ランク Aの下

 

タイ・バンコクの売春街に住む

  二人の若い男女が、過酷な生活の中で

   愛を求めて彷徨する姿を

    リアルなタッチで描いた秀作です。

 

 

洗練された力強さに溢れた秀作です。

 

(日本映画は、完璧に負けています・・・トホホ、嗚呼)

 

エカラック・クランソン監督の映画デビュー作です。

 

  (テレビドラマ2作品を手掛けています)

 

恐るべき才能を持っている監督です。

 

独自の映画手法を確立しています。

 

タイ映画史を飾る名監督になるのは

  間違いありません。

 

 (ハリウッドがスカウトすると思います)

 

 

是非、ご覧下さい。

 

バンコクの貧民売春街が舞台です。

 

この猥雑で、汚物まみれのような

  バンコク最底辺の街を

    クールな視点で、淡々と映しだします。

 

貧困に喘ぎ、底辺を彷徨い

  地獄のような絶望的な世界で

     夢を持てず、僅かな希望を持って

        愛を欲している人々を描きます。

 

若者だけでなく、大人達も

  運命に贖うことにも疲れ

    ほんの僅かな生きがいに縋って

       生きています。

 

監督は、冷静に、スラムの人々に起る

  波風を描ています。

 

この映画は、人間の孤独を描いています。

 

孤独ゆえに、愛を求めてしまう人間の性(さが)を

  鮮烈に、クールに見据えている映画です。

 

主人公の二人の男女は、

  同じ売春窟で暮らしながら

   すれ違うだけの人生を歩んでいるはずが・・・

      映画を観て下さい。

 

この監督、シナリオが上手いのは

 主人公二人の関係性を

  直接、関わることをせずに

    別な2つの物語として描きながら

     同じ孤独と哀しみを

       結びつけるところです。 

 

「孤独は、裏切られて生まれる」

  ことを、痛切に描いています。

 

ラブストーリー映画ではありますが

  苦くて辛い物語です。

 

2つの物語が、同時進行で流れていきますが

  予想を裏切る形のシナリオ展開は

    天才的な上手さがあります。

 

オープニング後にある、主人公の男女が

  一瞬、すれ違うシーンが、

    この映画の名シーンだといことが

      映画を観終わって

        分かりました。          

 

タイの俳優陣の素晴らしい演技力に

  感服させられます。

 

主役から脇役、チョイ役、

  若手からベテランまで、上手過ぎます。

 

私が一番、心に残ったのは

    元ゲイダンサーの俳優です。

 

 

日陰者の哀しみと、僅かな愛の希望で

  生きている姿には、見た目以上の

    美しさがありました。

 

 (一見、単なる脇役かと思いきや

   ゲイの悲劇が、さり気無く

    主人公に絡んでくる演出には

     監督、シナリオの完璧度の

       高さが素晴らしいです)

 

母親の深い愛情、親心を演じたのは

  クロントン・ラチャタワンです。

 

 

ノーメイク?で、老いた売春婦の

  霰もない姿を演じ切っています。

 

 

  (この映画の母親のように、私の母も、

    私がプチ家出をした時に

      何時間も駅前で、私を見つけようと

         立っていたと、後で知りました)

 

「親の心、子知らず」とは言いますが

  万国共通です。

 

「親心を知った時には、親は無し」

 

この映画のように

  親孝行は永遠にできないのかもしれません。

 

ヒロインを演じたのは

  スピッチャー・サンガチンダーです。

 

 

物憂げな、孤独な少女の哀しみを演じ切っています。

 

もう一人の若者を演じたのは

  ティティ・マハーヨーターラックです。

 

 

イケメン俳優ですが、貧しい若者が持つ

  内に秘めた憤りと不満や

    やるせない感情を見事に表現しています。

 

 強盗シーンの葛藤は、

   この映画の名シーンです。

 

若い娼婦を演じたのは

    ドゥアン・スミッタです。

 

 

刑務所入りの父があり

  体を売ることを割り切ろうとしながらも

    人並みの幸せを求める哀しい女性を

      演じ切ります。

 

ともかく、どの役者もみな

 上手過ぎます。

 

社会から落ちこぼれた人々の

  必死に、その日暮らしで生きるしかない

    刹那的な姿を

       クールに描いています。

 

上手い演出と演技で

  バンコク売春窟の世界に

     導かれてしまいます。

 

良い映画です。

 

孤独がテーマの映画です。

 

恋人愛、家族愛が、救いになるのか

   考えさせられる映画です。

 

見方によっては、

  昔からよくあるモチーフであり

    テーマの映画です。

 

 (実は、長谷川和彦監督「青春の殺人者」を

         思い起こしました)

 

しかし、斬新な映像と演出と演技と映像が

  この映画の大きな魅力となっています。

 

タイ映画界に名監督誕生です。

 

そして、この映画の最大の課題というか

 謎は、ラストシーンです。

 

観客によって解釈が分かれるはずですが

  私は、ヒロインが願った、

    幻だと思いましたが・・・。

 

クレジットもしっかり観て下さい。

 

主要登場人物が、観覧車で

  再登場するのですが、

    ドキュメンタリー写真の如く

      もう一度

   ドラマが演じられています。

 

ここにも監督の美的才能

  映像表現の素晴らしさが分かります。

 

 (ネットフリックスは、

   「クレジットを観る」設定をしないと

     観えませんよ!)

 

ラストクレジットの音楽も素敵ですよ!

 

  (歌詞の意味は分からないけど・・・トホホ)

 

是非、ご覧ください。

 

タイ映画は、隆盛期です。

 

  (どうも、映画の質の高さは

    経済成長率に

      比例していると思うのですが・・・

 

  今の日本に、名作は

    生まれるのだろうか?・・・トホホ、嗚呼)

 

ネットフリックスで観ましたよ。

 

是非、ご覧ください。