ランク Aの下

 

インド・ボパールで起きた毒ガス事件に巻き込まれた

  鉄道員たちの苦闘を描いた

        実話を元にした骨太ドラマです。

 

副題 「知られざるボパールの1984の物語」

 

 

1984年、インド・ボパールにある化学工場から

 猛毒ガスが流出し、1万5000人以上が死亡、

   約60万人が負傷した

      ボパール化学工場事故のドラマ化です。

 

インドドラマ得意の

   実録風ドラマになっています。

 

 (インド作品は、歌と踊りだけではありません。

 

  社会派の実録映画ドラマには

     素晴らしい作品が幾つかあります。)

 

全4話ですが、

  最初の1、2話が素晴らしいです。

 

 (事故直前から、事故発生時までが

   緊張感に満ちていて

     事件の恐ろしさが

       迫ってきます)

 

後半の3話、4話は、

  救援に活躍した鉄道関係者たちの

    人間ドラマになっています。

 

毒ガス事故が、何の理由、原因で起きたか?

 

  (このドラマ一番の見せ場です。

 

   企業倫理、安全操業の欠如の

     恐ろしさを描いています。

 

   ダイハツ、原発に

     共通する問題です)

 

毒ガス事故後の、鉄道員を含む

  住民たちの混乱と悲劇

 

  (特に、駅の待合室に逃げ込んだ

     パニックになった人々の姿を

        リアルに描いています)     

 

工場関係者、アメリカ本社のの隠蔽、

  責任回避の有り様

 

  (法秩序が守られていないインドなどの

    発展途上国で、先進国企業が

      いかに、好き放題に操業しているかを

        教えてます。

 

  海外の日本企業も、日本では許されない

   環境汚染をしているかもね・・・)

 

政府関係者の保身と面子重視

 

 (能登地震でも、台湾救助隊を

   断ったそうですが、何といっても

    御巣鷹山日航ジャンボ機事故で

     米軍が一番に現場を発見していたのに

      国内事故だとして、米軍を追い出し、

       日本政府は米軍情報を生かせず、

        発見、救助が遅れ

         生きていた何人かの生存者が

           亡くなったこともあった・・・)

 

鉄道員たちの避難、救援活動の活躍

 

  (鉄道員の活躍が、どこまで事実で

    どこから創作かは、知らないので、

      判断できません。

 

  後半の見せ場ですが、多分に

   創作、脚色しているように思いました。

 

  鉄道員幹部の演説があるのですが

    ちょっと白け、残念な気がしました。

 

  このシーンは、インド鉄道ヨイショとなっていて

    作品の出来を下げてしまいました。

 

 まあ、インド鉄道の全面協力で

   この映画が製作されていることを考えると

      営業上仕方がないのかもしれません。

 

  このシーンだけは、私好みでは

      ありませんでした。)  

 

毒ガス事故後の補償、後遺症問題

 

  (サラッと描かれているのですが

   とても大きな問題です。

 

 裁判でアメリカの工場親会社

  ユニオンカーバイド社は賠償金4億7000万ドルを

   支払ったが、遺族や被害者には、

      一部しか渡っていない。

 

 インド政府関係者が中抜き?をしているらしいです。

 

 インド社会の闇です。

 

 毒ガス事故後の工場は、そのまま放棄されたので

   水銀などの毒性廃棄物により環境汚染が続き、

      住民の健康被害は、続いていると

        言われています。

 

  ドラマで描かれたように、工場近くの住民は

    最貧生活なので、被害を生じても

       為すすべが無いようです。)

 

社会派ドラマではあるのですが、

  カースト制度に触れていない

     ように思いました。

 

 (カーストの低い?身分が住んでいる

   スラム街が登場するのですが・・・。

 

   インド人の方が観たら、カースト制度が

     描かれているのかもしれませんが・・・)

 

このドラマには、事故だけでなく

  多民族、多宗教国家インドの

     民族問題も描かれています。

 

1984年、インディラ・ガンジー首相が

   シーク教徒に暗殺

 

  (父親は、インド初代首相ネル―)

 

 

ドラマ内の列車の中で

 暗殺事件により、シーク教徒が

  ヒンズー教暴徒によって

   襲われるのですが、

     関東大震災の朝鮮人虐殺

       「福田村事件」と同じ構造です

念。

 

一部の過激な言動者によって

  引き起こされるのが

     民間人による民間人虐殺です。

 

シーク教は15世紀にインドの

 グル・ナーナクが始めた宗教で

   キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教についで

     5番目に多い宗教で、信者は2500万人。

 

  (シーク教徒の男性は、

     ターバンを巻いていることが多いです。     

 

  インドと言えばターバンのイメージですが

    インドを象徴しているとは、言い難いです)

 

シーク教徒で建国するのですが

   イギリスの植民地政策で滅ぼされます。

 

 (その後は、イギリスに協力し

    インド国内で社会的地位を得ていきます)

 

1947年のインド独立時も、シーク教徒分離独立運動が

  あったのですが、ネール首相の政教分離の下で

    分離独立できなかった。

 

1984年(ボパール毒ガス事故と同年)に、

  パンジャブ州でシーク教徒分離独立運動が

    活発になり、インディラ首相が

      軍隊を送り込んで、弾圧をしました。

 

  (シーク教の聖地・黄金寺院の過激派を排除し

     指導者を殺害しました。

 

       アメリカがよくやる方法です。

 

  インディラ首相は、シーク教徒に恨まれるのも

      仕方がないのかもしれません。

 

   ドラマでは、詳しく描かれていませんが

     インド国内の宗教紛争です)

 

民間虐殺は、被害者意識の強い貧しき者が

  不満を他者にぶつけるのでしょう。

 

そして、その不満を利用する政治家、扇動家が

  利益を得ようとします。

 

このドラマに登場するシーク教徒虐殺活動で

  車掌が命がけで守るエピソードが

    実際にあったのか気になりました。

 

このドラマは、社会派、社会問題告発ドラマですが

  後半の鉄道員物語があるせいで

     最も一番に、何を描きたいのかが

       少し曖昧になっています。

 

オープニングで、会社責任者がインド脱出する

  シーンが描かれますが、

     それだけで終わってしまっています。

 

ひょっとしたら、あまりズバリ描かないのは

  インド政府へ忖度をしているのかもしれません。

 

アメリカ人の会社責任者CEOの被告は、

   裁判に出頭しませんでした。

 

インドとアメリカには、犯罪人引き渡し条約が

  あるのですが、アメリカ政府は責任者を

    インドへ渡していません。

 

  (責任者の会社CEOは、判決が出る前に

        死亡しました

 

   この事故のドラマ化には、

     有罪判決を受けた元インド人従業員が

       制作阻止の裁判を起こしましたが

          裁判所は却下しました)

 

インド映画ドラマの魅力は

  脇役、チョイ役の演技力の高さです。

 

 (主人公を演じる役者より

       上手いことが多いです)

 

実はこのドラアも

  キーパーソンは、アメリカ人工場長です。

 

エリート街道から外れ、

  インドの工場長という左遷組?から

     なんとか本社に忠誠を尽くして

       アメリカ帰国を願う人物像を

         見事に演じています。

 

インド嫌い、人種差別主義者?の工場長が

  悪役の魅力いっぱいで、

    渋い演技をします。

 

工場長の下で働くインド人技術主任役も

  良い演技をします。

 

見習い鉄道員も、上手いです。

 

そして、狂言回しとなる

 小悪党の列車強盗役が、後半の

   在り来たりな鉄道員礼賛ドラマになるところで

     ストーリーにアクセントを生み出し

       盛り上げています。

 

 

ホームレス役の子役2人も上手です。

 

このドラマは準主役、脇役の演技力を

   堪能できます。

 

  (インド映画ドラマの魅力です)

 

制作者たちが、ボパール毒ガス事故の悲劇を

  残しておきたいという執念を感じるドラマです。

 

一方では、政治的、営業上の理由なのか、

  事故の責任追及は、弱くなっています。

 

そして、重苦しい告発ドラマだけにしないで

  泥棒、列車衝突サスペンスの

    娯楽要素を入れているところは

      インド映画ドラマ界の

        成熟度の高さです。

 

  (シナリオ展開もとても上手く

           よくできています)

 

映画ドラマは、娯楽の王様という

  本文を忘れていない作品となっていました。

 

なお、注意しておいて欲しいのは

  毒ガス事故死した従業員の解剖シーンです。

  

気の弱い方は、ご注意ください。

 

実にリアルな映像で、

  毒ガス事故の恐ろしさを

     画面いっぱいに表現します。

 

 (ここまで、毒ガス事故を告発しているのに

    後半が甘くなるのが、不思議です。

 

  2つの物語で、1つにしたような

    作品となっています。

 

  ゆえに、前半はAランク、

       後半は、Bランクになってしまったです)

 

是非ご覧ください。

 

良いドラマです。

 

  (「VIAVNT」のような、

    日本のドラマ下手が、

      分かってしまう作品です)

 

日本で絶滅?した社会派ドラマです。

 

是非ご覧下さい。

 

インド映画ドラマには、このドラマ以上の

  傑作がありますよ。

 

日本の原発にも

   このドラマのような隠蔽主義、

      事なかれ主義があります。

 

能登地震で、志賀原発の燃料プールの

  放射性汚染水が溢れ

   一時的に冷却主電源焼失しましたが、

     目茶苦茶危険な状態でした。

 

地震直後の政府発表は

 

官房長官 「(私の不正確な記憶ですが)

           何かあったという情報なし」

  でした・・・たぶん。

 

とんでもないことが起きていたのです。

 

燃料プールには、使用済み燃料が

 大量に冷却されていて、

   水が無くなると、大量の放射性物質が

      原子炉上に放出されるはずです。

 

  (原子炉は、何重にも壁で覆われていますが

    使用済み燃料棒は、

      屋内水プールに沈めているだけです)

 

危機管理、安全管理は、原子炉より甘いです。

 

  (テロするなら、頑丈な原子炉破壊より

    核燃料使用済みプールを壊すのが

       簡単で、効果てきめんですよ!)

 

ボパール毒ガス事故も

  危機管理、安全管理の甘さが

    原因でしたから・・・嗚呼、トホホ。

 

日本も、最近、

 工場事故、建築・土木事故が

  増えているもんなあ・・・嗚呼。

 

日本でボパール毒ガス事故が

  起きないことを願うだけです。

 

国民、住民が、何も知らないところで

  危険なことが身近に起こることを

    教えてくれるドラマです。

 

是非、ご覧ください。

 

娯楽要素もタップリあるので

  楽しめますよ!