「履歴書のホルダーってどこにいったの?ないけど。」


バイトを初めてしばらくした頃、キッチンで料理している私に夫が言ってきた。


私「えっ?デスクトップの右端に、私の履歴書と職歴保存してあるけど。」


夫「だよねー。でもないからどこに置いたのかと思って聞いただけ。」


悪い予感がする。

見るとない…

嘘でしょ…

マジで…

どこを探してもない。


私「消したの?他にデータないんだけど。」

冷たい怒りが湧いてくる。


夫「ないから聞いただけだけど、俺のせいにする気かよ!」

ぎろりと睨みつけてくる。


また喧嘩か…

何でこんな幼稚な事するんだろう。

私が仕事をする事が本当は気に入らないんだと分かっている。

お金でしか私を縛り付けられない人だから、こんな事するんだよね。

私の人生を買いたいんだよね…


私「ふざけん…」


心からの軽蔑を込めて小さく言った。


バシッ


頭を素手で叩かれ、膝から足元に崩れ落ちる。

痛いけど痛くない。

頭は痛いし、身体は痛い。

でも心は痛くない。

怒りで震えているから、湧き上がる冷たい気持ちが私を支えている。


私「何ですぐ殴るの?IQ高い事が自慢じゃないの?」


夫「俺の事が憎いんだろう!」


私「…」


憎いと言えば余計に殴られる。

何も言わずに2階の部屋に駆け上がる私を、夫は止める事はない。

そして半日後には、


夫「何食べる〜?」

何事も無かったように話しかけてくる。


私「よく話しかけられるね。」


夫「平気で話しかけてるわけないだろうが!あぁ!」


バシンと引き戸を強く閉めて、夫は1階に戻って行く。

家の引き戸が2か所も壊れているのは、夫のせいだ。

こんな喧嘩をしていると、高校生の娘は、泣きながら外に走って行こうとする。

またか…

夫は娘にも無関係だ。


娘「死んでやる!こんな家嫌だ!」

私「待ちなさい!」


1時間娘を探して走り回ったが、見つからなかった。

スマホに連絡しても繋がらない。

クタクタでフラフラ。

仕方なく自宅に戻ると、娘が家の裏に潜んでいるのが見えた。