ランク Bの上~Aの下
聴覚障碍者の両親に生まれた弁護士が
聴覚障碍者を標的とした詐欺グループとの
確執、相克、裁判を描いた作品です。
実在する弁護士の実話と事件を
脚色した作品です。
中華人民共和国の共産党映画ですので
胡散臭い政府プロバガンダ映画かと
思っていたのですが、意外にも
ストレートで真面目に、聴覚障碍者の
社会問題を扱った作品で
思わず、涙ぐんでしまいました。
もちろん、中国共産党への
政府批判は一切なく、
政府は公明正大で、人民を
温かく見守っているという
構えで作られています。
それでも、十分に、
映画を楽しむことが出来ました。
古今東西を問わず、聴覚障碍者の置かれた
厳しい現実を、真正面から描いた作品です。
聴覚障碍者の両親から生まれた子供を
CODAといい、主人公は、CODA弁護士です。
CODAゆえ、貧しく、子供のころから
差別を受け、苦学して弁護士になりますが、
下流階級出身のため、貧乏弁護士として
必死に生活をしています。
この映画の面白さは、CODA弁護士だからこそ
手話を使って、難局を切り抜けるという
シナリオ展開の上手さでです。
クライマックスとなるラストの
裁判劇での手話トリックは
見物です。
詳しいことは言えませんが、
是非、健常者では気付かない
トリックに驚かされました。
この映画を観て、改めて思い知らされたのは
健常者の世界と各障碍者の世界が
別々に存在しているということです。
一つの社会に、別な社会がいくつもあって
集合しているのが、日本全体の社会だ
ということです。
最近はやりのインクルーシブというのは
この別々に存在する社会同士の
交流を作ろうということのようです。
この映画でも、聴覚障碍者同士が集まった
古いアパートが舞台となっており、
アパート内では、障碍者は安全に守られ、
苦労なく生活できる社会がある
ということです。
この映画は、安全であるはずの
閉ざされた障碍者社会が、逆に
犯罪に弱く、詐欺の温床になって
しまうという危険性を
訴えていました。
手話は、誰でも使える技術ではありません。
ゆえに、手話が、良くも悪くも
使えることが出来るのです。
小さな社会、コミュニティーは
案外、脆い存在であることを
教えてくれます。
障害があるゆえに、
助け合って生きているしかないからこそ
いったん、壊れてしまうと
取り返しのつかない結果を
生んでしまうのです。
是非、ご覧ください。
真面目な障碍者問題をテーマにした
映画です。
娯楽作品としても
十分に楽しむことが出来る映画です。
中国映画は、共産党の検閲、監視が
厳しいですが、実は、規制が多いほど、
知恵を絞った秀作が
生まれるという現実があります。
この映画もその一つでしょう。
ともかく、手話のトリックが絶品です。
中国嫌いが増殖中ですが
いいものは、いいものとして
評価すべきでしょう。
もちろん、この作品は、
障碍者の悪い面、闇を描くことなく
一般受けする表層的な、良い面を
多く描いています。
障碍者映画は、障碍者のための作品か
健常者向けの作品かという
大きな分類があると思います。
この映画は、健常者への、
障碍者啓蒙を中心とした作品です。
障碍者のための映画かどうかは
私には判断できません。
中国に限らず、日本もですが
障碍者のための映画を製作できるかが
社会の成熟度を測れるのではないかと
思います。
この映画は、健常者向けの
聴覚障碍者への啓蒙映画です。
ゆえに、中国政府の検閲に
合格したのでしょう。
この映画のもう一つの視点は
経済格差です。
上海の上流階級と、
障碍者を象徴とした下流社会の
経済格差の歪も描いています。
政府関係者は、あくまで黒子として
登場し、良い人です。
(プロパガンダそのものです)
詐欺犯罪の肝は
犯罪集団のボスの言葉に
集約されています。
実は、この映画の本当の主役は
詐欺のボスであり、その生き方です。
同じ境遇に生まれ、
障碍者への愛と嫌悪を持った相克の
弁護士と犯罪ボスの物語です。
中国プロパガンダ映画ではありますが
娯楽要素をたっぷり盛り込み
社会問題を絡めた映画です。
よくできたシナリオ展開と
テンポの良い演出が光っています。
是非、御覧ください。
ネットフリックスで観ました。
なお、ハンカチをご用意ください。


