ランク Aの下~Aの中
歌舞伎に魅せられたヤクザ親分の息子と
名門御曹司とのを芸争いを
歌舞伎界での愛憎劇を描いた作品です。
面白いとかなんか、何の情報も知らないで
期待など全くしないで観に行ったのに
上映時間3時間を長いと感じさせられずに
歌舞伎の世界に見入ってしまいました。
日本のメジャー映画なんか、
どうせくだらない恋愛映画だろうと
思っていました。
そもそもまったく観に行く気なんか
全くありませんでした。
なぜ観に行ったかというと
娘が三味線を習っているからです。
妻の実家は、戦前の地主の家で
芸者さんが使っていた三味線が
ありました。
ひょんなきっかけから
娘は、映画に登場した京都先斗町の
芸妓さんに、娘は三味線を
習いはじめました。
何回か通ったのですが
学業が忙しくて、足が遠のき
習うことはなくなりました。
東京で就職し、会社員だけでは
満足できず、また
三味線を習い始めました。
その東京の師匠の弟さんが
「国宝」に囃子方の一人として
出演したのです。
それで、妻と二人で
「国宝」を観に行くことになりました。
(先斗町のお師匠さんは
ご高齢ためか、
いつしか先斗町から
姿が消えました。
つい最近、御消息を訪ねたのですが
分からず仕舞でした・・・。
先斗町のお師匠さんの教えは
偶然、現東京のお師匠さんと
同じ流派の流れを
くんでいたようです)
妻 「アナタ~、観に行くわよ!」
「国宝」なんか、まったく観る気もなく
娘と妻への義理で観に行きました。
観てみて、自分の浅薄さを
痛感させられました。
面白い!
久々のメジャー作品の秀作でした!
上映3時間を、まったく気にならずに
映画、歌舞伎の世界に没入してしまいました。
豪華絢爛の歌舞伎の裏にある
芸事への役者達の、
執念の凄みを魅せつけられました。
題名の「国宝」とは、
極めたか?であろう「芸」のことです。
芸には、完成は無く、
いつまでも追及しなければならないのが
「芸」です。
この映画は、「芸」に魅せられた人間達の
悪戦苦闘、艱難辛苦の物語です。
映画は、オープニングの良し悪しで
面白さが決定されます。
オープニングの福岡ヤクザの闘争シーンは
ヤクザ映画史に残る名シーンです。
このオープニングで、一気に
この映画の世界へ、
トリップ、感情移入ができました。
妻 「ヤクザの親分がカッコ良くて
誰かと思ったら、
永瀬正敏だったのね!
素敵だったわ!」
永瀬正敏は、やくざが持つ無常観を
演じ切っていたのが、素晴らしかったです。
日本映画の欠点は、
映像に深みが無く、色合いのシャープさが
無いことです。
この映画は、韓流映画の映像表現と
遜色ない映像美で、画面に
緊張感を生み出していました。
(良い映画は、画面が美しい!)
歌舞伎白塗りのメーキャップは
映画史に残る最高傑作かも
しれません。
特に、田中泯演じる人間国宝の
メーキャップは、役柄を超えた
凄みを表現していて
圧倒されました。
もちろん、田中泯の名演は
この映画でナンバーワンだと思いました。
田中泯が登場するだけで
映画のすべてを支配してしまうのです。
もちろん、監督の演出もあるのですが、
題名「国宝」とは、
田中泯の演技の芸だったかもしれません。
ラスト近くの二人が演じた曽根崎心中」の
白塗りの崩れたメーキャップも
映画史に残る「芸」だと思いました。
ただ、ひとつ難点だったのは
老けメイクが弱かったことです。
この弱さが、感情移入を妨げたのが
残念でした。
この映画のロケ地である
京都南座、先斗町歌舞練場、
今宮神社のあぶり餅通りなど
何度も訪れた場所なので
嬉しくなりました。
特に、京都南座では、歌舞伎だけでなく
裏舞台ツアーに参加して
セリにも乗ったこともあるので
懐かしさでいっぱいになりました。
(記事「旅行記」にあります。
実は、「国宝」のエキストラに
応募したことがあるのですが
落選しました・・・嗚呼、トホホ)
吉沢亮と横浜流星の演技には
感心しました。
役者魂そのものを
演技にぶつけていました。
歌舞伎の踊り、所作など
猛特訓をした成果の賜物です。
この二人は、これから、本格的な
本物の役者に成長するでしょう。
(横浜流星は「べらぼう」の方が
キャラ的に向いているように
思いましたが・・・)
寺島しのぶは、歌舞伎界の出身だけあって
軽くなりそうな場面を
しっかりと演技力高さで
シーンを引き締めていました。
ただ、若手女優陣の演技は
物足りなかったです。
妻 「ヤクザの親分の妻が
印象に残ったわ」
ヤクザ親分の妻は
色気のある美人でなければなりません。
キャスティングが大成功です。
理由は、役柄の「女の苦労」を
表現できていなかったことです。
この映画の演出の上手さは
歌舞伎の名場面をダイジェストで
観せたことです。
素人が観ても、よく分かる場面の連続で
歌舞伎を楽しむことができました。
歌舞伎を観ると、長く感じ
退屈さを憶えることがあります。
セリフは江戸期の言葉が多くて、
理解できないこともあり、
ストーリー展開も遅く感じます。
是非、歌舞伎界で取り組んで欲しいのですが
私のような初心者向けに、
短いダイジェスト版歌舞伎を
演目にしてもらいたいです。
(歌舞伎のパンフレットも
素人向けではありませんので
リピートが減るような気がします)
カメラワーク、カット割りの素晴らしく
計算された演出で
歌舞伎の醍醐味を遺憾なく
発揮していました。
監督の演出技量の高さです。
うまい演出は、
カット割りを感じさせないのです。
流れるようなカメラの動きが
素晴らしかったです。
いい映画は、画面と音楽が
見事な調和をしています。
下手な映画は、過剰な音楽が
耳障りになるのですが
この映画ではもう分無かったです。
和楽器と西洋音楽の
シーンの使い分けやハーモニーが
素敵でした。
いい音楽です。
映画を志す人は
この映画のカット割り、カメラワーク
音楽挿入を徹底的に
分析、研究すべきです。
李相日監督の映画技量の高さが
観客を3時間を飽きさせない
作品に仕上げているのです。
1960~1990年代をいかに再現するか?
いかに時代考証に金をかけるか?
この結果で映画の良し悪しが決まります。
この映画は、時代考証に成功しています。
(この時代を知っている私には
ほんの、ほんの少しだけですが、
物足りないところもありましたが・・・)
芸を極めるとは、何か?
芸の奥深さは、真の芸人しか
分からないものかもしれません。
芸事をする当人だけが
「芸」の恐ろしさを知るのかもしれません。
この映画は「芸」の怖さを描いた作品です。
是非、ご覧下さい。
日本メジャー映画の復活の作品です。
マイナー映画ばかり大ヒット作の日本で
久々のメジャー映画の秀作です。
いい映画です。
是非ご覧下さい。
ただし、ひとつだけ、注意があります。
3時間の映画ですので、トイレを
しっかり済ませてから観ましょう。
クライマックスの演技バトルのシーンで
トイレを辛抱できなくなった
ご高齢の御夫人がいました。
私たちの後ろの席から
トイレへ向かいました。
彼女は、一番の
見所のシーンを見逃しました。
トイレをしてからご覧ください。
映画料金以上の見ごたえのある作品です。
是非、ご覧下さい。
衰退気味の歌舞伎界には
行幸となる作品です。
この映画で歌舞伎ファンが
増えることを願いますが
素人ファンをいかに
ひきつけるかが
歌舞伎界の課題です。
豪華絢爛の美しさと
これを生み出す人間ドラマの映画です。
映画を堪能できました。
この映画は、映画館で観ましょう。
TV画面では、感動が薄れますよ!
