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俳優・小沢昭一の「日本の放浪芸」シリーズの

  成立と文化的意味を分析した研究本です。

 

副題「小沢昭一と「ドキュメント

             日本の放浪芸」

 

 

名脇役の怪優・小沢昭一が

  1971年、LPレコード「日本の放浪芸」を発表し

    失われつつあった芸能にスポットを当て

       世間に知らしめた。

 

まあ、B級芸能の再発見、再評価したのが

  小沢昭一です。

 

全国の三河万歳、門付芸、テキヤの口上、

 仏僧の説教、見世物子屋、ストリップ、大道芸

   イタコ、ゴゼなどを録音、記録し、

      レコードにした。

 

この本は、小沢一郎の放浪芸収集の

  過程、成立、発表などの仕事を

    詳しく、丹念に調べ上げ、

     日本芸能史における

      小沢一郎の立ち位置と思考を

        考察した本です。

 

論文?を、書籍化した本なので

  一般書とはいいにくい本でもあります。

 

 (もっと、庶民に読み易ければと

    少し残念でした。

 

  小沢昭一「日本の放浪芸」を

   視聴するチャンスが少ない分だけ

    芸そのものを紹介、解説する文が

      あれば、もっと読みやすくなったと

        思います。

 

  ズバリ言うと、知識は豊富だが

    何が言いたいか分からなくなるという

      専門家病の傾向があるということです。

 

  せっかくの素材なのに、

    もったいないと思いました)     

 

 

小沢昭一は、得体のしれない変人、

   特に、中国人を演じれば日本一の

     脇役です。

 

 東京生まれで、麻布中学へ入学し

   俳優・加藤武、精神科医なだいなだ、

     フランキー堺などの、戦後日本を

       代表する英才たちに出会います。

 

   戦時下でありながら、彼らと

     寄席に入り浸り、演劇部を創設します。

 

   海軍兵学校へ入学するが、終戦。

 

   早稲田大学で、落研、演劇にのめり込み

     俳優座養成所に入ります。

 

  舞台、ラジオ、テレビで活躍し

   早稲田の同窓の今村昌平監督の紹介で

     映画デビューし、以後は、脇役として

       無くてはならない存在になります。

 

40歳ごろに、「俳優とは、何ぞや?」という

  疑問?というか、根源的な問題に悩み

    俳優、芸能のルーツを探しに

      全国を旅して、各種の芸能者を訪ね、

        その芸事をテープに録音していきます。

 

そして「ドキュメント 日本の放浪芸」を発表します。

 

 

この本は、小沢昭一の日本芸能の仕事内容を

  検証した本です。

 

 (ゆえに、小沢昭一の人生を語る本では

      ありません。)

 

この本で、改めて教えられたのは

 日本の文化庁の文化行政です。

 

人間国宝、無形文化財保護に指定されるのは、

  歌舞伎、落語、浄瑠璃などの

    放浪しない中央の芸能です。

 

一方、庶民相手に、旅しながら露店、店先、軒先で

  演じられる芸事は、保護の対象外です。

 

つまり、日本の芸能には、上流芸能と

 下流芸能というヒエラルキーが

   厳然とあるということです。

 

  (日本の文化行政の限界でもあります。

 

   例えば、天皇陛下の前で

     「フーテンの寅さん」の

       テキヤの口上を演じるのは

         永遠にありそうもありません)        

 

小沢は、下流芸能、B級芸能を

  追求していきます。

 

俳優=河原乞食と言われて差別されます。

 

小沢は、河原乞食と言われながらも

  それを職業にして生きていくしかなかった

    B級芸能人の、細やかに、逞しく生きる姿を

      全国に求めます。

 

実は、B級芸能にこそ

  日本の芸能文化の原点があることを

    小沢は発見したのです。

 

B級芸能は、芸を演じて

  その場で、お金を稼ぐという

    大道芸です。

 

面白くなければ、廃れ、消えていきます。

 

時代に合わなければ、忘れさられます。

 

演者が死ねば、失われます。

 

この儚い芸に

 シンパシーと愛情を注ぎこんだのが

   小沢昭一でした。

 

  (小沢の真摯な考えに共感し

     ビクターのディレクターなどが

       協力して、「放浪芸」が

         日の目を見ます。

 

  このあたりも、良い話です)

 

この本は、小沢のB級芸能に対する

  思想、思考の変遷を詳しく捉え

    分析した本です。

 

読みやすいとは言い難い本です。

 

著者には、是非、もっとかみ砕いた

  小沢昭一やB級芸能について語った

    入門書のような本を

      書いてもらいたいです。

 

良い本とは、その本の読書をきっかけに、

  次の新しい本へ誘う力のある本です。

 

と、適当なことを買きましたが、

  小沢「放浪芸」を聴いているのは

    ほんの少しです・・・トホホ

 

絶版なので、購入しようとしたら

  1作が、1万円以上しますので

    私の少ない小遣いでは

      購入が苦しいです・・・嗚呼。

 

 

  (数多くある、小沢の本を

     これからコツコツ読んでいこうと思います)

 

最後に、この本には、小沢は、デンスケを

  担いで、芸人たちを訪ね、録音しました。

 

実は、学生時代に、デンスケを

 買いましたが、大して活用せずに

  結婚前に捨ててしまいました。

 

   嗚呼、なんてもったいないことを

     したのだろうか!

 

   今なら高く売れるのに!

 

   後の祭りとは、私の座右の銘です・・・トホホ、嗚呼