楽しい時間はあっという間に過ぎ、3人で駅に向かった。

ホームは割と混んでいた。

特急だとほんの数分で最寄り駅に着く。


ケイくん「普通で帰りますか?」


私「混んでそうだしそうしよう。」


普通が来るまでの時間と車内の時間が少し増えた。


電車内もやはり混んでいたが、娘、私、ケイくんと3人並んで座る事ができた。


ケイくん「この映画の原作は全部読んでるので、何でも聞いて下さいね。」


少し自信ありげに笑いながらケイくんが言う。


私「そうだね!この映画友だね!」


この関係はただの同僚なだけでなく、〇〇友にしておきたかった。

ただの仲良しでも構わないが、それを言うとキミスイのパクリになると思い言わなかった。


帰りたくないな、本当はもっと話していたい。

それでも目の前に現実が迫ってくる。

目を背けたくなるのは、現実が嫌だからではない。

多分毎日がつまらないのだ。

同じような会話。

いつもの事がデジャブのように思える。

そんな毎日に、ふって沸いたような出来事がこの映画だった。


私「今日は、本当にありがとう。気をつけて帰ってね。」


ケイくん「はい、それではまた」


最寄り駅に着いた途端、にこやかに手を振りながら立ち上がった私は、本当は一瞬泣きそうだった。

電車を降りて7歩歩いて振り返った。

電車の窓からケイくんと目が合った。

ヒラヒラと手を振ると、はにかんだ笑顔のケイくんがパッと下を向いた。


ありがとう。