ふーくんへの手紙を明るい気持ちで書き上げたのは、約束の前の日だった

丁寧に封をして、一緒に渡そうと思っていた化粧品の袋に入れた

色んな気持ちの整理がついた

笑顔でみんなを見送れそう


お肉を食べる約束の日

ふーくんとの待ち合わせ5分前にコンビニの駐車場に着いた

ガソリンも満タン、洗車してピカピカの車

お腹も減っている

コンコンと窓をノックしてふーくんがドアを開ける


ふーくん

「こんにちはー」


私「こんにちはー今日はよろしくねー

 今日も筋トレ行ったの?」


ふーくん「行きましたよー」


私「さすが!じゃあ早速ステーキ食べに行こう!」


ふーくん「ウェーイ」


軽いノリのまま車を走らせる


そういえばふーくんとは買い物を2回くらい手伝ってもらった時に車に乗ってもらったっけ

そんな事を考えていると、話好きのふーくんのマシンガントークが始まる

趣味のゲームの話や車の話、引っ越しの準備が順調に進んでいる話

ストイックな筋トレの話し

毛穴ケアの話

車でレストランに移動する15分くらいの間にどんどん話す

大学生活の中でほんの少し思い出が増やせたらといいなと思って、買い物に一緒に行こうと誘った事から色んな話をしてくれるようになっていた


何だかんだ私の方がたくさん思い出をもらって、元気をもらっていた気もする


あの時の買い物はふーくんとケイくんと3人で行ったっけ


レストランについて、早速ステーキを注文した

店員のお姉さんにもハキハキ答えるふーくん


ふーくん「ティーボーンステーキのレギュラーで、ミディアムレアでお願いします

ライスで

ドリンクはジンジャーエールで!」


私「私はシャトーブリアン250gのレギュラー、ミディアムレアで付け合わせはパン

飲み物はジンジャーエールで」


2人とも目をキラキラさせながら運ばれてきたティーボーンステーキ600gとシャトーブリアン250gにソースをかけてもらう

ソースが飛び跳ねないよう紙ナプキンで防御体制をとる


美味しそう美味しそうと2人でいいながら、ソースのはねるのを見ていた


ソースの飛び跳ねがおさまった


それでは早速一口目


2人とも

「美味しいー!」

しか出てこない

美味しいものをただひたすら美味しく食べる時間


きめ細かいシャトーブリアンのステーキをはじめて食べながら、ケイくんとも食べたかったとつい思ってしまった


どんどん気持ちがすれ違っていくような寂しさを、ケイくんとの間で感じていたけど、それはそれで仕方がない事なのだろう


思ったよりお肉をペロリと食べてしまった


ふーくんも大満足


新社会人として頑張るふーくんへのエールのお肉


少し甘いものでもお土産にと思って、有名なビーカープリンを買いに行った


4年も住んでいてまだあのプリンを食べたことがないなんてもったいないと、半ば強引に勧めたら甘党のふーくんは大喜び


ふーくん「プリンは好きなんで!」


私「良かった、甘いものならなんでもいいわけじゃないもんね?栗は食べられないんだっけ?」


ふーくん「栗は無理です」


偏食でおでんもトマトもダメとか言ってたもんね


誰かの好きな食べ物を覚えていくのって、その人の事をどんどん知ることになって私はとても嬉しい


ふーくんはお肉とご飯があればOKで甘党

ラーメンはつけ麺率が高い


ケイくんは海鮮が好きでお肉も好き、甘いものはほどほどでラーメンとブラックサンダーとスイートポテトが好き


私は梨といちじくとイチゴが好き 

梨といちじくに関しては浴びるほど食べたいくらい

いちじくは食べすぎると下痢になるので、本当は1日3つから5つくらいまでが身体にはいいらしい

肉とマグロやサバが好き

野菜はサラダや煮込み料理が好き

モンブランが大好き

外食をほとんどしなかった私だけど、私の好きな食べ物について答える時はこう言ってた


そして、少しでも食べられそうな機会があれば外食をするようになった


人生一度きりだから、食べられる時に食べたいものを食べておこうという風に考えが変わったのも、ふーくんやケイくんとの会話のおかげだから2人には本当に感謝している


人生観が変わるきっかけは本当に些細なことで、気づけるかどうかで変わっていくんだと思う


食べる事でストレスを感じたくないとか、意味ない事をしたくないとか大学生の意見をきいて、何でも好き嫌いしちゃダメとか何にでも意味があると育ってきた私にはちょっとカルチャーショックだった

私が自分の視野の狭さにも気づけたと思う

こんな感じと勝手にイメージしてたり、他の視点で考える柔軟さを2人から教えてもらった


プリンも買えて、待ち合わせたコンビニに戻る間、ずっとふーくんは話し続けていた

これがこの人生でふーくんとの最後の時間になるかもしれないけど、いつものたわいのない会話


ふーくん

「じゃあありがとうございましたー」


私「ありがとう、元気でね!」


さらっと別れて、さらっと手を振って、きっともう会うことのない背中をコンビニに入るまで見送った