ランク Aの下~Aの中
ポーランド人亡命作家の実体験?から生まれた
小説をモノクロ画像で映画化しています。
好き嫌いが分かれますが
私好みの映画です。
白黒映像が美しい。
科白は極めて少ない
約3時間の長編映画です。
ナチスの迫害からユダヤ人の少年を守るために
両親が、東ヨーロッパの田舎の叔母の家へ預られけます。
(映画の舞台は、東ヨーロッパの
「とある国」という設定で進行します)
20分程度のエピソードを重ねながら
物語が進行していきます。
虐待、殺人、自殺、強盗、DV、人種差別
淫乱、迫害、宗教、労働、搾取、嫉妬、飢え、寒さ
幼児性愛、強姦、戦争、略奪、暴力、虐め、など、
ありとあらゆる人間の醜悪、善意、営みを
少年は、過酷な旅の体験しながら、
成長?し、生き残ろうとし
両親を探し求めます。
過激なロードムービーでもあります。
第2次大戦中の東ヨーロッパの
貧しい農民、古い伝統に縛られた小さな村
盗賊のコサック、独ソ軍など
その時代を見事に再現しています。
農民の衣装、家財道具、民具、木造家屋
農具など、驚くほど細部にまで拘って
再現されています。
また、農民、村人の生活、風俗なども
完璧に再現しているので
物語のリアル感が増して
追体験してる錯覚に陥ります。
演技力のある俳優陣を揃え、
上手いメイキャップと衣装で
演じている土臭い農民たちが
ドキュメンタリー映画を
観ているような世界となっています。
(俳優陣は、美男美女?ではなく
個性的で醜悪?な人物を
見事に演じています)
人間、家畜を残虐に扱うシーンが連続します。
白黒画面なので、直接的な刺激は弱いですが
逆に、より残酷な演出をしているのには
驚かされます。
(気の弱い方は、目を背けるでしょう)
どのエピソードも、寓話的な内容を含んでいますが
人間の底知れぬ不気味さを
際立たせた話となっています。
(実は、ナチスのユダヤ人狩りに
協力したポーランド人は多かったです。
多くの東ヨーロッパの国民が
ユダヤ人狩りをし黒歴史がありました。
ゆえに、映画では、特定の国と設定しないように
架空言語(エスペラント語のような)を
科白に使っています。)
東ヨーロッパの美しい自然と厳しい冬の中で
貧しく生活する逞しい農民が描かれます。
生と性にどん欲な姿も描かれます。
戦争で翻弄される庶民も描いています。
映画に見慣れた、通の方には
とても刺激的で、面白く見ることができます。
(無言劇と言えるような映画ですので)
カラーより、白黒画面の方が
美しく、より表現が広くなることを
教えてくれる映画です。
日本人には、ユダヤ人差別が身近でない分だけ、
傷つかずに観ることができますが
ヨーロッパの普通の庶民こそが、
ホロコーストに協力していたゆえに
ヨーロッパの人々は、この映画で
罪の意識を感じているかもしれません。
美しい風景の中で、人間の欲望が描かれた映画です。
この映画を観て、日本の戦災孤児の人生と
重なるものを感じました。
是非ご覧ください。
ネタバレになるので書けませんが
ラストシーンで、少年の新しい旅が
始まります。
私の好きな映画タイプです。
3時間の映画ですが、
時間を忘れて観終わりました。
(ショートエピソードの連続なので
観易いですよ。
ダラダラした冗長な映画ではありません。
いつも緊張を孕んでいる映画です)
原作者の小説家は
映画のようにポーランドユダヤ人で
ホロコーストを逃げ回って生き残り
共産圏ポーランドから
アメリカに移住、亡命し
小説家となります。
映画「レッド」に出演したりしますが
自殺します。
東ヨーロッパの黒歴史を描いたため
フィクション、ノンフィクション論争など
センセーショナルな問題を起こしました。
日本訳は「異端の鳥」となっていますが
「THE PAINTED BIRD(塗られた鳥)」が
原題で、映画の中に、象徴的な
エピソードが登場します。
(ユダヤ人として、違う人種とされた人間が
どのようにされたかを
色を塗られた鳥の運命が象徴します)
良い映画です。
示唆に富む、哲学的な、シュールな映画です。
映画通は、是非ご覧ください。
最後に、ミリオタ的には、
とても良く時代考証がなされていました。
「シュトルヒ」「ヤコブレフ」が登場したのには
驚きました!
この監督は、ミリオタに間違いないです。
「時代考証に手を抜いた映画に、名作は無し!」
是非ご覧ください。
レンタル屋で借りて観ました。
