借りたキミスイは、すぐ読み終えたい気持ちを抑えて、5回に分けて読んだ。

あっという間に読んだら、すぐ返してしまわないといけなさそうで。

本当は、2時間くらいで読める量だったが、ゆっくり文章を味わった。


…ふぅ…


読み終えて、こんなにいい作品を何でもっと早く読まなかったのかと思った。

静かに哀しみと友情と絆について涙した。


はぁ、読み終えてしまった。


感想を語り合いたい気持ちと、恋愛小説を語り合うことの恥ずかしさがせめぎ合う。

ケイくんには、半分も感動を伝えられないだろう。

バイト先の中年おばさんが恋愛小説について語る姿は、ちょっとひく?

まぁ、アニメの話を熱く語っている段階で、既にひかれているとは思うけど。

私には、大学生と話しても大丈夫そうな事って、アニメや映画や食べ物の話くらいしか思いつかない。

そもそも恋愛について話す事が難しい。

本当に人を好きになっている状態は、脳のバグだと思いたかった。

それくらい、人を好きになるとまわりが見えず空回りしてきたような気がする。

いつも恋が終わってから振り返る自分の姿が、とてつもなく恥ずかしかった。

それでも脳のバグは不意に訪れて、私を翻弄していた。


胸がドキドキする。

確かにドキドキしている…

体質的に不整脈があるのは分かっている。

病院で看護婦さんが慌てふためくくらいのビートを、私の心臓は刻んでいたから。

あの時、すぐ死ぬのかと思ったけど何とか生きている。

何かあったら止まるとは思うけど。

刺激的な事があまりない方がいいなと思いながら、本を借りたお礼に、エメラルドグリーンの新しい栞をそっと挟んだ。