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大正期に、ハワイへ移民した日系一世の

 苦難の歴史を映画化した作品です。

 

 

題名は、中国・唐時代の詩人・杜甫の

  「春望」の最初の句からです。

 

   「国破れて山河あり」

 

安禄山の乱で、荒廃した長安を

  眺めて詠んだ詩です。

 

貧しい小作農の次男三男は

  海外移民をして、

    人生を切り開こうとしました。

 

また、日本政府も、人口増を解消すべく

  棄民?政策をとって海外移民を推進しました。

 

この映画は、大正期の移民先であるハワイが

   舞台となっています。

 

パイナップル畑、サトウキビ畑で

  低賃金と過酷な重労働で

    日本人は奴隷のように

       生き抜きます。

 

この映画で、一番良かったシーンは

  移民日本人が、大農場で

    働いている場面でした。

 

  (俳優たちも、演技をするまでもなく

     汗だくになって労働をして

       セミドキュメンタリ風となっています)

 

祖国日本は、海外移民に対して、

  何ら手助けをすることも、

    ほとんど無かったのですが、

      移民一世は、日本人である

        アイデンティティと祖国を愛します。

 

苦労の末、それなりの中流生活を得たころに

  太平洋戦争が始まり、日系一世と二世の間に

    アイデンティティギャップが生まれ、

      悲劇が広がっていきます。

 

一世と二世間の教科書的な、標準的な葛藤が

  描かれれるので、あまり感動もすることも

    少なかったです。

 

俳優たちは、必死にそれなりに、

 感情を込めて演じるのですが、

  科白に説得力がなくて、

    実感が湧くことは無かったです。

 

ハワイシーンがありきたりだったのですが

 日本へ一時帰国した後、戦争が始まり

  ハワイへ戻れなくなった母子の

   外国人?差別を受けながら

    苦労する日本編は

     それなりに観ることができました。

 

  (当時の日系一世は、

    日系二世を日本で教育させる

      風潮がありました。)

 

ただし、映画とは異なり

 日本帰国の日系二世は

   二重国籍なので徴兵され

    差別を受けながらも、

     特攻隊で亡くなったケースも

      ありました。

 

映画のように、アメリカ日系二世は

  米軍で戦い、日本の日系二世は

    日本軍で戦いました。

 

 沖縄では、日系二世の兄弟が

  敵味方で戦ったこともありました。

 

日系人に限らず、国際結婚の子供にとって

  祖国、母国、アイデンティティとは何か?

    というのは、現代に続く、

      大きな問題です。

 

  (さらに、日本育ちの外国人も

     同じ問題を抱えます。

 

  多様化と言われますが

     あまり、愛国心を強調しないのが

       良いと思います。

 

  ウクライナ人とロシア人なんか

    日本人と朝鮮人間より

      緊密ですから悲惨です。)   

 

後に、NHK{大河ドラマ「山河燃ゆ」でも

  日系二世を主人公にしてましたが、

    この映画が、アメリカ日系問題を

     真正面から描いた

      最初の映画だと思います・・・たぶん。

 

日系移民問題を、何も知らない本土日本人へ

  啓蒙したことでは、大きな意味がある映画です。

 

しかし、娯楽性だけでなく

  演出やシナリオでも

    物足りない作品となっていました。

 

教科書的なエピソードで終始しているのです。

 

ハワイで大々的に、日系団体だけでなく

  多くの協力を得て、ロケをしてるのが

    よく分かります。

 

アメリカ本土の日系人は、

 強制収容所へ収監されましたが

   ハワイの日系人は、この映画のように

    ほとんど収容所に入ることなく、

      普通の生活ができました。

 

 (開戦時、ハワイの日系人は

   人口の40%ちかく(16万人、うち4万人は一世)を

     占めていたため、経済活動や労働者として

       不可欠で、収容所建設も、本土移送も

         不可能で、強制収容は諦めました。  

 

    実は、戦争景気で、ハワイ日系社会は

      潤うのですが、差別されない

        普通のアメリカ市民としての

          権利を得るために、多くの若者が

            米軍に志願しました。   

 

  なお、FBIは、敵性外国人として

    2000人ほどをハワイの各地の強制収容所へ

      収監しました。

 

  映画でも少し描かれていましたが

    聖職者、語学教師、領事館関係者などを

      収監しました)

 

この映画は、ハワイ移民史を描くという

  果敢な挑戦的な映画です。

 

大規模なハワイロケをして、

  お金をかけて撮影しています。

 

    (1ドル=360円という

          超円安の時代です)

 

「夢の国 ハワイ」と言われた時代に

  日系人を描きながら

    反戦を訴えた映画です。

 

ラストとの、ハワイにある

  無名戦士の墓地のシーンが

    そのすべてを語っています。

 

監督・脚本は、高峰秀子の夫の

  松山善三です。

 

 

戦争は、何のためにするのか?

 

戦争は誰のためにするのか?

 

戦争を誰が望んでいるのか?

 

真面目な映画です。

 

この映画できるまで、

  多くの日本人は日系人の苦難を

    知らなかったはずです。

 

この意味では、映画の多少出来は悪くても

   重要な映画ではあります。

 

最後に、この映画は、

  ハワイ各地で上映され

     大ヒットしました。

 

 (多少、内容については

    賛否両論があったそうです。

 

 主演俳優たちも、舞台挨拶をしたそうです)

 

私が、初めて、若い頃にハワイ旅行へ行った時

  1人で、パールハーバーへ行きました。

 

  (日系人ガイドに、

    アリゾナ記念館へ行く方法を尋ねたら

      怪訝な困ったような顔をされましたが

        道順を教えてくれました)

 

沈没しているアリゾナへ渡る前に

  アリゾナ記念館内で

   戦時中のニュース映画を見せられました。

 

「日系人はスパイだ」というニュース映画でした。

 

この場にいた、日系人家族は、上映後、

  怒って出て行き、アリゾナへ渡ることなく

    帰って行きました。

 

私は、一人で、ランチに乗り、

  アリゾナへ向かいました。

 

ランチ内の日本人は私一人でした。

 

横に座っていた10歳位の少年が

 父親に

   「JAPか?」と尋ねました。

 

父親は、目配せをして、「言うな」と

   合図をしました。

 

当時のアリゾナ記念館は、

  アメリカ人にとって聖地でした。