夫と上の子のメッセージのやり取りは続く
横目で内容を見ていると、夫の子供の頃の辛い経験から辛い目に合わないように、泣かない子にしたかったから殴ったり叱責したと書いてあった
よく泣くと感情が爆発して思考能力がなくなるから、何があっても泣かない子にしたいと言っていた事を思い出した
夫独自の子育て論を聞きながら、泣かない事にこだわりすぎて怖いし、そんな事うまくいくわけないと思っていた
もちろん泣くべきでない場面で泣くのは恥ずかしい事もあるだろうけど、個人の感情までコントロールしないと気が済まない子育てってなんなんだろう
暴力を振るってまですることではない
夫は、1人の人間を育てる気持ちで子育てしてないのだろう
兵隊のような強靭な精神力を持った、武器のような人間を育てたいのだろう
自分が本当はそうなれないから、そういう人間に育てたいのだろう
夫の虚栄心は強さか
強くなりたい!泣きたくない!と上の子が言ったことはない
上の子
「パパってこんな幼稚な人だったんだね
今まで怖くて強いと思っていたけど、こんな奴に説教されていたと思うとがっかり
何かもうあんまり怖くなくなったかも、これなら帰ってきてもいいかもね」
私「大丈夫?」
上の子
「うーん、やっぱりまだ会いたくないかな
センター試験終わったら帰ってきてもいいかな」
そりゃそうだと思いながら、夫の帰宅予定がセンター試験の日になってしまった
メッセージのやり取りが終わった
最後に夫は
「ごめんね」
とメッセージを残した
上の子はそれには応えない
上の子は少しすっきりした顔になった
センター試験まで後2週間
どうか平穏無事に過ごせますように
あれから11日が経った
お正月も鏡開きも子供達と仲良く過ごした
突然会話を切り裂くようなひどい暴言を言われずに済むってほんとに平和そのもの
後少しで夫が帰ってくる
夫は、この休みに食べたカップ焼きそばの器の写真を送ってきた
カップ焼きそばの器を13個並べている写真だった
好きなもの食べてるんなら構わないけど、よほど暇なのだろう
少し呆れながらも布団に入ってから夫との子育てに対する考え方の違いを思い出していた
強い子にしたくて殴ったり暴言を吐いたりする夫に、反対しても私の子育ては甘いと叱られた
私の子育ては、甘くはないけど、厳しくもないと思うが、子育てに正解はないからなんとも言えない
できるだけ普通っぽい子育て論や育児書を読んで、発達心理学や児童学概論とか大学で勉強しながら子育てを手探りでしていたのに
子供第一に安全と健康を考えていたら、先回りして色々してしまうことは確かにあるから、そこを甘いと言われているのかもしれない
予め準備して怪我や病気にならないよう部屋を整えたり食事のメニューを考えたり、子供達が元気に学校へ行きやすいよう気を配って生活していた
その上、夫の仕事関係の会の役員まで任されて、タダで2年も働かされた事もある
できた嫁だと自慢している夫に嫌悪感を持つようになったのはあの頃からだ
支えてあげようという気持ちがあったのは確かなのに、何年も当たり前のようにボランティア活動をしなければいけない事は苦痛になっていった
夫の役職によって会のボランティアをしなければならないという今時珍しいルールだった
どうしても嫌な奥さんは引っ越しをせず、その勤務先についていかない選択をするそうだ
私は、引っ越した後にこういう仕事をしてもらうと後から聞かされたから逃げられなかった
予め聞かされていたら、引っ越しをやめて実家に帰ってしまう選択肢もあっただろう
口だけで感謝してるというのは、言うだけマシなのかもしれないけど、行動が自分勝手で家族の団欒や時間をめちゃくちゃにするから、夫から本当に感謝されてるとは思えない
私は、夫にも子供にも甘かったのかもしれない
色々秘書のようにまわりで手を貸しすぎた
家族はチームだと思っていたけど、私だけ搾取されているような気持ちになっているのは、私が望んでないことまで任されたからだろう
我慢しすぎたら急に死ぬと私は信じてる
思ったより我慢しなくていい事はいっぱいあるから、無駄に我慢したくない
そう思えるようになったのも、今のバイト先で今まで出会わなかった価値観の人達との交流のおかげだ
広い視野で多角的に考えることを意識するようになったことで、少し生きやすくなった
本当に馬鹿みたいに夫の言うこと聞いてあげてた
我慢するのが当たり前で、我慢している事が普通のことだと思ってた
食費の予算が余っていても、遠くの激安スーパーにわざわざ行ってガソリンと時間いっぱい使って、やっすい食材だけで生活してた事もあった
こんなに1番安いものだけ食べていても大丈夫だけど、そこまで節約してお金だけ残して死ぬかもと思うと馬鹿らしくなった
お金をできるだけ貯めて死ぬ生き方はしたくない
そう言えば夫の買い物の仕方は独特だ
買いたいものがあるのに、予約もせず、何回も店に足を通い、やっと入荷されたのを高いか安いか調べて買わないみたいな事を繰り返す
電話してから行けばと言えば、人と話すのが恥ずかしいから嫌だと言う
しかも1人で買い物に行くと寂しい人だと思われたくないと、私も一緒に連れて行こうとする
女を連れていかないと体裁が悪いと言う考え方が、私には無理だと思った
買い物くらい1人で行けばいいのに
何回も無駄な店通いをさせられてから、2度と夫とは買い物に行かないと決めている
コストコすら一緒に行きたくない
混んでいる駐車場で待つ事ができない夫は、混んでいたらすぐに帰ってしまうから何も買えない
必要なものはネット通販で買ってと言っても、買い方が分からないから私に買ってとせがんでくるのもゾッとする
今時ネット通販で買い物もできないなんて煩わしい
結局クレジットカード番号を入力するのが情報を抜かれるから怖いという理由で、私のIDでログインして私のクレジットカードで買うことになった
私の情報は抜かれてもいいらしい
夫は私を家政婦で部下だと思っているのだろう
私に仕事以外の生活のほぼ全てを任せている事で、快適な時は文句はないが、困った時には責任は私にとらせているのではないか
だから私の目の前で私に罰を与えるように、子供達を殴ったのだろうか
スマホの画面が光る
カレンダーが週末が近づいていると私に教える
後数日で夫が帰ってくると思うと、動悸がする
頭がジワジワ絞られるような鈍い痛みがする
宝くじが当たったり、就職が決まったり、夫が急死したりすればこの結婚生活から逃れられそう
私も夫に生活費を頼る事をやめて、私のお金だけで生活できるようにしよう
喧嘩した時に夫から言われた
「悔しかったら同じだけ稼いでから文句を言え!」
本当によく聞くセリフを夫から聞くとは思わなかった
あの時は本当に悔しくて、同じだけ稼ぐなら風俗でもなんでもすると言った私を余計なじってきたっけ
同じだけ稼いで子育ても何でも自分で完結できるなら、とっくに別れている
あの時は悔しくても、ほとんど家にいない夫の事より目の前の子育てを泣きながらするしかなかった
今はその理不尽さを見ないふりができなくなってる
やっと私の目が覚めた
