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太平洋戦争中、八重山諸島(石垣島、波照間島など)において、

      日本軍の強制移住命令により、

           マラリア感染で3600人の沖縄住民が疎開死した。

   マラリア:熱帯、亜熱帯の病気

         マラリア原虫をもった蚊に刺されると発症。

         発熱、頭痛、嘔吐などを発症し、

         治療(キニーネなどの薬)をしないと重症化し、

         様々な合併症を併発して、死ぬ感染症。

         

この戦争マラリアを、女性ジャーナリストが、

   波照間島で、8ヶ月間、島民と生活しながら

        事実を掘り越していくドキュメントです。

 

石垣島をはじめ、八重山諸島へは、

    アメリカ軍は空襲をしたけれど、

         結果的には、上陸しなかったので、

            沖縄本島のような地上戦はありませんでした。

 

著者は、西表島へ強制移住された波照間島を中心に

           マラリア戦争の実態を調査してゆきます。

 

  1945年3月から、波照間島から西表島への強制移住が始まり

       終戦後に波照間島へ帰島するが、

           マラリア感染症の死亡が続きます。

   最終的に、島民の1/3(552人)が、マラリアで亡くなりました。

 

        波照間島 → マラリアがない島

        西表島   → 全島マラリア感染地帯

 

島民は、西表島がマラリア感染の島だったことを知っていたが、

       軍命に逆らえず、移住しました。

 

  (石垣島では、マラリア感染地帯の山岳地帯へ強制移住させられます)

 

戦争マラリアの体験者は、80、90歳です。

 

証言を記録し、調査できる限界でしたが、

    親兄弟姉妹を亡くした深い心の傷を持った年寄りたちは

        東京から来た戦後生まれの若い著者に

             その苦しみが分かるわけでもなく

                 語ることはほとんどしませんでした。

 

波照間の方言「ベスマムニ」でこそ、

    戦争マラリアの苦痛、哀しみを語ることができても

        大和言葉(まあ標準語)では、言い表すことはできないという

             言葉の壁もありました。

 

    (ベスマニムの言葉に、対応するピッタリした標準語の言葉がないためです)

         通訳を介して、島民と会話する世界があったのです)

 

著者は、単身、波照間島に飛び込み、

      サトウキビ畑で働き、三線を習い、島言葉、島唄を憶え、

            島民たちの距離を詰めてゆきます。

 

戦争マラリアの調査のためだったはずが、

    いつしか、島民として認められてゆく中で

         自然と語ってくれるのを待ちます。

 

この辺りの、著者と、島民たちとの心の変化、交流が、

       この本の魅力でもあります。

 

島民の戦争マラリアの悲劇、哀しみ、怒りを、

    伝え残しておくことを、

         著者は、託されるようになっていきます。

 

この本で、涙ぐんでしまうので、ハンカチが必需品です。

 

著者は、戦争マラリアを引き起こした歴史的事実も

         追求してゆきます。

 

誰が命令し、誰が実行したかです。

 

日本軍の命令なのですが、

    命令書は残ってなく、口頭で、指揮官に伝達されました。

 

  そのため、証拠がないということで、

      戦争マラリア被害者には、一切の補償がないままです。

           島民の代表が、努力したのですが

                厚生労働省は、

                    慰霊碑を作って、終わらせました。

 

   慰霊碑には、「軍命」と言う言葉を彫ることを

       国は認めませんでした。

 

   (安倍政権と同じ発想です。

        文書の書き換えを指示していない、招待状を送る相手を指示していない

              定年延長を指示していない・・・直接的な証拠がないでしょう!・・・トホホ、嗚呼)

 

波照間島の移住を、口頭で命令され、実行したのは、

      陸軍中野学校出身の、一人の軍人でした。

 

     (陸軍中野学校の沖縄戦については、

          「証言 沖縄スパイ戦史」を読んでね。ブログ記事にも書いてます)

 

彼は戦後も生き残り、戦争マラリアの証言を残していますが

      その内容は・・・本を読んで下さい!

 

        (ここで書くと、本の面白さを、ノンフィクションの核心を

               壊してしまうので・・・読んでね)

 

日本軍が、収容所のように、強制島民移住をさせたのは・・・ 

 

      1、食糧確保(島民の家畜、食料を奪ことができる)

      2、島民がいては、戦闘の邪魔になる

      3、島民から、日本軍の軍事情報が漏れるのを防ぐ。

          スパイ防止(沖縄からは、ハワイ、アメリカへ多くの移民が輩出していたので

                    英語が話せる、アメリカへの親近感等への恐れがあった)

      4、島民を1か所に集めれば、スパイ防止の監視ができる。

      5、アメリカ軍上陸後に、切り込み部隊、ゲリラ戦に活用できる

      6、「虜囚の辱めを受けぬ」という集団自決が可能となる。

       7、沖縄差別

 

    これらが目的だったようです。

 

この本は、波照間島の戦争マラリアを中心に書かれています。

 

島民の生き方、人生観、風土、自然の美しさも良く描かれています。

 

この本を読んで一番強く感じたのは、

    日本のジャーナリズムの先頭を走っているのは、

           女性ではないかと言うことです。

 

男女の区別はないはずですが、

    「女の強さ」と「男の弱さ」が、増大しているように感じました。

 

  (賭け麻雀にあるように、男はシガラミに弱いんだなあ・・・トホホ、嗚呼)

     

       日本だけの現象だけでなく、世界中です。

 

本の後半では、沖縄基地問題が描かれています。

 

沖縄本島だけでなく、八重山諸島の石垣島、波照間島、与那国などへ

    中国からの尖閣列島防衛のために、自衛隊が駐屯し始めました。

 

日本のためと言いながら、アメリカためでもある最前線部隊です。

 

戦争マラリアの教訓は、風前の灯火です。

 

本土日本人である著者は、この本で、映画で、

     犠牲者の声を、家族を失った沖縄人の声を、

            伝えようとしている本です。

 

この本は、「忘れ去られた沖縄人」への抵抗の本です。

 

是非、お読みください。

 

沖縄感を大きく変える本です。

 

       「軍隊は、国民を守らず、国体を守る」

 

 

最後に、石垣島、西表島を旅行したことがあります。

 

西表島を旅行した時、

   ガイドさんが、ジャングルに覆われた原野の前を車が通った時

 

ガイド  「ここに、戦時中に、他の島から移住してきた部落があって、

          マラリアでたくさん人が亡くなりました・・・」

 

観光地でも、風光明媚な場所でもないところで

    ガイドさんが突然語りだしたのを、

         不思議に思ったことの理由を

              この本で明確に知りました。

 

西表島の島民の方々も、忘れてはいけない

     戦争の悲惨な歴史を

         後世へ伝えているようす。  

 

 

最後の最後に、遅ればせながらでも

 

    戦争マラリアの被害者の方への

          謝罪と補償があってもいいんではないでしょうか?