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遊郭街(赤線)「鳩の街」で生活する人々の

 喜怒哀楽を織り交ぜたオールスター映画

   となっています。

 

永井荷風の短編小説を原作としています。

 

 

敗戦後10年の日本には

  戦争の傷跡が、庶民の心には

    生々しく残っています。

 

この映画の根底には

 東京空襲で人生を狂わされた人々の

   哀しみが描かれています。

 

今も昔も変わりませんが

 良いか悪いかは別にして

  男性中心社会の日本で

  女性が、学歴も血筋も関係なく

   手に職も、資格も無くて

   体一つでお金を稼ぐことができる

     世界が遊郭です。

 

 (今なら、風俗、たちんぼになるかなあ・・・)

 

しかし、誰も望んで遊郭で

 働いているわけではありません 。

 

それぞれの事情があって働きながら、

 あわよくば、遊郭から抜け出そうと、

  儚い希望を持って、働いています。

 

この映画は、遊郭で働く娼婦たちと

  遊郭経営者夫婦のドタバタを

    丹念に描き

     人生の儚さや哀愁を

       物語っている作品です。

 

監督は、名作「警察日記」の

  久松静児です。

 

 

市井の庶民の生活を描かせたら

  日本有数の名監督です。

 

名優・森繁久彌との

  コメディ映画は

   秀作揃いです。  

 

 (もっと評価されるべき

     映画監督だと思います)  

 

この映画は群像劇になっているので、

  誰が主役かと言われたら

    難しいのですが、

     遊郭のぐうたら?亭主の

       森繁久彌になるでしょう。

 

 

生来の女性へのだらしなさと

 東京大空襲のどさくさで

    妻と娘と別れて暮らすようになります。

 

別れた妻と娘への

  未練と子煩悩に苛まれ、

    今でいうストーカー的男を

      見事に演じます。

 

  (森繁久彌の名演技の

        一つだと思います。

 

   男の不甲斐なさや女々しさを

     演じ切る名演技は

       この映画の最大の

         魅力です)

 

森繁久彌演じるダメンズと

  腐れ縁になった遊郭の

    しっかり者の女将を演じるのは

     田中絹代です。

 

男女の仲が一筋縄でない事を

  しっかりと演じています。

 

一つの遊郭に、様々な人間が

  それぞれの理由で、絡み合い

     個々のエピソードが

       描かれます。

 

小さな小話が演じられ、重なり

  結末に向かっていきます。

 

シナリオ構成の上手さが

  際立っています。

 

 (どんな結末になるかは

    ネタバレになるので

      映画を見て下さい)

 

それぞれの娼婦の小話、エピソード、ドラマを

  各女優たちが名演技をします。

 

 (細かく書き辛いので

   ともかく映画を観て下さい)

 

 

そして、娼婦に絡む脇役?男優たちも

  自然な演技で、いい味を出して、

   強い印象を残して

    リアル感を生み出します。

 

 (時計の若い職工のストーカー振りや

  チョイ役の娼婦を買うスケベ親父など

    自然な演技で上手いこと!)

 

ほんまに、この映画に登場する

   全役者の上手いこと!

 

どうして、昭和の俳優は、

  こんなに上手いのだろうか?

 

  (現代の役者は、下手すぎます・・・トホホ)

 

この映画は、遊郭の人間模様を描きながら

  敗戦後10年で、忘れ始めた戦争の

    記録と悲劇をしっかりと描いている

      反戦映画ともいえるかもしれません。

 

この映画の公開1年後に

   「もはや戦後ではない」と言われますが

      この映画は、この言葉への

        アンチ作品です。

 

庶民には、戦争の傷があり

  娼婦として働かざる負えない女性たちが

    いたことを訴えているともいえます。

 

日陰者として生きる女性に

  優しさを持っている映画です。

 

一方では、売春防止法が

  成立する前年の作品ですので

    「民主的」遊郭経営という

      時代性も表現しています。

 

その象徴の娼婦を演じているのが

  高峰秀子です。

 

  (お嬢様から、暴熟れの娼婦まで

   見事に演じることができる

    芸の幅を、この映画で

      見せつけられます

 

   主演ではなく、脇役?として

     出演しています)

 

遊郭映画には、名作が多いです。

 

遊郭が、人間社会を最も

  露にする世界だからでしょう。

 

この映画は、高峰秀子映画祭で観ました。

 

 

1950~70年頃の日本映画は

  良い作品が多いです。

 

俳優、役者が、

  主演から脇役まで

     全員の上手い演技に

        圧倒されます。

 

是非、ご覧ください。

 

なお、YouTubeで

  観ることができと思います。