最近中国関連で売れている本が、マイケル・ピルズベリー氏の書いた『China 2049』というものです。

この本は一言で言えば「我々は中国に騙されていた」という事実を告白したものです。

また、以前にもこのブログで取り上げたこともあるのですが、それまでどちらかと言われれば中国よりだとみられていたデービッド・シャンボー教授が中国共産党の崩壊を予測したりもしていました。

このようにアメリカの一部の中国学者にはある種の中国に対する「幻滅」が広がっているように私には感じられます。

しかしながら、現在のアメリカ人学者が中国に対して幻滅することはある意味自業自得であり、そのことはリアリストのアメリカ人が80年前に指摘しているのです。

中国公使をつとめたことのあるアントワープ・マクマリーは『平和はいかに失われたか』という本の中で、「アメリカ人は、中国が置かれている諸条件に関していくらかナイーブでロマンチックな想定にたっていたのかもしれない。またその思い入れの激しさと強さは、平均的な一般市民の中国問題への関心と均衡を失していたかもしれないが、こうした親中的な運動は、アメリカ人にとってごく自然なものだった」と書いています。

マクマリーのこの文章は、ニクソンとキッシンジャーが中国との国交を回復しようとしてからのアメリカの中国に対する行動そのままではないのかと驚く人もいるでしょう。

しかし、このような親中的な態度でアメリカが中国に接した結果、マクマリーは「だから米国政府がとってきたような、ヒステリックなまでに高揚した中国人の民族的自尊心を和らげようとした融和と和解の政策は、ただ幻滅をもたらしただけだった」とピルズベリーの本の内容を80年前に同じアメリカ人が指摘しているのです。

さてこれからの問題は、アメリカや日本の中国に対する「ナイーブ」な政策を遂行した結果、強力になった中国はピルズベリーが主張するように東アジアの覇権国となるのか、それともマクマリーが「中国人が抱く傲慢なプライドと現実の事態の理解を妨げている政治的未熟さのあらわれ」と指摘するように、それが自滅する形になるかでしょう。

私にとっては後者の可能性の方にリアリティーを感じています。


中国が作ったアジアインフラ投資銀行において一番衝撃的だったのが、イギリスがそれに率先して加入したことでした。

イギリスのこの行為によってドイツやフランスもAIIBに加入することになり、アメリカから参加を抑制されていた韓国も入ることになってしまったからです。

一体イギリスはどのような理由から率先してAIIBに入ることになったのでしょうか。今回はこの問題について戦前の中国情勢と比較しながら書いてみたいと思います。

戦前の中国について様々な取り決めは1922年のワシントン会議によって決められていました。この「ワシントン体制」を最終的に破壊したのは帝国陸軍の満州事変だったわけですが、実はそのきっかけを作ったのがイギリスではなかったのかというのが私の仮説です。

アンソニー・ベストというイギリスの学者が書いた『大英帝国の親日派』という本の中で、日本の外交官重光葵がワシントン体制において最初にイギリスが協調行動から逸脱して中国に単独で譲歩したことを重視していたことを知ったからでした。

それは1926年12月にイギリスの外務省が出した「クリスマス覚書」というものでした。

重光は「支那に重大な利益を有する英国は再び日英同盟時代における如く日本と提携して支那問題を処理するか、もしくは新政権を樹立して支那国民党の新勢力を守り立てて、東亜における英国の馬として日本より支那に乗り換えるか、これが英国の重大岐路」だと記しています。

この重光の分析はイギリスがAIIBに入った動機にも適用できるかもしれません。

実はイギリスの「クリスマス覚書」を当時批判的に見ていたのは重光葵だけではなく、アメリカの外交官ジョン・アントワープ・マクマリーもそう考えていたようです。

彼は名著『平和はいかに失われたか』という本の中で、現地の外交官の意見を聞かずに出された「クリスマス覚書」について「そこには独善的な調子があり、事実に照らしてでも他の列強諸国に弁明できるようなものではなかった」と痛烈に批判しているのです。

そしてイギリスの単独的譲歩は「お互いが中国の好意を得ようと競い合い、故意ではないにしろ、無責任と暴力の風潮を助長していたように思われる」とマクマリーは指摘しています。

イギリスが率先して加入したAIIBにおいても、現在中国が暴力的に行っている東シナ海や南シナ海の行動を抑制させることはないでしょう。逆にマクマリーが指摘した「無責任と暴力を助長する」結果につながっているのです。

18世紀のイギリス外交はしばしば無責任なことをして大陸諸国から「不実のアルビオン」と呼ばれていました。

そのことが全くの言いがかりでなかったことを証明したのがイギリスのAIIBへの加入だったのです。
北朝鮮の核実験について、以前には必ず中国に事前報告していたのに今回に限っては中国に知らせていなかったのではないかという疑問をいくつかのメディアが取り上げています。

金正恩はテレビ報道を見ていてもかなり祖父の金日成を意識しているものと思われます。

ところで金日成は朝鮮戦争を始める際、ソ連には事前に相談していたのですが、中国の毛沢東にはほとんど相談をしなかったという歴史があります。

金日成のはじめた朝鮮戦争は大惨事になり、結局事前に相談のなかった毛沢東が参戦することになってしまいました。

今回の核実験についても中国が必死に軟着陸させるでしょう。この問題は次の3つの要因によって構造的に全く解決できないようになっています。

1、北朝鮮は絶対に核を放棄しない

2、中国は北の崩壊を恐れて圧力をかけたがらない

3、アメリカは北朝鮮が核保有国であるとは認めたくない

この要因が続く限り北朝鮮の核問題はうまく解決しそうにありません。