実力のない俳優は、

 映画を壊しかねないからです。

 

ストーリー展開が、散漫に成り兼ねないところを

 娯楽作品として、職人技でまとめ上げている

  増村保造の監督力が発揮されている作品です。

  

 

この映画は、東京に呑み込まれていく

 風土と人間を描いたドラマです。

 

増村保造にしては、珍しく

 爽やかな作品となっています。

 

是非、ご覧ください。

 

youtubeで観ました。