帰り際に本を返そうとチラッとケイくんを見ると、仕事中だった。

あー直接返せないか、そう思った時タタッと軽い駆け足でケイくんが来た!


ケイ「ありがとうございます」

すっと手を出して私の手から紙袋を受け取ってくれた。


やっぱりかわいい


いつもはクールな目元が優しく笑っていた。 

こんなほんの一瞬が嬉しくて、泣きそうになる。


帰り道、ケイくんのことばかり考えてしまう。


私、やばいなぁ…

魂は老化しないということを思い出し、恋心も老化しないのかと思いながら半分の月を見上げた。


普通にバイト先のおばさんが大学生に恋とかやばい。

その思いだけでも迷惑だし、万が一ケイくんといい感じにでもなったらもっとやばい。

不倫をするような勇気はない。

秘密の恋を持てるほど器用でない。

もしバレたら誰も幸せになれない。

まだ何も始まっていないけど、始まってしまったら止められる気もしない。

ないないづくし。


本当はかなりケイくんのことが好きになっている。

でも私から好きという言葉を、言ってはならないだろう。

きっと何も始まらないから、気をもむだけ無駄かも。


その日から、夜眠れなくなった。

眠っても2時間。

ずっと考えてしまう。

考えていたいことを考えてしまう。

どうしよう。

これは、独身の時なら普通に告白をしている心理状態だ。

でもそんなことできないのだから、考えるだけ無駄だと、自分にいい聞かせては泣きたくなる。

弱い心が情けなくて、眠れなくなる。