ふーくんとステーキを食べた数日後、彼は故郷に引っ越して行った


大学の卒業式にこちらに戻る事もしないと言っていたから、もうなかなか会う事はなさそうだ


やっぱり春は嫌い


数週間後の彼らの大学の卒業式の日には

私は1日バイトを入れている


家にいたら寂しくなって泣きそうだから、誰かと一緒に働いていた方がいい


やっぱり春は嫌い


色んな事が動き出して心がついていかなくなる


心の一部が引きちぎられる


明日でケイくんもバイト最終日


もうだいぶ気持ちの整理はついたけど


やっぱり春はやだ


ふーくんほど仲良くはなれなかったけど、ケイくんの事も大切に思っていたし、何ならすごくドキドキさせられた


ケイくん


「僕達1ヶ月も出あってなかったんですね」


「17時過ぎたのにまだ一緒にいられるんですね」


「早く帰らなくても大丈夫ですか?僕責任取れないですよ?」


「映画一緒にいきましょうよ」


「結婚までに何人の人と付き合ったんですか?」


「何色が好きですか?」


「一人暮らしした事はありますか?」


「誕生日の色って何色ですか?」


「僕の手冷たいんですよ、私さんの手は冷たいですか?僕の手触ってもいいですよ」



知り合ったばかりの時に本当に色んな事を質問されたから、何だか本当にドキドキさせられて、ケイくんの事が気になって仕方なくなったんだよね


本当、何だかね、もう顔からね、火が出てたよ


時々目が合うとじっと見つめてくるし、どうなってんだと思ってた


まぁ、からかわれただけだったのかも知れないけど


結局、ケイくんが高校生の時に1番好きだった小説のタイトルを教えてもらえなかった


色々もっと話したかった


吸い込まれそうになるあの目をもっと見ていたかった


やっぱり春はきつい


ケイくんの仕事最終日

バイトは私と2人、ケイくんは午前中のみ

他になぜか助っ人として4人の役員のおじさまが入ることになった

結構偉い人達

ケイくんは最終日という事もあり、ハキハキと返事をしたり、真面目に仕事をしている

私にも優しく接してくれて、仕事がとてもやりやすかった

役員のおじさま達も、ケイくんの仕事ぶりをとても褒めてくれて、私も鼻が高かった

あっという間に3時間が過ぎた


ケイくんのために用意しておいたお菓子とメッセージを添えて渡した


ケイくん

「お疲れ様でしたー、ありがとうございました」


少しぶっきらぼうに受け取ったお菓子を持って足早に階段を登りながらケイくんは言った


その態度に気持ちが折れそうになりながらも、改まって挨拶したくない気持ちも分かる気がした


メッセージカードには


本当にお疲れ様でした

今まで本当にありがとうございました

どうぞお元気でいてください

ケイくんの幸せをずっと祈っています

サッカー大好きなケイくんへ


私より


本当素敵な時間をありがとう