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陸軍7人の参謀が

  太平洋戦争でいかに戦い、

     戦後の人生をいかに歩んだかを描き、

         参謀とは何かを

             論考した新書です。

 

 参謀:最高指揮官を補佐、助言するが

      部隊の指揮権は無い。

        まあ戦国時代の軍師です。

 

 

日本陸軍は、参謀教育に力を入れて

  リーダーを育てなかったようです。

 

私の解釈で極端に言うなら

   指揮官は戦略、参謀は戦術を具現化するかなあ・・・。

 

一般的に参謀になるコースは、

  (陸軍幼年学校)→陸軍士官学校→陸軍大学

      と、純粋培養で軍事教育されます。

 

参謀は、猛勉強で受験競争を勝ち抜いた、

   頭脳明晰な人間が歩むエリートコースです。

 

    (卒業時の成績で、出世コースが決まります)

 

戦争は、答えがない問題です。

 

ゆえに、あらゆることを想定し、準備し

   戦争が始まれば、臨機応変に対応し

       勝ち戦を目指します。

 

目的、目標が明確な戦争をしなければなりません。

 

  (日中戦争、太平洋戦争なんか

      戦争目的が曖昧過ぎて、失敗したようなもんです)

 

参謀は、戦争目的に対して

  具体的に軍隊を、どのように動員するかを

      計画、立案し、実行する立場となります。

 

しかし、最終決定は、司令官となります。

 

この本を読んで、思ったことは

  日本には、リーダーの資質を持った

    司令官がいなかったために、

       最終責任のない参謀たちが

          好き放題ができたようでした。

 

 (逆に、無能な?司令官が

    優秀な参謀を上手く利用したとも言えると

        この本は指摘していました)   

 

勝ち負けはともかく、

   リーダー性を発揮した司令官と言えば

      山本五十六だけかもしれれません。   

 

  (個々の戦術、戦闘で、リーダー性を

     発揮した司令官は幾人かはいますが

        戦略的な意味では、

           五十六だけのような気がします。

 

      ゆえに、アメリカは恐れたのでしょう)

 

  戦略:戦争の最終目的を考えて、計画、実行する

       (アメリカに、日本の要求を認めさせる)

  戦術:作戦を計画実行して、戦略を実現する

       (空母6隻で、真珠湾攻撃をする)

  戦闘:作戦を実現するための、戦闘行為の方法を

      計画、実行する

       (パイロットの猛訓練、魚雷の改良など)

 

この本では、頭脳明晰な参謀たちの限界も

       語られます。

 

つまり、戦争を考える時、

   政治と軍隊の関わり合いの難しさです。

 

文民統制ではない戦前の日本です。

 

軍が政治を動かすことが可能だった時代です。

 

本来、参謀は、戦闘行為にのみ関係するはずが

  政治に首を突っ込み始めて

     日本を破滅へと導いたのかもしれません。

 

この本に登場する参謀7人の何人かは、

   太平洋戦争と言えば登場する有名人です。

 

この本には、華々しく活躍しただけでなく、

   地味に、堅実に陸軍を支えた参謀も登場します。

 

頭が良くて、的確に判断し、決断力のある参謀たちです。

 

しかし、負け戦となりました。

 

この本の7人の多くは、自身の能力の高さから

     戦後も活躍しました。

 

  (敗戦の責任を感じて、静かに

     人生を歩んだ参謀もいますので、

         本を読んでね。

 

  立ち回りの上手さ、下手さで

       戦後の人生が変わっていったようです)

  

この本を読んで思ったのは、

  この本に登場しない、無能?な参謀たちが

     多くいたのではないかということです。

 

私が、教育界でよく思うのは、

  成功例より、失敗例に、

      本質が見えてくるように思うのです。

 

この本は、成功例が目立っているように思うのは

   私の偏見、嫉妬かもしれませんが・・・。

 

戦史は、成功例が多く語られて歴史に残り

  失敗例の当事者は、語ることが

     少なくなるためでしょう。

 

著者には、是非、役に立たなかった参謀を

  取り上げてもらいたい気がしますが・・・。

 

  (自分の欠点、ミスを語る人間は少ないから

      無理なような気がしますが・・・)

 

この本は、7人の参謀の人生を追いながら

   参謀という仕事、適正、特性、問題点などを

      論考しています。

 

参謀の意見がそのまま作戦になるかどうかは

   積極性、押しの強さ、ディベートの上手さが

       影響したようです。

 

一方では、議論、意見の調整、落としどころを

    見つけることもあったようです。

 

本来、参謀は、客観的で、的確な情報、実態を分析、吟味し

     実現可能な作戦を立案するはずが、

         精神論が優先した決定が多くなったのが、

            日本の悲劇です。

 

長い同質な軍隊生活からくる偏った認識が

    軍全体の判断を歪めてしまったようです。

 

この典型的な作戦が

   特攻隊作戦なのでしょう。

 

この本に登場する七人は、

   波乱万丈な人生をおくります。

 

その都度、その時々において

  真面目に、一生懸命に取り組みます。

 

戦争を生き残った定めから、

      戦後の人生を生きます。

 

本の主旨とは違うかもしれませんが

  参謀であったことで、

     戦後の人生を乗り切ったというより

         個々の能力の高さが

             大きかったと思います。

 

  (無能な参謀は、歴史に登場しませんから・・・)

 

本書の瀬島隆三、辻政信については、

    賛否が分かれています。

 

 (自分を、敵味方に関わらず、

    誰に対しても、売り込むことが

     上手かったような気がします。

 

  ゆえに、戦後も、華々しく活躍したような・・・。)

 

戦史が面白いのは

   戦争には、人間ドラマがあるからです。

 

この本のように、脇役のはずが

   主役を演じてしまったのが

       この本の参謀たちです。

 

一筋縄で語れない戦争を

   ドラマに仕立て上げたのが

       この本の参謀たちです。

 

社長を支える専務

    政治家に政策を進言するブレーン

       まさしく参謀そのものです。

 

 (岸田総理には、優秀な参謀がいないことが

     国葬決行で、証明されました。

 

    日本の未来は暗いです・・・トホホ、嗚呼)

 

この本は、組織の中で

  参謀=軍師=ナンバー2とは何かを

     考えさせられる本です。

 

参謀を通して、日本人論を

  語っている本かもしれません。

 

こんな人間が

  太平洋線を戦い、戦後を生きたということを

     知ることだけでも大切だと思います。

 

一度本屋で、少し立ち読みをすれば

   買ってしまうでしょう。

 

歴史、戦史、人間の面白さ、多様さを

   教えてくれる本です。

 

最後に、日本の軍隊組織って

  人間の能力、資質ではなく

    人間関係と軍学校の成績で

       動いていていました・・・トホホ、嗚呼。

 

これは、景気がいい時は良く機能するのですが

        悪くなると、奈落へ落ちるということです。

 

太平洋戦争が、証明していると思います。