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人種差別が根強い南部・アトランタの不動産王を

 潰しにかかる銀行側との確執を描きながら

   黒人青年の白人警官暴行事件を加味した

     社会派ドラマです。     

 

 

このドラマは、2つの物語から構成されています。

 

 1、不動産王の物語

 

 2、黒人青年による白人警官暴行事件

 

この2つの物語は、一応、絡んではいるのですが

  さほど関連性は強くはありません。

 

つまり、一つのドラマ内で、

  2つのドラマを同時進行で

    観ているようなものです。

 

 (この2つを、別々にドラマ化した方が

     良かったかもしれません)  

 

一つ目の物語の主人公の不動産王は、

  大学フットボールの名選手として

   名を馳せており、

    会社の成長、生き残りのためには

      恨みを買うことも厭わないという

        トランプを意識させられますが

          人種差別観を持っていない点は、

            トランプと違っています。

 

この主人公像が、悪人としての魅力を

 半減している原因かもしれません。

 

つまり、南部の大企業社長なら、

 やはり人種差別主義者であってこそ

   「魅力的な悪人」になれるのです。

 

  映画ドラマのシナリオ鉄則

 

    「悪役は、主人公より

       魅力的でなければならない」

 

本来、悪役であるはずの主人公より

  魅力的な悪役が登場します。

 

銀行の頭取と、その腰巾着である

  うだつが上がない中年銀行マンです。

 

アメリカ社会には、セレブの上流階級社会が

    厳然とあるようです。

 

何不自由ない贅沢な暮らしと

          セレブ社交界です。

 

庶民とはほど遠いセレブ社交界を

      皮肉を込めて、描いています。

 

このセレブ社交界へ成り上がろうと

  必死なのが、中年銀行マンです。

 

ドラマの題「成り上がり者」とは

  この銀行マンのことかもしれません。

 

 (英題「A man in full」は、「完全な男」と

  直訳できるようですが、

    英語ができない私には、

       よくわかりません)

 

不動産王編を観ている内に、

  小悪党の銀行マンが、主人公のような

    錯覚になってきます。

 

会社経営たちと、政治家の権謀術策を

  スピーディーに面白く描いています。

 

そして、女性レイプ問題を絡め

  アメリカ社会の闇をしっかりと

    描いています。

 

レイプ被害者の葛藤と告発の困難さを

  描いています。  

 

見方によっては、貧しき小物が

  セレブへの憧れと挫折

     復讐を描いているとも言えます。

 

格差社会への告発ドラマかもしれません。

 

2つ目は、黒人差別を描いています。

 

白人警官による、黒人暴行死事件を

  モデルにしているドラマです。

 

  (「ブラック・ライブズ・マター」です)

 

不動産編が、エンタテイメントなら

  黒人差別編は、リアル感満載となっています。

 

真面目な黒人青年が

  駐車違反から、白人警官暴行、

   刑務所送り、裁判にへという

    法廷ドラマになています。

 

特に、このドラマの一番の見せ場は

  黒人青年の刑務所生活の

    過酷な状況を描写しているところです。

 

観ていて、結末がどうなるのか?

  ハラハラ、ドキドキの連続でした。

 

  (アメリカの刑務所には入りたくない!

 

  私なんか、生き残られるのは不可能です)

 

実際の刑務所で撮影したのでしょうか? 

 

今までに、アメリカ刑務所作品を

  いくつか観たことがありますが、

    このドラマが一番のリアル度と

       思いました。

 

刑務所なんか行くところではありません。

 

 (黒人差別編は、防犯教育に

     役立つかもしれません・・・嗚呼)

 

刑務所に入れられた黒人青年がどうなるかは

   ドラマを観て下さい。

 

2つのテーマを絡めながら

       ドラマは進行します。

 

最初は、少し、間延びをするかもしれませんが

 ドラマ展開とともに、

   のめり込んでいきます。

 

アメリカの社会問題、格差社会、黒人差別

 レイプ、ネガティブキャンペーンなど

   多くの問題を詰め込んだドラマです。

 

登場人物たちが

  プライドを駆けた戦いをするドラマです。

 

案外、人間の生き残るエネルギーは

       プライドかもしれません。

 

どの俳優もとても上手い演技をします。

 

本来は、このドラマの主役の一人である

  黒人弁護士よりも、

    しがない銀行マン、銀行頭取、

      黒人青年の妊娠中の妻などが

        俄然、輝いた演技をしています。

 

不動産王の元妻へ、銀行マンが

  ストーカーのように執拗に近づく姿には

     恐怖を感じました。

 

真面目な黒人青年が、刑務所内で

 どんどん人格が変容していく様も

   見事に演じられています。

 

黒人差別、偏見たっぷりの裁判官も

  いい味を出しています。

 

南部アメリカの贅沢なセレブ生活の有り様も

  この映画の魅力となっています。

 

  (名作「風と共に去りぬ」のような

     セレブ社会が、今も残っているのが

        よく分かります。

 

   高級レストランなどで、無言でかしずく

     ウエイターは、召使いそのものです。

 

  「風とともに去りぬ」もアトランタが舞台でした)

 

このドラマは、アメリカドラマ界の実力を

  遺憾なく発揮しています。

 

社会問題を、娯楽作品に仕上げる上手さは

  さすがアメリカ芸能界です。

 

是非、ご覧下さい。

 

最後に、不動産王は、

  大学アメリカンフットボールの

   花形選手でした。

 

アメリカの大学では、

  男はフットボール選手、

   女はチアリーダーが

     ヒエラルキーのトップだそうです。

 

  (2番手はバスケ、野球は3番手だそうです)

 

つまり、アメフト、スポーツができない男子大学生は

  モテないどころか、数にも入れてくれないとか・・・

 

日本人で良かったです。