バイトを始めて1ヶ月、やっと身体も動きに慣れてきた頃に初めて一緒に仕事をしたケイくんの言葉は、今も思い出すと自分の焦った気持ちに笑いそうになる。


「僕達、1ヶ月も出会わなかったんですね。」

「‼︎ん⁇」


確かに1ヶ月の間にシフトが重なる事はなかった。

ただその事実だけを伝えている言葉に、私には思えなかった。

「出会わなかった」という言葉から、

「出会えた」事を喜んでいるような気配を感じたから。

むず痒い、舌が熱くなるような、バイト先でそんな気持ちになるとは思わなかった。

ギャグで言ってるのかな?

突っ込んだ方がいいのか…

どう返すべきか分からず、笑って誤魔化した。

恋愛小説の中に出てきそうなセリフが、すっかり恋愛から距離をとっている私には、眩しくて胸に刺さった。

こんな事を言うケイくんはどんな人何だろう。

いつも静かな感じで、真面目に仕事をしている。落ち着いた雰囲気と、少し鋭い大きな瞳がかわいい。

っと、おばさんが息子より少し年上の男の子の事を何と言っているのやら。

自重しようと思いながら、息子より年上だったら推しても大丈夫と、勝手に謎理論を展開させていた。