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メソポタミア、シュメールの古代文明の発祥の地

  チグリス、ユーフラテス川が、合流し、

   アラビア湾へそそぐ地は、大湿地帯で

    世界的にも調査が少なく

      謎の多い地帯となっていた。

 

大湿地帯のため、政府の支配、行政機関が

  行きとどかず、反政府活動家などが

    逃げ込み、治安が悪く

      危険な地となっていた。

 

ゆえに、外国人だけでなく、地域外のイラク人でも

  訪れることは困難でした。

 

 (湾岸戦争、イラク紛争なども重なり)

 

探検家の著者と相棒との二人で

  コロナ災害を挟んだ4年間で

    3度、大湿地帯を旅行した

      記録です。

 

 

書名に水滸伝とあるのは、

 著者たちが出会った現地人を

   水滸伝の登場人物になぞらえたためです。

 

水滸伝:中国の14世紀(明代)に書かれた長編小説

      108人の好漢・英雄が、梁山泊に集まり

       国を救うというストーリーです。

 

    中国4大奇書 「水滸伝」「西遊記」

              「金瓶梅」「三国志演義」

 

著者は、大湿地帯を梁山泊

    逃げ込んだ反政府活動家を、好漢に

     例えて旅をします。

 

世界の辺境地についての旅行記の魅力は

  行くことができない地域を

    教えてくれることです。

 

もう一つは、著者たちの、現地での

  悪戦苦闘のエピソードです。

 

そして、旅行記本の重要な要素は

  なぜ、著者たちが、辺境の地へ

    分け入ったかです。

 

つまり、旅行先へ行く事前準備の面白さが

  大切なのです。

 

大湿地帯には、世界最古の都市・ウル遺跡などが

 多くあり、世界遺産となっています。

 

しかし、フセインに反抗した反政府軍、活動家

  共産主義者、弾圧されたシーア派などが

    湿地帯へ逃げ込み、いわば、無政府状態?と

      なっています。

 

  (湿地帯には、

     共産主義者?が多いのにも驚きました)

 

イラク人でも危険極まりない謎の湿地帯を

  旅行し、見聞しようという著者たちは

    飛び込みます。

 

情報の少ない中、細い人脈を頼って

  イラクへ向かいます。

 

イラクというと、砂漠を連想しますが、

  シュメール文明が生まれた地域は

    チグリス川ユーフラテス川の

       豊かな水で育まれました。

 

そして、旧約聖書の舞台は、

  この湿地帯を含む地域でした。

 

  (ノアの箱舟、エデンの園だそうです)

 

無政府、無法地帯だと思われていた湿地帯ですが

  実は、人情に篤く、義理堅い、世話好きの

    人々ばかりでした。

 

イスラムというと、怖い感じを持ちますが

  客人をおもてなす、接待するのを

    とても大切にする文化を持っていることが

      この本でよく分かります。

 

  (酒が飲めないので、

    「まあ、お茶でも飲んでいきなさい」

      と、長時間の話が続くことになります)

 

政府、法律よりも、部族社会を重視して

  部族内で助け合っています。

 

 (部族間の争いは、度々、起こるようですが・・・)

 

著者たちは、シュメール文明の末裔だという

  湿地民「マアダン」を探し、

    その生活を知ろうとします。

 

 (シュメール文明は、紀元前5000年頃から

   栄え、楔形文字を使用していました。

 

  メソポタミア文明の基礎を作りました。

 

  メソポタミアの北部・アッシリア

           南部・バビロニア

 

    さらに、バビロニアの北部・アッカド

                  南部・シュメール

 

   著者は、シュメールの湿地帯を

          旅行します。)

 

実は、チグリス・ユーフラテス川は

  上流のダム建設や都市の水源として

    フセイン政権の湿地帯攻略のための

     堰き止め、旱魃、水不足等により、

 湿地帯は大幅に縮小してしまっています。

 

ゆえに、マアダンともども、

   湿地帯は失われる?運命にあります。

 

著者は、消えゆく湿地帯と民族を

  求めて、旅をします。

 

  (途中からは、

     謎の織物・アザール調査も加わります

 

  アザールに○○○人が

    関係していたというのには

      驚きました)

 

「郷に入れば郷に従え」と言われますが

  タフで、順応力の高さを発揮して

    著者たち二人は、現地人の懐へ

      飛び込んでいきます。

 

基本は、人間皆同じ?という感覚のように

   思いました。

 

文化習慣は違えども、人間性に

 大きな差は無いということが

   この本を読めば分かります。

 

 (例えば、クルドヘイトをする人々は

   人間性を感じにくいのかもしれません)

 

旅の醍醐味は、赤の他人、赤の他民族との

  人間付き合いの面白さなのかもしれません。

 

そして、現地食の摩訶不思議さと

  美味しさなどのグルメ情報も

    旅行記の面白さです。

 

この本でもタップリ描かれています。

 

この本は、湿地帯に暮らす人々との

  交流の記録です。

 

イラク戦争、コロナがあっても

  シュメールの6000年以上前から

     湿地帯で生き抜いてきた人々を

       活き活きと描いています。

 

誰でも旅できる所ではない世界を

  教えてくれる本です。

 

良い旅行記は、

  呼んでいる内に、著者と一緒に

    旅をしている気分にさせてくれます。

 

この本は、その魅力がある本です。

 

読んでみて下さい。

 

 (立ち読みで、口絵写真だけでも

   見て下さい

 

今流行りのエコだとか、

  豊かさとは何か?を考えさせられます。

 

ニュースだけのイスラムではない世界を

 教えてくれます。

 

いろんなエピソードが満載なので

  読んでみて下さい。

 

最後に、著者の本では、

 「謎の独立国家ソマリランド」が

   超面白くて、お勧めです。