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セウォル号沈没事件で、息子を失った母親と

  遺族たちが、絶望的な喪失感と向き合う物語です。

 

 

セウォル号沈没事故の予備知識を得てから見て下さい。

 

2014年 ソウルから済州島へ向かった旅客フェリー・セウォル号が

       事故により沈没し、修学旅行の高校生250名を含む

                   乗客乗員299人が死亡。

      事故後、引率し救出された教頭が自殺、

                         捜索隊員8名死亡。

 

  (修学旅行制度は、日本の朝鮮植民地時代の

          教育制度の名残りなのかもしれません)

 

韓国社会に大きな衝撃を与えた沈没事故です。

 

事故原因については、

  貨物の過積載、バラスト放出、航海士の無理な操船

    霧による出港の遅れ、船の改装によるバランス不安定化、

      避難、救出の遅れなど

         様々な要素が組み合わさっています。

 

  (小さな?変更や人為的なミス、判断が重なり、

                   大きな事故になりました。

 

    「神は細部に宿る」と言いますが

             「悪魔も、細部に宿る」です。)

 

事故後、詐欺、賠償金等で遺族への誹謗、自己責任者への裁判など

  今でも、韓国社会では、終わりの見えない事故となっています。

 

この映画は、遺族を、真正面から取り上げています。

 

愛する息子を失った母親は、

   喪失感に打ちひしがれて、鬱状態となっています。

 

事故の時、父親は仕事先のベトナムで

  ある理由から帰国できませんでした。

      (理由は映画を観てね!)

 

幼い娘と母親だけで、事故の苦しみを

      孤独に耐えるしかありませんでした。

 

遺族会へも距離を置きながら

   癒されぬ心を抱えたまま、生活をします。

 

母親と娘は、帰国した父親と再会し

  少しずつ交流が始まりますが

     母親の心は、沈んだままです。

 

まわりの人や遺族会が

  無くなった息子ための誕生日会を開きます。

 

その会へ出た母親は

   あの沈没事故で、息子に何が起きたか?

      なぜ母親が、頑なに心を閉ざしたか?

          その理由が明らかにされます。

 

この映画のハイライトです(少し涙ぐみなすぞ)。

 

ノーメイクで、鬱で苦しむ母親役を名演します。

 

  (母親役のチョンドヨンは、演技賞を受賞)

 

特に、雄叫びを上げて泣くシーンは

   観ているだけなのに、

      心を締めつけられます。

 

  (役者根性を見せつけられます)

 

不条理な死が、人の心を

  押し潰してしまう現実を教えられます。

 

PTSD(心的外傷後ストレス症候群)の映画でもあります。

 

重い暗い映画です。

 

遺族会への社会の目の冷たさ、妬みなども

  描かれています。

 

韓国映画は、「泣き」の映画です。

 

韓国の「恨(ハン)」を描いている映画です。

 

   (恨(ハン)」:痛恨、悲哀、無常観などで

             韓国朝鮮文化、精神の土台を

                つくっているものだそうです。)

 

脇役陣も、若手からベテランまで、堅実な上手い演技をします。

 

  (娘の子役は、上手すぎます)

 

父親役のソルギョングといえば、

  韓国映画 「パーマネントブルー」「オアシス」を

    是非観て下さい!

 

  (これらの映画のイメージが強すぎて

          最初、気が付きませんでした。)

 

地味な渋い映画です。

 

この手の映画は、遺族会などへのおもねった

  映画になりがちなのですが、

    ちょっとしたエピソードを重ねて

      遺族たちの置かれた

        厳しいリアルな現実を

          描くことに成功しています。

 

真面目な映画です。

 

今でも様々な社会問題を起こし続けているセウォル号事件ですので

  映画化するのは、時間を経る必要があったのでしょう。

 

是非ご覧ください。

 

東北大震災、集中豪雨などの遺族の

   喪失感の大きさを教えてくれる映画です。