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1965年(昭和40年)、インドネシアでクーデターが起こり

   50万~200万人のインドネシア人が

       インドネシア人により裁判もなく、虐殺された。

 

この本は、カンボジアのポルポトのように、

    インドネシア人同士が、虐殺を行った事件の

         ノンフィクションです。

 

観光地で人気のあるバリ島が、

    最も激しく虐殺が行われたようです。

 

デビィ夫人の夫・スカルノ大統領時代に起きた大虐殺です。

 

1965年頃は、米ソ冷戦時代でもあり、

    ベトナム戦争が本格化していた時代です。

 

虐殺事件の直接的なきっかけは、

   親スカルノ派?による1回目のクーデターが起り

       反スカルノ派のインドネシア陸軍将軍8人の暗殺です。

 

クーデターの理由は、

   「スカルノ大統領(デビィ夫人の夫)を、インドネシア国軍が

     排除しようとしているのを防ぐため」

 

このクーデターを、利用して、鎮圧したのは、

    スハルト少将(後に、スカルノの次に大統領になる)です。

 

スカルノ大統領(「デビィ夫人の夫)は、

   親共産主義で、毛沢東中国、ソ連、北朝鮮と仲が良く

      ベトナム戦争中のアメリカは、快く思っていなかった。

 

オランダ、日本植民地からのインドネシア独立の英雄であるスカルノは

   国民から絶大な信頼を得ていたが、

      親共産、民族独立を重視したため

         世界から孤立し、アメリカなどからの経済援助が少なく

            経済は落ち込み、国民の生活は苦しくなっていた。

 

スハルトを始め、国軍主流派は、反共産で、親アメリカである。

     (スカルノとスハルトが紛らわしいので注意してね)

 

スカルノが親共産なので、国民の間には

    インドネシア共産党(PKI)などの共産主義組織が

        数多く存在した。

 

スハルトなどの国軍は、インドネシアが共産国家になることを

      怖れていた。

 

  (インドネシア共産化をアメリカが一番恐れていたが、

     日本は、戦争の賠償援助、ODAなどで

        インドネシアが最大の貿易国だったこと

           デビィ夫人の事などで、

        インドネシアを率いるスカルノ大統領には、親近感があった)

 

スハルトなどの国軍(反スカルノ)は、

   将軍暗殺クーデターを利用し、

       PKI(親スカルノ)等に対する大弾圧を始めた。

 

虐殺を行ったのは、国軍ではなく

   国軍は、一般市民の中に「アルゴジョ」という組織を作り

      中国人華僑、共産主義関係者の虐殺が始まった。

 

インドネシア全土で、虐殺が始まり、

    死体が、町中、田舎の村にあふれだした。

 

    虐殺された人数は不明です。

       (50万~200万が虐殺されたとか・・・嗚呼)

 

この本には、虐殺実行者のインタビューがあるのですが

   悍ましい内容です。

 

普通の市民が、殺人者にさせられる異常な世界が、

    生み出される事実を

         この本で教えられます。

 

実は、この本では、一切記載がなかったのですが

  傑作ドキュメンタリー映画「アクト・オブ・キリング」

           があります。

 

  この映画は、インドネシア大虐殺の実行者自身に

     どのように虐殺をしたかを再現させる

        ドキュメンタリーです。

 

 TUTAYAのレンタルにあるので、ご覧ください。

 

   何百人と殺した男が、

      何の罪も問われず、

         インドネシア社会で暮らしている現実を

              教えてくれる恐ろしい映画です。

 

  寓話のように描かれるのですが

     人間のどうしようもない罪深さを教えてくれる映画です。    

 

アメリカ、日本などの西側諸国は、

  インドネシアの共産化が無くなるので

      大量虐殺を知っていても

           結果的に、何もしませんでした。

 

本来虐殺を止めるべきだった共産国家の中ソも

   自分の国家の利益を優先し

       ほとんど何もしなかった・・・嗚呼。

 

  (本を読んでね!

     国家間の駆け引き、冷淡さがよく分かりますよ)

 

そもそも、1回目のクーデターをしたグループの

   黒幕は誰か?が謎なのです。

 

クーデーターの翌日には、反スカルノ派が鎮圧し、

   報道規制が行われたので、

       何があったのかが、さっぱり分からず、

           反スカルノ派の「PKI黒幕説」が

               公式見解となった。

 

      ※PKI:インドネシア共産党

 

反スカルノ派のボス・スハルトが、

    クーデター後のインドネシアを支配してゆきます。

 

   (翌年に、スハルトが、2回目のクーデター起こして

       スカルノを追い落とし、

           スハルトが大統領になります。)

 

スハルトは、時間をかけて、親共産のスカルノを追い詰めて

       インドネシアの政権を奪うのです。

 

著者は、残された資料や

  虐殺した側、された側の両方からインタビューをして

      事件の真相を知ろうとします。

 

  (デビィ夫人も、重要なインタビューで登場します。

     追い詰められていく夫・スカルノ大統領のために

         必死に尽力を尽くし、最後は、

            出産のためという理由で、

               インドネシアを離れて、

                   日本へ帰国?します。

      政情不安で、何が起こるか分からない

            インドネシアだったためです。

     なお、夫・スカルノは、デビィ夫人との子供を

          見ることなくインドネシアで失意のうちに

              亡くなります。) 

 

私は、インドネシアで大虐殺があったことは知っていました。

   最初の理解は、

      「中国人華僑を、インドネシア人が民族差別から

           大虐殺をしていた」

 

この本を読んで、初めて知りました。

   共産主義関係者も、徹底的に虐殺し

      インドネシアの共産化を防ぐためだったのです。

 

インドネシア史、当時の世界情勢を踏まえ

   インドネシア大虐殺が、とても良く分かる本です。

 

著者の知性の高さが、

  私のような素人にも分かることができる

    読みやすい文章になっています。

 

バリ島へ行かれる方は、是非お読みください。

 

観光地の陰に、悲惨な歴史が隠れていることを

   教えてくれる本です。

 

南洋の眩しい光の元には、

   夥しい血が流れた海岸があることを

         教えてくれる本です。

 

東南アジアを勉強する方は、必読の書です。

 

今も、似たようなことが、大小様々な虐殺が

   行われているのが、アジアです。

 

この本には、母国インドネシアを追われた

    人々の話もあります。

 

国家、軍とは、人を幸せにしないシステムが

  あることを教えてくれる本です。

 

普通の人びとが、殺人者になることを教えてくれます。

 

是非お読みください。

 

デビィ夫人が、只者でないことを教えてくれます。

 

私の町でも、インドネシアの方々をお見掛けすることがありますが

    親族には大虐殺の関係者がいるはずです。

 

インドネシアでは、55年前の大虐殺は

    とても神経質な、微妙な問題があるので、

        注意して下さい。

 

なお、日本は、スカルノ時代、大虐殺後のスハルト時代とも

   友好関係を続け、経済発展を助けました・・・嗚呼。

       商売のためなら、人権を無視して、

          無節操になるのが、

             日本政府の伝統のようです・・・トホホ。

 

なかなか、取っ掛かり難い内容の本ですが

   読めば、言葉は悪いですが、面白く読めます。

 

  知識と知性の塊の本です。

 

騙されたと思って、是非読んでみて下さい。

 

現代史の面白さ?を教えてくれる本です。