ランク Bの上~Bの中

 

日中戦争を、2期に分類した。

 

 前期 昭和17年(1937)の盧溝橋事件~

       昭和16年(1941)太平洋戦争開始まで

 

 後期 太平洋戦争開始~敗戦後の1948年まで

 

 

後期太平洋戦争で、

  北京がある河北省と近隣の3省の華北で

   日本軍が共産党八路軍、蒋介石の国府軍と

    どのように戦ったかを記述した本です。

 

 

研究書のような地味な本ですが、

  漠然としか知らなかった中国戦線を

     初めて知ることができました。

 

ミリオタ向けの戦史本というより、歴史書です。

 

ゆえに、一般書としては、

   少しハードルが高い本と言えます。

 

太平洋戦争により、日本帝国陸軍は

  中国戦線と太平洋島島々戦線という

    二面作戦が始まります。

 

結果、中国戦線の兵力が、

       増強できなくなります。

 

そこで、日本陸軍は、様々な工作をします。

 

・日本に協力する中国人団体を組織します。

 

   (中国人と協力することから

     中国人を支配する団体に変貌します)

 

・兵士不足を解消するために、

   現地中国人による傀儡軍を

       編成したりします。

 

  (戦力にならない、信用できない弱小部隊)

 

・蒋介石の国府軍は、

    毛沢東の共産党八路軍が大嫌いです。

 

  日本は、この対立を利用し、

    国府軍と八路軍が戦うように

       仕向けようと工作したりします。

 

 (国府軍には、地方軍「軍閥」の寄せ集めの

    面があり、蒋介石と対立する軍閥があり

       日本軍は利用しようとしたりします。)    

 

・日本陸軍は、少ない戦力で、

  効率的な?戦いをすべく三光作戦をします。

 

   三光作戦は、中国語で

        殺光 (殺し尽くし)

        焼光 (焼き尽くし)

        搶光 (奪い尽くす)

 

・悪名高い731部隊が生産した

  毒ガス、細菌兵器も使用します。

 

この本は、これらの作戦を

  兵士の手記などを紹介して

    具体的な中国戦線の戦いを記述しています。

 

そして、この本で一番、驚かされたのは

  日本側の資料だけでなく、中国側の資料を

    駆使して、客観的に、日中戦争を

      記述しているところです。

 

日本軍の中国観と、中国側の日本観が

  日中戦争をどう考え、戦いをしていたかを

     記述しているところです。

 

この本は、日中戦争が、侵略戦争であるかどうかより

  日本陸軍が、日中戦争で何をしたかを

     正確に記述し、読者に理解してもらい

        その判断を委ねていると

            言っていいかもしれません。

 

  (と言っても、この本の

      日中戦争の記録を読めば

         おのずと、侵略戦争だと

            認識するしかないはずです)  

 

そのため、1次資料の文言がでてくるので

  少し読みにくく、理解しにくいところがありますが

     日中戦争の緊迫感を

        感じることができます。

 

そして、この本の中で焦点となるのが、

      国府軍のエン錫山です。

 

 

 エン錫山は、山西省の地主の家に生まれ、

  日本へ留学し、日本陸軍士官学校を卒業します。

 

 孫文の辛亥革命に参加し、山西省の軍閥となります。

 

 八路軍と戦うのですが、蒋介石に利用されて

   いるだけだと思い、対立し、日本軍に近づきます。

 

  (山西省は、山奥なので、物資は、

      日本軍が支配している港湾から運ばれます)

 

 日本語がペラペラで、日本陸軍内には

   士官学校時代の同級生などが出世し

     知らぬ中ではありませんでした。

 

 日本軍は、何としても、エン錫山を

  日本側に獲り込もうと、何度も、何年もかけて

    画策、交渉します。

 

 バランス感覚に優れたエン錫山は、

   日本軍に味方するようで、しないような態度で

     日本軍との戦火を避け、物資を得ます。

 

そうこうする内に、日本の1945年の敗戦です。

 

犬猿の仲の毛沢東の共産党八路軍が

  山西省に迫ってきます。

 

  (この本では、八路軍がいかに

    中国人民を味方につけていったかも

      具体的に記述されています)

 

破竹の勢いの八路軍に対抗するには

 武装解除された日本軍を利用するしかありません。

 

エン錫山と日本軍の一部の高級将校との間に

    密約が結ばれます。

 

  (将校たちは、毒ガス使用、三光などの戦犯に

      ならないのを条件とする密約です)    

 

日本兵をエン錫山に編入し

      八路軍と戦わせるのです。

 

エン錫山のために戦った日本兵を

    「蟻の兵隊」と言います。

 

  (「蟻の兵隊」は、

    志願の形をとってはいるのですが

     上官の命令に近いものでした)

 

「蟻の兵隊」の多くが戦死し、

  舞鶴へ帰国したのは1954年でした。

 

「蟻の兵隊」が、軍人恩給を申請したら

   「現地除隊して、自分の意志で志願して

      中国に残留したから、一般引揚者で

         戦後補償は無い」

 

「蟻の兵隊」は、裁判で負け、補償なしの

  貧しい生活となります。

 

一方、エン錫山は、蒋介石の台湾へ逃げ、

  密約の高級将校は、「蟻の兵隊」を

    中国へ置き去りにして、早々に日本へ帰国し

       勲章を貰って、天寿を全うします。

 

  (「蟻の兵隊」については、ドキュメンタリ映画や

     書籍にあるので読んで下さい。

 

        私の記事にもあります)

 

日中戦争は、知っているようで

        知らないことが多いです。

 

センセーショナルな報道ばかり目立ち、

  何が起きていたのかは、私を含めて

     多くの日本人は知りません。

 

この本は、できるだけ客観的に

  日本と中国の二つの視点から

    具体的な歴史的事実を、

       積み上げている本です。

 

軍事用語、専門用語などが多くありますが

  細かいことは気にせず、

     読んで下さい。

 

この本を読まずして、

  日本の中国侵略論争を

      語る資格はありません。

 

何も政治的なことは分からない

  日本兵が中国人を殺し、

    三光作戦ですべてを

      略奪された中国人が

         日本兵を殺したのが

           日中戦争です。

 

まさしく、プーチンがウクライナへ侵略した世界は

  日中戦争のものであることを

     教えてくれます。

 

  (学のない田舎育ちの

     貧しいロシア人少数民族が

        ウクライナで三光作戦をしてるのです)

 

日中戦争は、ウクライナ戦争です。

 

この本を読めば、ウクライナの勝敗は、

    自ずと見えてくると思います・・・たぶん。

 

    (日中戦争は15年くらい続いたから

         時間はかかると思いますが・・・)

 

歴史は、戦争の歴史です。

 

この本のように、戦争を記述した本は

    歴史の教訓となります。

 

  (学ぶこと、学習できないのは

     人類の宿命かもしれません・・・嗚呼

 

   思うに、私も同じ失敗を

       何度も繰り返している・・・トホホ)

 

少し読みにくい本ですが、

  是非、トライしてみて下さい。

 

戦争を知るためにも、是非読んで下さい。

 

この本を読めば

  日中戦争は、そもそも

      何のためにしたのか?

 

大きな疑問が生まれるはずです。