ランク Bの上~Aの下

 

ナチスドイツに占領されたオランダで

 画家志望の心優しき青年が、

   警官になったために

    レジスタンス運動に関わり

      自己矛盾の葛藤に

        追い込まれていく様を

          描いています。

 

 

ナチスドイツに占領された各国には

  ナチ協力者に対する責任追及への

    線引き問題が横たわっています。

 

協力者と抵抗者の間に

  グラデーションがあるからです。

 

多くの国民は、事なかれ主義に陥り

  黙認か消極的協力を

    せざる負えなくなります。

 

この映画は、ナチ占領政策に

  加担?した若者の苦悩を

    描いています。

 

第1次大戦  ベルギーのほぼ全土を

         ドイツに占領されました。

 

   (映画で、登場人物たちが

     フラマン語=ベルギー語?と

       ドイツ語を話すことができる

         理由の一つです

 

   なお、現在のベルギーでは

     フラマン語、フランス語、ドイツ語が

       公用語となっている3つの

          地域があります。

 

  そもそもヨーロッパは、長年の

    戦争と民族移動で国境を明確に

      分けるのは不可能なので

        EUにしたのかもしれません。

 

  プーチンのように、国境を確立しようとしたら

    戦争になるからかもしれません)

 

1940年5月 ベルギーはナチスドイツに占領される

 

この映画はナチス占領政策が定着?した

    1942年が舞台となっています。

 

若い警官が、ユダヤ人狩りに駆り出されます。

 

実は、ベルギー国内には、1942年7月に

  メヘレン収容所が作られ、ユダヤ人を

   アウシュビッツへ移送前の

     中継収容所が作られました。

 

メヘレン収容所からアウシュビッツへ移送された

  ユダヤ人は、約2万5千人です。

 

この映画を観たベルギー人は

 メヘレン収容所を思い浮かべたと思います。

 

メヘレン収容所は、ベルギー国民にとって

  ナチ協力の象徴そのものです。

 

  (主人公たちが、ユダヤ人狩りに行った

    マンションで、ユダヤ人の子供を預かるのを

      拒否したベルギー人が登場するのも

         当時の一般ベルギー国民の

           普通の姿です)

 

ユダヤ人狩りを阻止するレジスタンスが、

  輸送列車を脱線させて、ユダヤ人の逃走を

       助けています。

 

この映画は、ベルギー国民のナチ協力を描き

  その責任問題を、どうとらえるべきかを

    問いかけた映画です。

 

  (日本の映画ドラマ界は、日本国民による

     他国、多民族への戦争責任問題を

        ほとんど描かくなりました。

 

   否、描けなくなりました・・・嗚呼、トホホ)

 

占領下で仕事を得るには、

  戦争協力者になるのが

    一番手っ取り早いです。

 

この映画では、戦争協力者とレジスタンスの間で

  迷い揺れ動いてしまう青年が描かれます。

 

この映画は、

 ごく普通の画家を目指す青年が

  人の優しさを失っていくというか

    心を閉ざして生きていくしかない過程を

      サスペンス調で

        丹念に描いて行きます。

 

  (ナワリヌイ氏のような人間は

    ごく少数の限られた特別な人なのでしょう・・・)

 

ベルギーの負の歴史を描いた作品です。

 

手堅い演技の俳優陣ばかりです。

 

主人公の画家志望の青年が

  悪の世界へと、変貌していく様が

     上手く演じられています。

 

悪役のナチス将校が、もっと魅力的だと

  この映画はさらに良くなったと思います。

 

若い警官の二人が、最初に

  ナチス将校に疑われている一連のシーンが

    恐怖感と緊迫感に満ちた、一番の

      見せ場だったと思いました。

 

バレるか、バレないかで、右往左往する

  心理がとても良く表現されていました。

 

占領下で暮らすベルギー国民の世界も

  よく再現されていたと思いました。

 

占領下のユダヤ人狩りの映画には

  名作が多いです。

 

  (皮肉なことに、将来には、

   ユダヤ人によるパレスチナ狩りの

    名作が、生まれるでしょう・・・嗚呼)

 

自国の負の歴史を描くことができる国こそ

  表現の自由がある国です。

 

  (日本には、ありません・・・トホホ、嗚呼)

 

この映画は、人間の弱さを描いている映画です。

 

普通の人間が、人間らしさを失ってしまうのが

  戦争の大きな問題です。

 

  (政府側、反政府側に限らずですが・・・)

 

是非、ご覧下さい。

 

ヨーロッパが、他民族社会であることを

  教えてくれる映画です。

 

この映画の占領下のベルギーは

  現代のヨーロッパそのものです。

 

ネオナチの台頭、異民族排斥、国家主義

  強権、独裁政権などが

   人間らしさを失わせていくことを

     警鐘している映画です。

 

そして、ベルギー国民の戦争責任を

  どう総括するのかを、問うています。

 

私の父は、山奥の国民学校の校長でした。

 

教え子を戦場へ送り出した立場でした。

 

敗戦後、村の若者たちが

  父をはじめ村の責任者の

    戦争責任を追及しに

      押しかけてきました。

 

父  「みんな国のためだと思って

      したことだ」

 

父は、戦時中の教員時代を

    一切語らずに亡くなりました。

 

戦争責任は、国家と個人では異なるし

  国民一人一人で違います。

 

この映画を観て、戦争責任について

  考え続けなければならないと思いました。

 

ウクライナのプーチン戦争の戦争責任は

  どうなるのでしょうか?