何となく家にいると不機嫌なのは、お互い様の私たちだが、一応子供の前では普通っぽくしているつもりだった。
そんなウィークデーの夕食後、衣替えをしながらファッションショーをはじめてしまいそれなりに楽しんでいた私に、夫が言った。
夫「好き好きしていい?」
そう言って乳首が透けた下着とトランクス姿で私にハグを求めて近づいてきた。
お腹はぷっくりと出てみにくく太った姿で。
私「嫌だけど、今忙しいから」
出来るだけ普通っぽく言ったけど、みるみる夫が不機嫌な顔に変わる。
夫「何で俺の事嫌いになったの?好き好きしたいのに!」
私「私は今忙しいし、嫌なんだけど」
夫「離婚したいのか?話し合う?」
絡みつくような口調で夫が言う。
その視線から私を追い詰めようとしている事が感じ取れる。
なんだかんだ私を丸め込もうとするあの、俺の意見が正しいという話を延々とまた聞かせられるのか。
案の定、俺は俺はという話が2時間続いた。途中少しでも口を話すとキレ出した。
本当に話し合う事ができない人だ。自分の意見を言ってその意見に賛同して欲しいだけの人。
夫「そういえばビートル買いたいって言わなくなったのは何で?」
私の欲しい車の事を言い出した。
夫「本当はあんな車欲しくないんでしょ?すぐ壊れるし、国産がいいってやっと分かった?」
私をマジでキレさせたいようだ。
私「買ってきたら延々とビートルに乗るデメリットを毎日言うつもりでしょ?離婚するか夫くんが死んだら買えって言ったの覚えてないの?」
夫「そんな事言って本当は買ってはダメな車だと分かっているんだろ?」
私「中古車情報はいつもチェックしているし、いつか買いたいと思っているよ。夫くんには言わなくなっただけだけど。」
口調が冷たくなる。本気で怒らせないで欲しいんだけど。
夫「買ったらいいのにできない理由を俺のせいにするなよ!」
夫がキレ出した。
イヤイヤあんたのせいで買えないのは明白でしょ?だって買う前からこんなにキレるのに、買ったら車ボコボコにされそうだわ。
車好き同士でも趣味の違いでこうも相手を否定できる人がいる事を夫から学んだ。
私は夫の車のセンスを否定していない。私の趣味ではないだけだから、気にならない。
だけど夫は私の趣味やセンスの違いが許せないタイプだった。
本当に煩わしい。
もう嫌になる。
23時を過ぎたのをチラッとスマホで確認して、
私「洗濯物したいからもういい?」
夫「いいよ」
突然の解散。
もう私を黙らせた事にご満悦なんだろう。
ふふんと勝ったような顔で夫が階下に降りていった。
いやもう死んでくんないかな。