ランク Aの下

 

川口市に暮らすクルド人女子高生の家族を

  淡々と丁寧に、静謐に描きながら、

    日本の難民と入管問題を

       告発した秀作です。

 

 

何かと、クルド人を犯罪者のように

  ヘイトする風潮が、日本に蔓延?していますが、

    この映画は、クルド人も、

      日本人と変わらい日常を

        人種的、法的差別を受けながらも

          必死に日本で生きる姿を描いています。

 

国を持たない最大の民族がクルド族です。

 

  (イラン系山岳民族に属しますが

     ペルシャ人とは、区別されています)。

 

3500万~4800万人で、トルコ、イラク、イラン

  シリアなどに居住しています。

 

  その各国では、少数民族となるがゆえに、

    弾圧、迫害、差別を受けています。

 

クルド語を話し、多くはイスラム教ですが

    キリスト教、ユダヤ教徒もいます。

 

イスラム教に関しては、世俗派で、

   特に、女性の自由、解放、権利などを

     多くを認め、イスラム圏では

        比較的民主的な民族です。

 

  (ただし、この映画に描かれているように

   イスラム教クルド人には、結婚観に関して、

      保守的な風習が強く残っているようです)

 

第1次大戦後に、オスマン帝国が崩壊し

  1922~24年にクルド人国家が生まれしたが

    イギリスの介入等で、消滅し、

      イラクに併合されます。

 

クルド族が最も多いのは、トルコで

  1100万~1500万人います。

 

トルコのクルド人がテロ組織だという言説が

  よくヘイトで言われていますが

    差別、弾圧、クルド文化破壊、

      クルド語禁止などのトルコ政府への

        迫害に対する民族自決、独立運動が

          発端で、テロ集団というのは

            トルコ政府側の見方と言えます。

 

   (クルド人組織がテロ活動をするのは

      あくまで迫害するトルコ政府です。

 

    オサマディンラビンのように

      他国アメリカをテロするのとは

        大きく意味が異なっています。)  

 

トルコ人とトルコ系クルド人は

  とっても仲が悪いと思ってください。

 

日本人は、トルコ=トルコ人と思っていますが

  トルコ人には、クルド族以外の

    たくさんの民族がいますので

      注意しないといけません。  

 

この映画でも、クルド一家の父親が

  クルド独立運動に関わったために

     拷問を受けたというエピソードがあります。

 

この映画では、主人公のクルド一家の出身国を

  明確にしていませんが、明らかに、トルコです。

 

主人公達は、クルド語、トルコ語、日本語が

  映画の中で話されるからです。

 

 (日本政府が、クルド族に冷たいのは

    「日本の友好国である

      トルコのクルド問題は、

         トルコの内政問題だ」

    という考えからです。

 

  同じようにミャンマーの

    アウンサンスーチー民主化運動、

     反軍事政権活動へも

      「内政問題」だという見地から

        日本政府は、知らぬ存ぜぬです。)

 

なお、トルコ議会には、クルド系国会議員が

       約80名ほどいます。

 

湾岸戦争、イラク戦争後に、IS国が生まれ

  崩壊した後に、イラク国内に

    クルド人自治国家が

     生まれています。

 

 (クルド族を脅威と考えた

   トルコ、イラク、イラン政府などは

    クルド族、クルド組織同士を対立させて

      クルド族の力を弱める政策を

        していたため、その影響で

          今もクルド族内の対立あり

            混乱が残っています)

 

クルドを描いた名作があります。

 

トルコ系クルド人・ギュネイ監督「路」です。

 

 

この映画を観れば、

  クルド族の悲劇がよく分かると思います。

 

 (いくつかの物語を組み合わせた

       オムニバス映画です)

 

カンヌ映画祭で、パルムドール賞(最高賞)を

  受賞した名作です。

 

  (私の大好きな映画の1本です)

 

トルコを亡命したギュネイ監督の作品です。

 

是非、ご覧ください!

 

 (「路」のラストシーンは、

    この「マイスモールランド」で

      父親が語るセリフそのものが

        映像化されています。

 

  トルコシリア国境の鉄条網を

    クルド独立運動の青年が

       不条理を思い、哀しく見つめます・・・)

 

実は、私は

  日食を観に、トルコを1週間旅行しました。

 

現地ガイドは、超名門イスタンブール大学卒です。

 

超エリートなのに、日本人観光客用の

 現地ガイドです。

 

日本で言えば、東大卒が、一流企業に就職せず

  旅行ガイドをしているようなものです。

 

不思議でした。

 

理由は、クルド族だからでした。

 

トルコ社会では、クルド族差別が

  厳然とあることを、この旅行で知りました。

 

 (彼は、旅行の最終日のイスタンブール空港で

    私たち日本人観光客に、

     クルド人であることをカミングアウトをして

       「クルド民族独立運動」を

          熱く語ったと、後で聞きました。

 

   私は、買い物中だったので

      聞きそびれました・・・トホホ、嗚呼。

 

   この時、すでに「路」を観ていたので

     早く知っていれば、彼と

       様々な話ができたのにと

         今でも残念に思っています・・・嗚呼)

 

クルドヘイトの方々にこそ

  この映画と「路」を観てもらいたいです。

 

大和民族主義を語る右翼なら

  クルド民族独立を願うクルド人の気持ちを

    理解可能ではないかと思うのです。

 

 (でも、ヘイト系は、この種の映画なんか

    観るほどの、度量はないのかも・・・)

 

迫害、弾圧、差別を受けた人々は

 家族、民族、文化、アイデンティティーを

   大切に守ります。

 

この映画でも、父親、クルドの男たちの

  アイデンティティー、帰属意識が

    強く描かれます。

 

まったく文化の違う国で生きるには

  アイデンティティこそが

    心のよりどころとなります。

 

ヘイト系がクルドをはじめ外国人ヘイトをしますが

 日本人だって、ハワイ、アメリカ、南米へ

   移住し、迫害を受けながら

     必死に生きてきました。

 

クルド人も同じです。

 

言語、文化の違う日本で

  必死に生きているのです。

 

この映画でも描かれていましたが

 日本人が、8K?だと言って

   やりたがらない解体工事を

     になっているのがクルドの

       方々です。

 

トラブルは起きます。

 

トラブルを非難するのではなく

  トラブルを無くす努力を

    両民族がするべきだと思います。

 

ヘイトをする人は、心が貧しく

        狭量だと思います。

 

この映画は、入管法の問題を

  真正面から取り上げています。

 

入管法の非人道的な措置を

  見せつけられます。

 

 ・難民認定をしない。

 

   (トルコ政府への気兼ねして

     クルド族を難民認定をしない)

 

 ・仮放免はするが、就労禁止

 

   (働けないから、金を稼ぐことができず

      食べることができなくなり

         日本を出ていくように

            仕向けているのが

               日本政府です)

 

  ・仮放免になると、医療保険がなくなる。

 

    (病気になると医療費全額負担。

 

      金が無いので、病院に行けない)

   

  ・地域外への移動禁止

 

  ・仮放免で働くと、違法就労になり

     雇い主も、法的責任が発生する。

 

またいったん入管・入国管理センターに収監されると

 無裁判で、無期限で、無労働、様々な制限下で

   社会から隔離されます。

 

  (自殺者もあり、スリランカ女性ウィシュマさんのように

     医療もまともに受けられず、病死?する外国人も

       います。

 

   国連からは、人権無視、侵害だと告発されているのが

      入管・入国管理センターです)

 

まさしく、ガザと同じ状況となっているのが

    入国管理センターです。

 

  (大阪・南港にある入管施設をみたことがありますが

    格子窓の小さい、大きなビルでした。

 

    反社の事務所のようなビルでした)

 

この映画でも、2年以上、入国管理センターに

  収監されているエピソードが語られます。

 

なお、新・入管法が制定され、入国管理センターは、

 少し改善?されたようですが、

  逆に、新入管新法は、

   難民申請に制限を強化し

    いつでも国外退去、追放が

     出来るのが可能となっています。

 

この映画は、入管法の非人道的管理を

  いくつかのエピソードで

    静かに強く批判しています。

 

この映画は、入管法問題だけでなく

  外国で暮らす外国人のアイデンティティの

    葛藤を描いています。

 

あくまでクルド人の誇りをもって生きる父親と

 日本社会に馴染んできた子供たちとの

   民族観、国籍観、価値観のギャップを

     描いています。

 

クルド語が話せず、日本語しか話せなくなった

  子供と、父親との確執です。

 

ヒロインは、5歳の頃に日本へ来て

  クルド語、トルコ語、日本語が分かります。

 

妹と弟は、日本語しか話せません。

 

ゆえに、ヒロインは、父親と、兄弟との

  狭間で、苦労が絶えません。

 

  (日本語ができない他のクルド人たちの

     通訳?もしています)

 

外国で暮らす難民、移民の

     アイデンティティ問題です。

 

長年暮らしている内に

 クルド人なのか?日本人なのか?

   そして、幼い弟の科白にある

      〇〇人か?

 

また、ヒロインは、入管に収監された父親に

 激しい言葉を投げつけます。

 

  (子供たちが何を言ったかは、

         映画を観て下さい!)

 

脚本を書き、監督したのは、川和田恵真です。

 

セミドキュメンタリー風に、アクションも、絶叫もなく

  抑えた演出で、淡々と、クルド人一家の置かれた

    過酷な日本社会を描いています。

 

ジェンダー差別になるかと思いますが

  女性らしい丁寧さで、きめ細かいところまで

    演出しているのが、上手いです。

 

  (男性監督が女性映画を描くと、

    ドラマチックな演出にするのですが

      女性監督は、女性の内面を描くに

         重点があります。

 

  この映画も、ヒロインの心の変遷を

     見事に描き出しています。)

 

寄る辺の無い若い少女や女性問題も

  さりげなく描いているのも

    上手い演出です。

 

ヒロインを演じた嵐莉菜は、

  父親はクルド系トルコ人、母親は日本人の

    ハーフで、モデルをしています。

 

  (ドイツは、第2次大戦で多くの男性を失い

    敗戦後の労働力不足を補うために

      トルコ移民労働者をたくさん

        入国させました。

 

    ドイツ人口の3割は、トルコ系です。)

 

この映画の素晴らしい演技で、

   数々の映画新人賞を受賞します。

 

本人の人生と重なる部分が多いのも

  あると思いますが、それ以上に

    難民の哀しさを演じ切っていました。

 

なお、ヒロイン一家を演じた父親、妹、弟は

  嵐莉菜の実際の家族です。

 

全員素人なのですが、しっかりとした演技を

  しているのに、驚かされます。

 

ヒロインの相手役、日本人脇役たちも、

 役に徹して、抑えた演技で

   好感が持てました。

 

荒川沿いの川口市という

 都会と田舎の中間、物寂しい郊外で、

  中途半端な、不安定な風景を背景に

    映画は進行します。

 

カメラも、明るさを抑え、

  ヒロインの生きる世界の寂しさを

    映し出しています。

 

エンドロールの音楽も素敵でした。

 

良い映画です。

 

じっくり腰を据えて観て下さい。

 

  (無意味なアクション系、娯楽系ばかり

    観ている方には、苦痛になるかもしれません)

 

娯楽系ではない、映画らしい映画です。

 

日本映画も、捨てたもんじゃあありません。

 

  (韓国系にコテンパンにやられている

     日本映画界です・・・トホホ、嗚呼)

 

クルドへの偏見を捨てて観て下さい。

 

この映画は、日本のクルドだけでなく

 万国共通の難民問題を

   見事に描いた秀作です。

 

この映画は、NHK制作でドラマ放送されたものを

  映画として公開した作品です。

 

 (NHKは、報道では、政権への忖度だらけですが

    ドラマ系は、ジャーナリズム魂で

      頑張っているようです)

 

ネットフリックスで観ました。

 

是非、ご覧下さい。

 

最後に、題名の「マイスモールランド」とは

  日本社会で差別されながら、ひっそり暮らす、

    外国人ヒロイン一家のことのようです。

 

日本には、難民、不法残留として生きている

  たくさんの「スモールランド」があるのです。

 

反クルド、ヘイト系の方は

 この映画を観てくれるのだろうか?

 

最後に、クルドの方々が、犯罪を犯すと

 大騒ぎをしますが、

   日本人だって、拉致殺人、ストーカー殺人

     闇バイト殺人など、数々の

       酷い犯罪をたくさんしているのだから

         クルド人を悪く言えないと思うのですが。

 

あっ、そうだ!

 

国会議員が裏金で、高額な脱税しても、

 逮捕できない無法国家は、

    日本だった!・・・トホホ、嗚呼