記憶喪失…

ケイくんの事を忘れるのは、嫌。

好きだという気持ちのコントロールができない事が、問題なんだ。


もし、夫が職場の女の子にこんな気持ちになっていたとしたら…


そう想像した時に、そういえば以前職場の女の子の事を色々言ってた時期があったと思い出した。

仕事ができてかわいいとか、お母さんが亡くなってかわいそうだとか…

何の嫉妬も出てこない。

何だったら応援したいくらいだ。

夫への気持ちは、恋とか愛とかではなく、もう家族としての何かに変わっている。

兄弟のような、同志のような…

もう好きという気持ちではない。

夫婦は、別れられる家族だとドラマで言っていた事を思い出した。

夫と別れてもいいと思う。

ケイくんの事は関係なく、別れてもいいと思う。

もう一緒にいる事に飽きている。

そんな夫への気持ちを考えていると、いつかこのケイくんへの気持ちも消えていくのかもしれないと気づいた。


スーと気持ちが落ち着いた。


そうだよ、好きな気持ちもいつかなくなるかもしれない。

どんなに今好きでも、

いつかはそれが日常になって、

なんて事ない気持ちになって、

飽きてしまうのかもしれない。

20年でそんな状態になっている。

私たち夫婦は、いつまでも思いやりをお互い持てる関係を築けなかった。

長い間一緒にいても、分かり合えない事があるのは当たり前だけど、それでも一緒にいたいと思えなくなった。

1人になりたい。

このまま我慢してずっと一緒にいたくない。

友達を作るなって言われたくない。

家族の事だけ考えていたくない。

私の幸せってなんだろう。

生まれてきた使命ってなんだろう。

死ぬまでにしたい事って、いくつ実現できるんだろう。


そこまで考えて、やっと分かった。

ケイくんの事を大切に、本当に大切に思っている。

だからこそ、私みたいなおばさんと時間を過ごす事はしない方がいいんだ。

ほんのちょっと人生が交わっただけなんだから、すぐ彼も大学を卒業してどこかに旅立つのだから、一瞬一瞬がとても大切なんだから。


ケイくんとの楽しい時間は、同僚としての大切な時間としてすごそう。