ランク Aの下

 

日本映画界の

  全盛期の社長たちの権謀術策と

    大スターたちとの人間関係の柵を描いた

       誕生~1971年の映画通史です。

 

 

映画が持っている麻薬的な魔力に踊らされる

   人間達の物語を描いています。

 

ハイリスク、ハイリターンなのが

         映画界だと思いました。

 

  (昭和30年前後の映画全盛期は

     映画を作れば金になったようですが・・・)

 

映画は、テレビが出現するまで

   「娯楽の王様」でした。

 

この本には、数多くの人物が登場しますが

  どの人物も個性的で、押しの強い性格です。

 

映画会社の経営者たちは、海千山千の

   口八丁手八丁の山師のヤリ手たちで

      一括千金を得ようとして

        映画界の主導権争いをします。

 

まさしく、この本の醍醐味となっています。      

 

東宝:藤本真澄、小林一三(阪急)、森岩雄、田中友幸

東映:大川博、岡田茂、五島慶太、五島昇

大映:永田雅一

日活:堀久作

松竹:城戸四郎、大谷竹次郎、

新東宝:大蔵貢

 

前半は、映画経営者たちの競争を描き、

  後半は、映画界が斜陽になってから

     大スターの独立プロダクションの

        悪戦苦闘が語られます。

 

黒澤明プロ、石原裕次郎プロ、中村錦之助プロ

 三船敏郎プロ、勝新太郎プロ、

   円谷英二プロダクションなどです。

 

ズバリ、この本で語られるのは

  リアル映画よりも、

    日本映画界の栄枯盛衰に

      面白さがあります。

 

この本では、金と意地と、

  義理人情と裏切りの

     人間臭いドラマが語られます。

 

山本富士子、長谷川一夫(林長次郎)

  市川雷蔵などの大スターだけでなく、

    名監督たちも

      映画会社経営者の争いに巻き込まれ

         激しい浮き沈みを経ます。

 

  (経営者と女優との関係などの

     スキャンダルも少しだけですがあります。

 

   なお、私の大好きな京マチ子は

     大映・永田雅一の愛人だったというのは

       事実だったのでしょうか?

   

   この本には、触れられていないから

      フェイクだったのかなあ・・・)

 

そして、映画界のライバルとして登場した

  TV界との確執も、しっかりと

     この本では描かれています。

 

映画全盛期とは、昭和の全盛期でもあります。

 

全国の映画館数が、そのまま

  日本の経済力を反映しているようです。

 

考えて見るに、

  経営者も、監督も、スターも、

     全員が戦争経験者、当事者です。

 

生きるか死ぬかを潜り抜けた人間達は

   生きているだけでも儲けものという強さで

       戦後を生きていたのかもしれません。

 

  (三船敏郎は、特攻隊の若いパイロットの

      教官をしていました・・・)

 

とても読み易い本です。

 

登場人物が多く、目まぐるしく

  入れ代わり立ち代わりするので、

     混乱することもあるのですが

        細かいことは気にせず読みましょう。

 

  (混乱したら、登場人物表があるので

      参考にして下さい)

 

映画会社変遷図、配給収入、

  興行収入ランキングなどの表があり

     理解を深めることができるような工夫と

       読者への配慮と親切さを

         持っている本です。

 

  (このランキングだけでも楽しかったです。

 

    観た映画のランキングを知り、

      観そこなっている映画を

        再認識できます。

 

    「昭和の映画を観なくちゃ!」と

      思わせられます。

 

   まさしく、著者の

       「昭和の映画を観てね」

           という意図だと思いました)

 

映画以上の面白さがある本です。

 

  (まさしく、映画化、ドラマ化できると思うのですが

     当事者会社はしにくいはずですので

         ネットフリックスなら

            制作できるような・・・)

 

映画通は必読の本です。

 

是非、お読み下さい。

 

映画界を知る教科書です。

 

  (ピンク映画界、独立プロ界にも

     少ないけれど、ちゃんと

        記述しているのは

            著者の見識の高さです)

 

なお、もう少し言うなら、

   当時の映画会社や当事者の顔写真など

     画像が欲しかったです。

 

  (本が高くなるから無理か・・・トホホ、嗚呼)

 

映画で育った映画好きの著者が

       映画に愛を込めた本です。

 

家のTVで、ネットフリックスをよく観るのですが

  妻も私も、「映画はやっぱり、映画館よ」派です。

 

     (昭和生まれの性なのか・・・嗚呼)

 

若い人で、「隣が気になって映画館は嫌だ」

  というのは、映画が面白くないのか、

     若い人に集中力が少なくなっている

        のかもしれません。

 

最後に、著者には、

  ネットフリックスのような映画配信業界と

     映画界、TV界の栄枯盛衰を

        次作品に期待します。

 

是非、お読みください。

 

いい本には、人の人生と

   時代の歴史が描かれています。